仕事術

マルチタスクはなぜ仕事に非効率?脳を破壊するかもしれない理由とは

2016-06-03

マルチタスク があなたの脳を破壊する!仕事に効率的ではない理由とは

次々と来るメールへの対応、社内チャットへの返事やFacebookの新着情報の確認、仕上げたい事業計画・・・。

忙しくなると、ついついマルチタスクで同時にこなそうとしていませんか?

マルチタスクとは

マルチタスク(Multi Task)とは、コンピュータ用語で「同時に複数の仕事をする」という意味。マルチタスキング(Multi Tasking)とも言う。

複数の作業を同時にこなすマルチタスク能力には、仕事ができるイメージがあります。“できる” ビジネスパーソンの必須能力のようにも感じます。

一見効率よく仕事ができそうに感じるマルチタスクですが、実は非効率だったりします。複数の作業を同時にこなすことを習慣的に続けていると、脳を破壊する恐れだってあります。

なぜ、マルチタスクは非効率なのでしょうか?

マルチタスクの正体について解説します。

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マルチタスクの正体とは?

一見、同時に複数の作業を処理しているように感じるマルチタスクは、実は脳のスイッチを高速で切り替えているだけです。

米Entrepreneurの記事では、『SINGLE TASK』の著者デボラ・ザック氏の意見が紹介されています。

「みなさんがマルチタスクと呼んでいるものは、神経科学者の言うところのタスク・スイッチングです。(2つを同時に考えているのではなく)複数のタスクを短時間で行き来しているのです」

参考サイト:Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking.

ザック氏は、タスク・スイッチングは生産性を40%も低下させるだけでなく、脳が収縮する原因になると指摘しています。短時間に高速でスイッチを切り替えようとすると「脳がオーバーロードし、脳内の灰白質が収縮する」と言及しています。

マルチタスクは効率が悪い

ある研究によると、仕事を切り替えるために余分にかかる時間は、単純な仕事の場合だと25%かそれ以下、複雑な仕事では100%かそれ以上の増加が必要との報告があります。

例えるなら、小さな机の上で積み木をするようなものです。

積み木ができるスペースは限られているので、別の積み木をするのなら、今まで積み上げた積み木は一旦崩す必要があります。元の積み木に戻りたいなら、今積み上げた積み木を崩して、再び積み直すことになります。

これらを繰り返していると考えれば、時間ロスが生まれることも納得ですよね。

脳のイラスト

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なぜマルチタスクをしようとしてしまう?

一般的にマルチタスクと呼ばれているものは、効率が良さそうに感じますよね。そう感じてしまうのは、僕たちは普段から多くの場面で2つ以上のことを同時にしているからです。

  • 歩きながら携帯電話で話す
  • 音楽を聴きながら掃除をする
  • テレビを見ながら食事をする
  • 車を運転しながら隣りの人と会話をする

「・・・だったら仕事だって、同時に2つ以上のことをした方が効率的なのでは?」と考えてしまうのは、すごく自然なことですよね。

無意識でできる運動はマルチタスクではない

ですが、上の例にあげたのは、仕事に関するマルチタスクではありません。普段の生活でなにげなく同時にやっているのは、片方が無意識でできる習慣化された運動です。

習慣化された運動は、おもに小脳(脳の後ろに位置する部位)が司って、自動操縦をしてくれます。歩く時に、いちいち「右足を前に出して、左足を前に出して・・・」と考えなくてもいいのは、小脳が自動操縦をしてくれているからです。

歯を磨く時にも「前歯を磨いて、次は右下奥歯、次は・・・」と考えなくてもできるのは、歯磨きが習慣化された運動だからです。“体が覚えている” というやつですね。

だからこそ、車の運転に慣れているドライバーは、運転しながら隣りの人との会話が楽しめるんですね。

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脳はひとつのことしか集中できない

そもそも人間の脳は、ひとつのことにしか集中できないという特性を持っています。

同時に2つのことを考えることはできません。例えば、数を数えながら同時に複雑な計算問題を解こうとすると、どちらかがストップしてしまいます。

車の運転に慣れていない初心者ドライバーは、まだ “体が覚えていない” ために、隣りの人と楽しい会話をする余裕がないはずです。また、車の運転に慣れているドライバーであったとしても、内容の難しい話には対応しづらくなるはずです。

どんな時にマルチタスクをする?

集中できずに気が散っている時には、ついつい他のことを考えて、マルチタスク(タスク・スイッチング)をしようとしてしまいます。

それは、脳が新しい刺激を好むからです。

新しい小さなタスク(課題)を刺激に感じることで、報酬予感ホルモンであるドーパミンが分泌されます。脳はドーパミンが欲しくて、新しい小さなタスクに気が向いてしまいます。

つまり、マルチタスクをすると「仕事をこなしている」という錯覚に似た満足感を味わって、気持ち良くなってしまうんですね。脳はこの快感を味わいたくて、小さなタスクを達成するために、次々とマルチタスクをしようとするわけです。

マルチタスクは小さな満足感を味わいたがる

タスク・スイッチングはすぐに疲れる

脳はたくさんのエネルギーを使います。

体重の2%ほどの重量(成人男性⇒約1400g、成人女性⇒約1250g)に対して、全身の20%ものエネルギーを消費します。短時間に高速でスイッチを切り替えていたら、すぐにエネルギーを使い切って疲れてしまうんですね。

そして、残されたタスクは常に「未達成」の状態です。未達成のことは気になるというツァイガルニク効果のとおり、常に気になった状態が続きます。

タスク・スイッチングのループ

気になった状態が続くと、ますます気が散りやすくなります。

  1. 多くのタスク(課題)を同時に抱えていると、他のタスクも気になった状態になる
  2. 他のタスクが気になると、集中できずに気が散る
  3. 気が散ると、他のタスクに手を出すことで得られる達成感を味わいたくなる
  4. 小さな達成感は味わうが、タスク自体がなくなったわけではない
  5. 1に戻る

という、マルチタスク(タスク・スイッチング)のループにはまってしまいます。

常に気になった状態が続くと、やがてストレスに変わります。

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認知症のリスクさえあるマルチタスク

ストレスが溜まると、ストレスホルモンであるアドレナリンや、コルチゾールが分泌されます。

コルチゾールは、おもにストレスと低血糖に反応して分泌されます。

コルチゾールが長時間に渡って分泌されると、高血糖によって血液悪化、動脈硬化、糖尿病の原因になります。また免疫力の低下、良質な睡眠の妨げ、無気力・無関心、記憶を司る海馬の萎縮、脳の早期老化を引き起こします。
参照サイト:コルチゾールの働き

そのため、習慣的にマルチタスク(タスク・スイッチング)をしていると、認知症のリスクが上がるとも言われています。

マルチタスクはIQを低下させる

ロンドン大学精神医学学科の研究チームの発表では、「メールや電話で集中力を妨げられたビジネスパーソンのIQは低下し、その数値はマリファナを吸引した時の約2倍低下している」という研究報告がされています。

また、スタンフォード大学での調査研究によると、マルチタスク(タスク・スイッチング)をこなす学生は、マルチタスクをしない生徒と比べて、全ての評価基準で成績が下回ったというデータを発表しています。

思考をタスク・スイッチングしていると、

  • 「あれ、さっき調べたいと思ったキーワードってなんだっけ?」
  • 「この資料のポイントってどこに書いてあったっけ?」

なんてことがありませんか?

結局時間がかかったり、考えがまとまらなくなるのは、タスク・スイッチングの効率の悪さが原因なんですね。

なぜだか仕事がはかどらないあなたへオススメできる本

もしも、「あれもこれもと仕事をしているはずなのに、なぜだか思ったように進まない」という状況なのであれば、次の書籍をおすすめします。

SINGLE TASK/デボラ・ザック 著

こちらの書籍は、マルチタスクが無意味で非効率な理由を掘り下げ、ひとつのことに集中する方法を学ぶことができる一冊です。

鋭い集中力で生産性を向上できれば、仕事の効率化はもちろん、人生を変えることにつながります。

ワン・シング/ゲアリー・ケラー その他 著

こちらの書籍は、あなたにとって大事な「1つのこと」を見つける、3つのメソッドを手に入れられる一冊です。

「5年間ですること・1年間ですること・1ヶ月ですること」を細分化していけば、最速で結果が出せるようになります。

まとめ

マルチタスク(タスク・スイッチング)とは、脳のスイッチを高速で切り替えて、エネルギーを無駄に消費する行動です。

マルチタスクをすると小さな満足感を味わうことができますが、すればするほど集中できなくなり、疲れやすくなり、イライラしやすくなり、判断力は低下し、生産性が下がります。

良いことなんてひとつもないんですね。

もしもタスク・スイッチングをする癖がついていたら、次の方法でやめるように気をつけてみてください。
Next⇒「簡単にマルチタスクをやめる9つの方法|2時間14分の短縮ワザ

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  • この記事を書いた人

高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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