次々と来るメールへの対応、社内チャットへの返事やFacebookの新着情報の確認、仕上げたい事業計画・・・。
忙しくなると、ついついマルチタスクで同時にこなそうとしていませんか?
マルチタスクとは
マルチタスク(Multi Task)とは、コンピュータ用語で「同時に複数の仕事をする」という意味。マルチタスキング(Multi Tasking)とも言う。
複数の作業を同時にこなすマルチタスク能力には、仕事ができるイメージがあります。“できる” ビジネスパーソンの必須能力のようにも感じます。
一見効率よく仕事ができそうに感じるマルチタスクですが、実は非効率だったりします。複数の作業を同時にこなすことを習慣的に続けていると、脳を破壊する恐れだってあります。
なぜ、マルチタスクは非効率なのでしょうか?
マルチタスクの正体について解説します。
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マルチタスクの正体とは?
一見、同時に複数の作業を処理しているように感じるマルチタスクは、実は脳のスイッチを高速で切り替えているだけです。
米Entrepreneurの記事では、『SINGLE TASK』の著者デボラ・ザック氏の意見が紹介されています。
「みなさんがマルチタスクと呼んでいるものは、神経科学者の言うところのタスク・スイッチングです。(2つを同時に考えているのではなく)複数のタスクを短時間で行き来しているのです」
参考サイト:Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking.
ザック氏は、タスク・スイッチングは生産性を40%も低下させるだけでなく、脳が収縮する原因になると指摘しています。短時間に高速でスイッチを切り替えようとすると「脳がオーバーロードし、脳内の灰白質が収縮する」と言及しています。
マルチタスクは効率が悪い
ある研究によると、仕事を切り替えるために余分にかかる時間は、単純な仕事の場合だと25%かそれ以下、複雑な仕事では100%かそれ以上の増加が必要との報告があります。
例えるなら、小さな机の上で積み木をするようなものです。
積み木ができるスペースは限られているので、別の積み木をするのなら、今まで積み上げた積み木は一旦崩す必要があります。元の積み木に戻りたいなら、今積み上げた積み木を崩して、再び積み直すことになります。
これらを繰り返していると考えれば、時間ロスが生まれることも納得ですよね。
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なぜマルチタスクをしようとしてしまう?
一般的にマルチタスクと呼ばれているものは、効率が良さそうに感じますよね。そう感じてしまうのは、僕たちは普段から多くの場面で2つ以上のことを同時にしているからです。
- 歩きながら携帯電話で話す
- 音楽を聴きながら掃除をする
- テレビを見ながら食事をする
- 車を運転しながら隣りの人と会話をする
「・・・だったら仕事だって、同時に2つ以上のことをした方が効率的なのでは?」と考えてしまうのは、すごく自然なことですよね。
無意識でできる運動はマルチタスクではない
ですが、上の例にあげたのは、仕事に関するマルチタスクではありません。普段の生活でなにげなく同時にやっているのは、片方が無意識でできる習慣化された運動です。
習慣化された運動は、おもに小脳(脳の後ろに位置する部位)が司って、自動操縦をしてくれます。歩く時に、いちいち「右足を前に出して、左足を前に出して・・・」と考えなくてもいいのは、小脳が自動操縦をしてくれているからです。
歯を磨く時にも「前歯を磨いて、次は右下奥歯、次は・・・」と考えなくてもできるのは、歯磨きが習慣化された運動だからです。“体が覚えている” というやつですね。
だからこそ、車の運転に慣れているドライバーは、運転しながら隣りの人との会話が楽しめるんですね。
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脳はひとつのことしか集中できない
そもそも人間の脳は、ひとつのことにしか集中できないという特性を持っています。
同時に2つのことを考えることはできません。例えば、数を数えながら同時に複雑な計算問題を解こうとすると、どちらかがストップしてしまいます。
車の運転に慣れていない初心者ドライバーは、まだ “体が覚えていない” ために、隣りの人と楽しい会話をする余裕がないはずです。また、車の運転に慣れているドライバーであったとしても、内容の難しい話には対応しづらくなるはずです。
どんな時にマルチタスクをする?
集中できずに気が散っている時には、ついつい他のことを考えて、マルチタスク(タスク・スイッチング)をしようとしてしまいます。
それは、脳が新しい刺激を好むからです。
新しい小さなタスク(課題)を刺激に感じることで、報酬予感ホルモンであるドーパミンが分泌されます。脳はドーパミンが欲しくて、新しい小さなタスクに気が向いてしまいます。
つまり、マルチタスクをすると「仕事をこなしている」という錯覚に似た満足感を味わって、気持ち良くなってしまうんですね。脳はこの快感を味わいたくて、小さなタスクを達成するために、次々とマルチタスクをしようとするわけです。
タスク・スイッチングはすぐに疲れる
脳はたくさんのエネルギーを使います。
体重の2%ほどの重量(成人男性⇒約1400g、成人女性⇒約1250g)に対して、全身の20%ものエネルギーを消費します。短時間に高速でスイッチを切り替えていたら、すぐにエネルギーを使い切って疲れてしまうんですね。
そして、残されたタスクは常に「未達成」の状態です。未達成のことは気になるというツァイガルニク効果のとおり、常に気になった状態が続きます。
タスク・スイッチングのループ
気になった状態が続くと、ますます気が散りやすくなります。
- 多くのタスク(課題)を同時に抱えていると、他のタスクも気になった状態になる
- 他のタスクが気になると、集中できずに気が散る
- 気が散ると、他のタスクに手を出すことで得られる達成感を味わいたくなる
- 小さな達成感は味わうが、タスク自体がなくなったわけではない
- 1に戻る
という、マルチタスク(タスク・スイッチング)のループにはまってしまいます。
常に気になった状態が続くと、やがてストレスに変わります。
認知症のリスクさえあるマルチタスク
ストレスが溜まると、ストレスホルモンであるアドレナリンや、コルチゾールが分泌されます。
コルチゾールは、おもにストレスと低血糖に反応して分泌されます。
コルチゾールが長時間に渡って分泌されると、高血糖によって血液悪化、動脈硬化、糖尿病の原因になります。また免疫力の低下、良質な睡眠の妨げ、無気力・無関心、記憶を司る海馬の萎縮、脳の早期老化を引き起こします。
参照サイト:コルチゾールの働き
そのため、習慣的にマルチタスク(タスク・スイッチング)をしていると、認知症のリスクが上がるとも言われています。
マルチタスクはIQを低下させる
ロンドン大学精神医学学科の研究チームの発表では、「メールや電話で集中力を妨げられたビジネスパーソンのIQは低下し、その数値はマリファナを吸引した時の約2倍低下している」という研究報告がされています。
また、スタンフォード大学での調査研究によると、マルチタスク(タスク・スイッチング)をこなす学生は、マルチタスクをしない生徒と比べて、全ての評価基準で成績が下回ったというデータを発表しています。
思考をタスク・スイッチングしていると、
- 「あれ、さっき調べたいと思ったキーワードってなんだっけ?」
- 「この資料のポイントってどこに書いてあったっけ?」
なんてことがありませんか?
結局時間がかかったり、考えがまとまらなくなるのは、タスク・スイッチングの効率の悪さが原因なんですね。
なぜだか仕事がはかどらないあなたへオススメできる本
もしも、「あれもこれもと仕事をしているはずなのに、なぜだか思ったように進まない」という状況なのであれば、次の書籍をおすすめします。
SINGLE TASK/デボラ・ザック 著
こちらの書籍は、マルチタスクが無意味で非効率な理由を掘り下げ、ひとつのことに集中する方法を学ぶことができる一冊です。
鋭い集中力で生産性を向上できれば、仕事の効率化はもちろん、人生を変えることにつながります。
SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる
ワン・シング/ゲアリー・ケラー その他 著
こちらの書籍は、あなたにとって大事な「1つのこと」を見つける、3つのメソッドを手に入れられる一冊です。
「5年間ですること・1年間ですること・1ヶ月ですること」を細分化していけば、最速で結果が出せるようになります。
まとめ
マルチタスク(タスク・スイッチング)とは、脳のスイッチを高速で切り替えて、エネルギーを無駄に消費する行動です。
マルチタスクをすると小さな満足感を味わうことができますが、すればするほど集中できなくなり、疲れやすくなり、イライラしやすくなり、判断力は低下し、生産性が下がります。
良いことなんてひとつもないんですね。
もしもタスク・スイッチングをする癖がついていたら、次の方法でやめるように気をつけてみてください。
Next⇒「簡単にマルチタスクをやめる9つの方法|2時間14分の短縮ワザ」
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