ブレインストーミングなどで大量に出たアイデアは、KJ法(ケージェイほう)を使うことで、わかりやすく整理整頓することができます。
ただし、KJ法はアイデアをまとめるだけのフレームワークではありません。アイデア同士の関係性が見た目でわかりやすくなることで、ロジカルな視点から新たなアイデアを得るための発想法でもあります。
また、モヤモヤしていた問題の本質を発見することにも役立ちます。
思いついたアイデアが抽象的なイメージのまま消えてしまわないためには、KJ法の正しい進め方と、KJ法のコツを確認してみてください。
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KJ法とは
KJ法とは、1枚の紙に1つずつアイデアを書き込んでいき、それぞれの位置を移動させながら、全体を俯瞰して整理整頓していくアイデア発想法です。
バラバラに集められた多くの情報に対して、「グループ化 ⇒ ラベル化 ⇒ 図解化 ⇒ 文章化」のステップを踏むことで情報同士の関係性を視覚化し、本質的な問題や解決策の発見、アイデアの創出をすることができます。
収束的帰納法の中では、最も代表的な技法とされています。
川喜田二郎氏のイニシャルでKJ法
KJ法は、日本を代表する文化人類学者であり、元東京工業大学教授の川喜田二郎氏によって1965年に考案され、川喜田氏のイニシャルをとって「KJ法」と名付けられました。
もともとは、川喜田氏の膨大な学術調査のデータを効率良くまとめるために考案された技法でしたが、収束の過程でアイデアが生まれることに気づき、1967年に『発想法』として文献にまとめられました。
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KJ法のやり方
では、KJ法のやり方を解説していきます。
KJ法は、大きく分けて次の4ステップの手順で進めます。
- アイデアをラベル化する
- ラベルをグループ化する
- 関係性を図解化する
- 図解を元に文章化する
KJ法に必要な付箋やペンを準備する
KJ法を始めるためには、小さめのカードかポストイットのような付箋をたくさん用意します。
全て同じ色のカードであれば、3〜4色のペンを用意しておくと見た目で分かりやすくなります。
ポストイットのような付箋であれば、ラベルづくり(アイデアを書き込む作業)に使う色の枚数を多めに用意して、表札づくり(タイトルを書き込む作業)に使う色を2〜3色用意しておきます。
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Step1 アイデアをラベル化する
KJ法のステップ1では、1枚のカード(付箋)に1つのアイデアを書き込み、たくさんのラベルを作ります。
ラベルはホワイトボードや大きな用紙、机の上など広いスペースに並べていきます。並べる位置や順番は気にしなくても大丈夫です。
大量のアイデアを発想する時には、ブレインストーミングが最適です。
KJ法と相性の良いブレインストーミングでアイデアを出す
KJ法の考案者である川喜田氏は著書『発想法』の中で、KJ法と相性の良い発想法としてブレインストーミングをあげています。
その理由は、アイデア創出や問題解決のためには、いろんな角度から見た意見を揃えることが大切であり、ブレインストーミングにある4つのルールが、多方面から多くのアイデアを生み出しやすいと考察されているからです。
全方向360度から問題を見ないことには、解決の糸口に死角が生まれてしまうんですね。ですのでKJ法は、ブレインストーミングと組み合わせて行われることが多いです。
複数人でアイデアをたくさん出す際には、ブレストの基本的な4つのルールを確認しておいてください。
ブレスト 4つのルール
- 批判しない
- 自由に発言する
- 質よりも量を重視する
- アイデア同士を結合する
たとえ「これは無関係かな?」と思うようなことでも、思いついたことはどんどん書いてラベル化していくことが大切です。一見関係ないような事柄でも、並べて俯瞰してみた時に、思わぬ発見に繋がることがあるからです。
ラベル化する際のコツ
発言者のアイデアを第三者(書記係・ファシリテーター)が要約してカード(付箋)に書いていく場合は、発言者の使った単語をそのまま使うことが大切です。
なぜなら、第三者の解釈で違う単語に変えたり、言葉を単純化して内容を抽象化しすぎると、本来の意味合いとは違うニュアンスのアイデアになってしまう危険があるからです。
Step2 ラベルをグループ化する
KJ法のステップ2では、たくさん出したアイデアを収束させるために、並べたラベルたちをグループ化して、表札(タイトル)をつけていきます。
全てのグループが10個未満になるまで、グループ化を繰り返します。
- まず小グループを作る
- 次に大グループを作る
1. まず小グループを作る
まずは、内容の似ているラベル同士をグループ化します。2〜3個で1つのグループを作る感覚で気軽にグループ化させていきます。
小さなグループを作ったら、グループに表札(タイトル)をつけます。
付箋の場合は、違う色を使うと表札であることが分かりやすくなります。同じ色のカードを使う場合は、ペンの色を変えると分かりやすいです。
“一匹オオカミ” はそのままで大丈夫
どのグループにも所属しないような “一匹オオカミ” があったとしても問題はありません。無理やりグループ化はさせずに、そのまま一枚で残しておいて大丈夫です。
“一匹オオカミ” は、誰もが創造できなかったお宝かもしれませんし、あるいは見当違いなアイデアかもしれません。それを明らかにできるのが KJ法の良いところです。
2. 次に大グループを作る
グループの数が10個以上だった場合は、さらに関連性のある者同士で大きなグループとしてまとめます。そして表札(タイトル)をつけます。
先ほどまで “一匹オオカミ” だったラベルも、ここではグループ化できるかもしれません。もしもグループ化ができなければ、最後まで “一匹オオカミ” でも大丈夫です。
グループが10個未満になるまで、グループ化を繰り返します。
グループ化のコツ
グループ化をする時には、小分けから大分けの順番を辿るようにします。
なぜなら、あらかじめ大きなグループで分けてから、その中で小さくカテゴライズをした場合は、アイデアの正しい解釈ができなくなる危険があるからです。
「大 ⇒ 小」のトップダウンで分類するのは効率的な気もしますが、グループ化の目的は分類ではなく連結です。ですので、集められた情報は「小 ⇒ 大」のボトムアップが大切なんですね。
知識人ほどトップダウンでグループ化させようとする傾向がありますので、注意が必要です。
表札(タイトル)をつけるコツ
表札は、グループ化した内容がわかる程度の要約であることが大切です。つまり、新しいラベルとして扱えるようにします。
ですので、ブログのカテゴリ名のような「パソコン関係」「仕事類」「効率化」といった、内容を抽象化しすぎた表札にしないようにします。
特に男性の場合は、わざわざ難しい言葉や堅苦しい熟語を使って要約する傾向がありますので、抽象化しすぎないように注意する必要があります。
Step3 関係性を図解化する
KJ法のステップ3では、グループ同士の関係性をわかりやすくするために、矢印や記号を使って図解化します。
KJ法は情報の整理が目的ではなく、関係性を見出しながら理論を組み立てたり、新たな発想を創出することが目的です。ですので、図解化は重要なパートになります。
- 空間配置する
- 図解化する
1. 空間配置する
まずは、グループ化されたアイデア同士を、関連性の高そうなグループと近づけて配置し直します。
2. 図解化する
グループ化したラベルを広げて相関性を図解化します。図解化する時は、大きなグループから始めていくと関係性をまとめやすくなります。
相関性は、次のようなフレームワークや矢印を使うとまとめやすくなります。
図解化する際に使えるフレームワーク
図解化する際には、次の4つの基本フレームワークを使うと分かりやすくなります。
ツリー型
ツリー型とは、要素をレベル別に分類して、階層状に示す図形パターンです。論理的な構造を示す際に使います。
サテライト型
サテライト型とは、要素の相互依存関係を示す図形パターンです。全ての要素が必要であり、主従関係がなく、各々が対等の関係性を持っている時に使います。
フロー型
フロー型とは、要素の時間的な流れを示す図形パターンです。通常は左から右、あるいは上から下の流れで表します。
サイクル型
サイクル型とは、要素の循環的な流れを示す図形パターンです。一回まわって終わりではなく、何度も循環を繰り返す場合に使います。
図解化する際に使う矢印
図解化する際には、次のような矢印を使い分けると、見た目でわかりやすくなります。
- 原因
- 結果
- 相関
- 類似
- 反対
このあたりの関係性を書き込んで分かりやすくします。
Step4 図解を元に文章化する
KJ法のステップ4では、図解化したラベルを参考に文章にします。文章にすることで、新たな発見を得ることができます。
時系列に沿うようにすると、文章化がしやすくなります。
文章化をしようとすると、勝手な補足を付け足してしまうことがあります。この「勝手に出てきた補足」が新たな発見だったりもします。ですので、複数人でKJ法を行なう場合は、いくつかのチームに分けて文章化をしてみると、違う発見が生まれる可能性があります。
例えば、図解化までは全員で行なって、文章化は個人の課題にして後日発表するのも良いかもしれないですね。
問題解決やアイデア発想に役立つツール
問題解決やアイデア発想のフレームワークは、多くの書籍でも紹介されています。
例えば『思考法図鑑』は、アイデアを発想するための思考法を60種類も知ることができる一冊です。
アイデア発想のためのアプローチをたくさん知っておけば、自分やチームに合った方法で最適なアイデアを生み出すことに役立ちます。
ビジネスに役立つフレームワーク
『ビジネスフレームワーク』は、アイデアをカタチにする際に役立つフレームワークを70種類も知ることができる一冊です。
起業アイデアを思いついた時には、問題の乗り越え方や、マーケティングの分析方法などがわかるようになります。社会人1年目や2年目の人であれば、上司に一目置かれる存在になるための企画力や、マネジメント力を鍛えることに役立ちます。
会議をスムーズに進めるリーダーのためのツール
あなたがリーダーとなって問題解決やアイデア発想の会議を進める場合は、会議の雰囲気を良くして、参加メンバーのアイデアを引き出すファシリテーションのスキルが重要になります。
『ファシリテーターの道具箱』は、参加メンバーに「全体像を考えてもらう」「分析的に考えてもらう」「他の視点で考えてもらう」ための技術を49種類も知ることができる一冊です。会議を進行するコミュニケーションに自信がない場合は、手元に置いておくと役に立ちます。
まとめ
以上、KJ法のやり方とコツを解説しました。
KJ法では、自分では気づかなかった発見や気づきを得ることが重要ですので、思い込みや先入観でグループ化や表札づくりをしないことが大切です。
また、できるだけ全員の同意を確認しながら作業を進めることも大切です。意見をぶつけることで新しい発見が生まれる可能性がありますし、他人の意見を聞くことで思い込みがなくなる可能性もあるからです。
アイデアをまとめたい時、問題の本質を発見したい時などは、このKJ法を使って整理整頓してみてください。きっと全体像の理解が深まり、新たな発見ができると思います。
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