誰にでも当てはまるような曖昧な表現の記述でも、「これって自分に向けたメッセージだ!」と思ってしまう心理作用を、心理学ではバーナム効果と言います。
簡単に人を信用させる効果があることから、占い、営業トーク、恋愛の場面で、悪用すれば詐欺にも使われてしまう広い用途があります。
この記事では、
- なぜ人は占いを信用してしまうのか?
- バーナム効果を生み出す4つの秘密
- 恋愛・営業トーク・ブログ記事での使い方
についてお話しします。
この記事を読めば、あなたも占い師のようにズバズバと相手のことを言い当てて、信頼される術を手に入れることができます。セールスの場面で、ブログ記事で、恋愛や人づきあいなど、相手から信頼される方法として役立ててください。悪用厳禁の内容です。
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バーナム効果の由来
バーナム効果(Barnum effect)の由来は、次の言葉を残した19世紀アメリカの興行師、フィニアス・テイラー・バーナム(Phineas Taylor Barnum)氏の名前から来ています。
「we've got something for everyone」“誰にでも当てはまる要点というものがある”
バーナム氏は、巧みな心理操作を使ったサーカスで有名になった人物で、世界三大サーカスの一つと言われるリングリングサーカスの創設者です。
1956年に、アメリカの心理学者ポール・ミール(P.E.Meehl)氏によって名付けられたと言われています。
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もっともわかりやすいバーナム効果は占い
バーナム効果がもっともわかりやすいのは「占い」です。
タロットカード、おみくじ、手相占い、星座占い、誕生日占い、動物占いなどいろいろありますが、思わず「当たってる!」と感じた経験は、誰もが一度はあるのではないでしょうか。
バーナム効果の例え
例えば、この記事を読んでくれているあなたの性格を占ってみたいと思います。
あなたは比較的に勤勉で、人から信頼されるタイプです。わりと几帳面ですが、心が乱れると「どうでもいいや」と投げ出す一面もあります。
運よく小さな成功をすることはあっても、どちらかと言えば、忍耐と努力でチャンスを掴んでいくタイプです。他人の痛みを感じることができるので、困っている人がいたら手を差し伸べたいと考える人です。
・・・当てはまっていましたか?
実はこの文章は、性格診断サイトにあった文章を適当につなぎ合わせて書き直したものです。もしも「当たってるかも・・・」と感じたなら、その感覚がバーナム効果です。
血液型性格診断もバーナム効果
血液型で性格診断をしているのは世界中で日本だけ、というのは有名な話ですよね。血液型で性格が異なるというのは、科学的な根拠は何もないからです。
それでも、
- A型:真面目で神経質
- B型:天才肌でマイペース
- O型:おおらかで自信家
- AB型:気難しくて打算的
このような性格診断を見ると、自分や恋人の性格と照らし合わせて「当たってるかも!?」なんて感じてしまいます。
なぜ占いは、当たると思ってしまうのでしょうか?
それは、バートラム・フォア氏の実験を知ることでわかるようになります。
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占いが当たる理由を調べたフォア氏
バーナム効果は、アメリカの心理学者バートラム・フォア(Bertram Forer)氏の名前をとって、フォアラー効果(Forer effect)とも呼ばれています。
フォアラー効果の名前の由来は、人が星占いやタロット占いに夢中になる理由を研究していたフォア氏が1948年に行なった、次の実験から来ています。
フォアラー効果の実験
フォア氏は、被験者である学生に性格診断テストを受けてもらいました。そして一週間後、テスト結果を封筒に入れて、学生一人一人に手渡しました。
学生には、診断結果がどれくらい当たっているのかを評価してもらいました。「全く当たっていない=0」から、「非常に正確=5」までの6段階で評価してもらったところ、学生たちの評価の平均点は「4.26」でした。
ほとんどの学生が、「自分に当てはまっている!」と感じた結果となりました。
ですがこの診断結果は、全て同じ文章で、フォア氏が新聞に出ていた星占いから適当に抜き出したものでした。
その内容は次のとおりです。
- あなたは他人から好かれたい、賞賛されたいと思っていますが、それに関わらず自分自身に批判的な傾向があります。
- あなたは短所もありますが、普段はそれを克服することができます。
- あなたには、まだ使われていない、まだ活かしきれていない能力がかなりあります。
- あなたは規律正しく自制的なように見えますが、ときどき不安になったり、くよくよ心配したりすることがあります。
- 正しい判断や正しい行動をしたのかどうか、自問することがあります。
- あなたはある程度の変化を好み、他の人からの制約や邪魔をされると不満を抱きます。
- あなたは自由な発想を持っていることを誇りに思い、十分な根拠もない他人の主張を聞き入れることはありません。
- あなたは他人に対して、オープンになりすぎるのは賢明ではないことに気づいています。
- あなたは、条件が整えば外交的で社交的ですが、条件が整わなければ内向的で遠慮がちです。
- あなたの願望や憧れには、かなり非現実的なものもあります。
参考図書:決定版 面白いほどよくわかる! 他人の心理学 オールカラー (PSYCHOLOGY SERIES vol. 2)
タネ明かしをしてからこの文章を読んだところで、「いや、自分には当てはまってないかなぁ・・・」と感じるかもしれないですよね。
ですが、被験者である学生たちは事前に性格診断テストを受けて、テスト結果として教授から個別に封筒を受け取ったことを想像してみてください。
自分だけの分析結果としてこの文章を読んだなら、信憑性が高いと感じるのではないでしょうか? ちなみにこの実験は、1948年以降も何百回と続けられていて、平均は「4.2」を記録しています。
誰にでも当てはまる要点とは
バーナム氏の言葉でもある “誰にでも当てはまる要点” は、次のようにまとめることができます。
- 似たような理想像を持っている
- 自分自身の成長や幸せを望んでいる
- 他人には親切でありたいと望んでいる
- 苦労や悲しみの経験を持っている
- 他人には言いたくない秘密を持っている
- 他人の世界は一般的だと思い込んでいる
- 自分の世界は特殊だと思い込んでいる
人は誰もが自分は個性的だと考えたり、自分の世界は特殊だと思い込む傾向がありますが、実はその個性は、誰にでも当てはまる個性だったりします。
例えば、あなたが密かに考えた「時間が戻る能力があればいいのに・・・」「実はもうひとつの異世界に本当の居場所があるのでは・・・」という空想は、誰もが考えやすい空想だということです。
誰もが抱きやすい悩みがある
また年齢によって、誰もが抱きやすい悩みがあります。
- 10代・・・学校や身体や恋愛の悩み
- 20代・・・恋愛や仕事の悩み
- 30代・・・家庭やキャリアの悩み
- 40代・・・子供や健康や貯蓄の悩み
- 50代・・・健康や老化や介護の悩み
それぞれの年代の身近に存在する悩みですね。
こういった誰もが当てはまるような要点を熟知して、相手を観察し、相手のことを言い当てる会話術は「コールドリーディング」と呼ばれます。
例えば、話し相手が30代であれば、「・・・今悩んでることがあるよね? 今の仕事を続けていくかどうか・・・。それから、パートナーのことでも不満があるんじゃない?」と尋ねれば、大抵の人は「なんでわかったの!?」と感じてしまいます。
バーナム効果は、この “誰にでも当てはまる要点” を、次のような条件を含ませることで生み出しやすくします。
バーナム効果を生み出す4つの秘密
誰にでも当てはまりそうな曖昧な記述でも、「自分のことだ!」と思ってしまうバーナム効果が生まれる理由は4つ考えられます。
あなたが人から信用を獲得したいなら、これらの条件を意識してみてください。
- 個別に向けられたもの
- 発信者に権威性がある
- 前向きな内容
- マルチプルアウトな表現
1. 個別に向けられたもの
バーナム効果は、個人に向けられた内容であることで、信じやすくなる傾向があります。
フォアラー効果の実験でも、フォア氏は学生一人一人に診断結果を手渡しました。これによって被験者である学生は、自分だけに宛てられた内容であると思ったはずです。
もしも、被験者の学生全員の前で「あなたたちは、全員こんな性格です」と全員同じ診断結果を発表したとしたら、バーナム効果が生まれないことは簡単に推測できますよね。
2. 発信者に権威性がある
バーナム効果は、情報の発信者に権威性があることで生まれやすくなります。
フォアラー効果の実験では、「“大学教授が行う” 性格診断」という権威がありました。例えばこれが、「“一般学生が考えた” 性格診断」だったとしたら、信憑性も疑わしいものになったはずです。
人は権威に弱いですから、「この人が言うんなら間違いない・・・」という思い込みも働くんですね。
3. 前向きな内容
バーナム効果は、前向きな内容であることで信じやすくなる傾向があります。
人は否定されることを嫌います。ネガティブな内容だけを告げたとしたら、「・・・これは自分のことじゃない」と拒否したくなる心理が働きます。これは心理的な防衛本能です。
「占いはポジティブな内容だけを信じる」という人もいますよね。前向きな内容ほど、気持ち良くなる心理も手伝って信じやすくなります。
「信じたい」内容はプラシーボ効果を生む
また、「信じたい!」という気持ちはプラシーボ効果を生み出します。『噓から出たまこと』を自分自身で作り上げることになるんですね。
4. マルチプルアウトな表現
マルチプルアウトとは、どのようにでも解釈できる言い方のことです。バーナム効果は、どちらとも取れる言い方で生まれやすくなります。
フォアラー効果の実験での診断結果を読み返してみれば、どちらとも取れる文章が多いことに気づくと思います。
例えば、
「あなたは、条件が整えば外交的で社交的ですが、条件が整わなければ内向的で遠慮がちです。」
という一文は、“外交的であり内向的である” と、どちらの意味も含まれた表現ですよね。
その他にも、
- 「◯◯な一面もある」
- 「他の人よりも◯◯」
といった言い方は、基準があるようでない曖昧な表現です。基準がないことで、自分にとって都合の良い意味として捉えやすくなります。
確証バイアスにかかることでバーナム効果は生まれる
バーナム効果は、確証バイアスにかかることで信じやすくなります。確証バイアスとは、自分にとって都合の良い情報だけを取り入れる、偏った見方のことを言います。
「決めつけ」でモノを見る傾向のことですね。
例えば、あなたが小さかった頃に、欲しいオモチャがあった時のことを思い出してみてください。「オモチャが必要な理由」ばかりに注目していませんでしたか? 「オモチャが及ぼす悪影響」や、「オモチャが不要な理由」があったとしても、それらを考えたことはなかったと思います。
テレビ討論会でも、自分とは違う反対意見を頭から否定して、全く聞く耳を持とうとしない人がいますよね。
自分の主張を補強するデータばかりを集めて、「自分の意見が正しい」と思い込んでいるために、反論データを提示されたとしても、そのデータが間違いである可能性だけを見ようとします。
これが確証バイアスです。
当たっている部分しか見なくなるから信用する
“誰にでも当てはまる要点” をついて、権威性やマルチプルな表現などバーナム効果が生まれやすい条件があることで、一度「当たってる!」と思ってしまうと、確証バイアスにかかります。
そして、自分に当てはまる情報だけが目につきやすくなります。確証バイアスにかかることで、当てはまっていない情報については軽視する傾向があります。
これらの理由から、誰にでも当てはまるような曖昧な文章でも、「ズバリ自分のことだ!」と感じるバーナム効果が生まれるんですね。
恋愛でのバーナム効果の使い方
バーナム効果を使うことで、恋愛の場面では相手との距離を近づけることができます。
その方法は、『前向きな内容』や『マルチプルアウトな表現』を使います。
- 「あれ、髪型変えた?」
- 「なんだか今日は疲れてる?」
- 「けっこう頑張り屋さんだよね」
- 「今日は意外な一面が見えた気がする」
このような言葉をかけることで、相手は「自分のことをよく見てくれている」「よく理解してくれている」と感じるようになります。
人は自分を理解してくれる人を信頼する傾向があります。ですので、たとえ気づいていなくても、曖昧な表現で理解しているふりをするだけで効果があるんですね。
そう言えば、タモリさんの「髪、切った?」も、マルチプルアウトな表現ですね。
たとえ髪を切っていなくても、「なんだか印象が違って見えたから」と言えば、『あなたのことを気にかけているよ』というアピールに変わります。
営業トークやブログ記事でのバーナム効果の使い方
相手に共感してもらい、行動してもらうための営業トークやブログ記事、セールスコピーでは、「これって私のことを言っている!」と感じてもらうことが大切です。
なぜなら、相手は話の内容を『自分ごと』に感じることで、行動しやすくなるからです。
バーナム効果が生まれるようにするには、先ほどあげた4つの条件を意識して話す(文章を書く)ようにします。
コツ1. 個人に向けたメッセージにする
バーナム効果が生まれるには、不特定多数に向けたようなメッセージではなく、一人のためのメッセージだと思ってもらうことが大切です。
ですので、「皆さんは・・・」と語りかけるのではなく、「あなたは・・・」と一人に向けて語りかける方が良いですね。対面セールスなら、もちろん相手の名前を呼びます。
コツ2. 情報発信者の権威を示す
また、情報発信者に権威があることも大切です。
「教授」「先生」「公的機関所属」「資格所有」「No.1の実績」といった、わかりやすい権威があれば、積極的にアピールするようにします。
大きな権威がなければ、
- 権威者の言葉を借りる
- 情報が詳しいこと
をアピールすることでも権威性は示せます。
コツ3. できるだけポジティブなメッセージにする
気持ちの良いポジティブなメッセージにすることで、共感をもって話を聞いてもらいやすくなります。
あまりにも恐怖心を煽るような話をした場合は、聞く気持ちがなくなってしまい、拒絶される可能性さえ出てきます。文章なら、読み進めてもらえなくなります。
コツ4. 多くの人に当てはまるような広い表現にする
一番簡単にバーナム効果を応用する方法は、多くの人にも当てはまるような広い表現方法を使うことです。
断定的な表現をせずに、比較しにくいモノで表現することで、多くの人に『自分ごと』のように感じてもらえます。
マルチプルアウトな表現の例
例えば、セールスコピーでの「通勤に1時間もかかる人へ」という表現は、「通勤時間がツラく感じる人へ」と変えます。
そうすることで、通勤時間が30分や2時間の人でも、“ツラく感じる” がイメージできる多くの人に、『自分ごと』のように感じてもらえます。
ツラいと感じる時間は、人それぞれですもんね。
また、「運動しても痩せなかったあなたへ」という表現は、『運動』に限定されています。これを「何をやっても痩せなかったあなたへ」とすれば、運動以外のことをしても痩せなかった多くの人を含ませることができます。
範囲を広げることで、多くの人に『自分ごと』のように感じてもらうことができるんですね。
ただし広い表現は、どんどん意味合いがぼやけてしまいます。
一人に向けたメッセージのはずなのに、広い表現ばかりを使ってしまうと、『自分ごと』として感じてもらえなくなります。ですので、他のコツと併用することや、使いどころが大切です。
まとめ
バーナム効果(フォアラー効果)とは、誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な内容を、「自分のことだ!」と思ってしまう心理作用のことです。エセ占い師や詐欺師が意図的に使うテクニックでもあります。
バーナム効果は、次のような条件があることで生まれやすくなります。
- 個別に向けられた内容だと思うこと
- 発信者に権威性を感じること
- 前向きな内容であること
- どちらとも受け取れるマルチプルアウトな表現であること
これらの条件があることで、自分に当てはまる内容しか受け取らない確証バイアスがかかりやすくなります。
バーナム効果を応用して、多くの人に「これって私のことだ!」と感じてもらう文章を書きたいのであれば、これらの条件を意識してみてください。読者から「理解されている」と感じてもらうことができます。
ただし、きちんと読者を想定できていれば、わざわざバーナム効果を狙わなくても、読者に刺さるメッセージを書くことができます。まずは、しっかりとした読者の想定(ペルソナ)から始めてみてください。
さらに心理学をマーケティングに応用する方法は、こちらを参考にしてください。
マーケティング心理学|今すぐ顧客心理を掴むテクニック【37選】
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