心理学者のE.シュプランガー氏は、人間が生活を送る中でどの領域にもっとも価値を置いているのかを6種類の価値観に分類しました。
この記事では、シュプランガーの6つの価値観を紹介します。
自分の価値観を理解することは、自分の人生を自分らしく生きることにつながります。また、自分や他人の価値観の違いを知ることは、コミュニケーションでの理解に役立ちます。
あなたは6つの価値観のどのタイプに当てはまるのか、自己診断をしながら読み進めてみてください。
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6種類の価値観|シュプランガーの価値類型論
ドイツの哲学者・教育学者であり心理学者のエドゥアルト・シュプランガー(Eduard Spranger・1882〜1963)氏は、著書『生の諸形式』で価値類型論を提唱しました。
価値類型論とは、文化に対する人間の関わり方を考察し、個人の人格を形成する性格を「権力・経済・社会・審美・理論・宗教」の6種類の価値観に分類した理論です。
あなたが何かを決断して行動する際には、これら6つの価値観のいずれかに従っていることを表しています。
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自分の価値観を自己診断してみる
6種類の価値観の中であなたはどのタイプの志向が強いのか、次の12の質問で簡単に自己診断してみてください。
Q1
夏休みの宿題は、計画的にすませるか?とりあえず遊びを優先するか?
計画的に宿題をすませるのであれば、理論志向型の可能性があります。
Q2
大勢で遊ぶことが好きか?少人数や1人で過ごすことが好きか?
大勢で遊ぶことが好きなのであれば、社会志向型の可能性があります。
Q3
住む家は、新築や綺麗さにこだわるか?交通の便や低家賃にこだわるか?
新築や綺麗さにこだわるなら、審美志向型の可能性があります。
Q4
職探しは、給料を優先するか?やりがいを優先するか?
給料を優先するのであれば、経済志向型の可能性があります。
Q5
宝くじで大金が手に入ったら、貯金を考えるか?豪遊を考えるか?
貯金を考えるのであれば、宗教志向型の可能性があります。
Q6
趣味をはじめるときは、道具から入るか?道具は気にしないか?
道具から入るのであれば、経済志向型の可能性があります。
Q7
SNSで悪口を書かれたら、思わず反撃するか?無視するか?
思わず反撃してしまうのであれば、権力志向型の可能性があります。
Q8
お墓参りは、欠かさず行くか?行かないか?
欠かさず行くのであれば、宗教志向型の可能性があります。
Q9
旅行は、計画をしっかり立てるか?行き当たりばったりを楽しむか?
計画をしっかり立てるのであれば、理論志向型の可能性があります。
Q10
洋服の購入は、ブランドで選ぶか?無名でも機能性やデザインで選ぶか?
ブランドで選ぶのであれば、権力志向型の可能性があります。
Q11
恋人選びは、外見を重視するか?内面を重視するか?
外見を重視するのであれば、審美志向型の可能性があります。
Q12
デート中に急な仕事が入ったら、恋人をとるか?仕事をとるか?
恋人をとるのであれば、社会志向型の可能性があります。
なぜこのような診断ができるのか、6種類の価値観の特徴を解説していきます。
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1. 権力志向型(Power intention type)
権力志向型の価値観とは、次のようなタイプの人です。
- 権力に強い関心を持つ
- 「勝ちか?負けか?」を基準にモノゴトを考える
- 地位や名声、影響力を欲しがる
- 他人を支配し、命令することに喜びを感じる
- 「支配・服従」「優位・劣位」の二元論で関係性を構築しようとする
- 他人よりも優位に立てることをモチベーションに、勉強や努力をする
- 自分の権力のためには、他人を利用することや嘘もいとわない
- 周囲への気配りは、思いやりや愛からではなく、自分の地位を上げるために行う
- リーダーシップが高い一方で、自己顕示欲も強い
- 周りにいる人は、「権力を獲得するため・権力を使うため」に存在すると考える
権力志向型の価値観の例え
例えば、権力志向型の人が同僚にご飯をご馳走するとしたら、自分の影響力を誇示できるお店を選びます。
高級なお店を選んで自分と同僚の違いをアピールしたり、馴染みのお店に連れて行って、やたらと常連客であることをアピールしたり、「常連だけが食べられるメニュー」を食べたがります。
同僚から「すごい人!」と思われれば満足です。
また、権力志向型の人が部屋のインテリアのために絵画を買うとしたら、その理由は優越感を感じるためです。有名画家の高額な作品や、希少価値の高さを理由に購入を決意します。
「6つの価値観」診断の解説
Q7:SNSで悪口を書かれたら、思わず反撃するか?無視するか?
攻撃に対して思わず反撃してしまうのは、自分の優位性を保っていたいからです。これは世の中を「優位か?劣位か?」で捉えて、自分が優位であろうとする権力志向型の特徴だと言えます。
Q10:洋服の購入は、ブランドで選ぶか?無名でも機能性やデザインで選ぶか?
ブランドで選ぶということは、ブランドの権威性にこだわるということです。これも自分の権威性をアピールしたがる、権力志向型の考え方だと言えます。ただし、優先するブランドが低価格帯であることを売りにしている場合は、別のタイプの可能性があります。
2. 経済志向型(Economical intention type)
経済志向型の価値観とは、次のようなタイプの人です。
- 財産や資産の獲得に関心を持つ
- 「得か?損か?」を基準にモノゴトを考える
- 実用的で合理的な行動を好み、結果を重視する
- 何も得られない行動には意味を感じない
- 富を得ることで他者に優越することに喜びを感じる
- 経済的な獲得をモチベーションに、勉強や努力をする
- 「この人と関わると金銭的な得があるか?」を考えて人付き合いをする
- 他人のためではなく、自分のための行動が多い
- 他人の苦しみや悲しみへの共感能力は低い
- 無駄を避ける倹約家である一方で、物欲が強く、高級なモノに惹かれやすい
経済志向型の価値観の例え
例えば、経済志向型の人が同僚にご飯をご馳走するとしたら、同僚の属性によってお店を選びます。出世の見込みがない同僚であれば安いお店を選びますし、今後出世しそうな同僚なら高級なお店を選びます。
ご馳走した分が、後々なんらかの形で返ってくれば満足です。
また、経済志向型の人が部屋のインテリアのために絵画を買うとしたら、その理由は優越感と投資のためです。今後価値が上がりそうな画家の作品や、話題性が高いことを理由に購入を決意します。
「6つの価値観」診断の解説
Q4:職探しは、給料を優先するか?やりがいを優先するか?
お金の存在がもっとも重要だと考えたなら、経済志向型の価値観であると言えます。ただし、給料を優先する理由が他にある場合は、別のタイプの可能性があります。
Q6:趣味をはじめるときは、道具から入るか?道具は気にしないか?
道具から入る理由が物欲や見栄を張りたい場合は、身の回りモノへお金をかけがちな経済志向型の考え方だと言えます。
3. 社会志向型(Social intention type)
社会志向型の価値観とは、次のようなタイプの人です。
- 仲間との協調に関心を持つ
- 「有益か?無益か?」を基準にモノゴトを考える
- 他者への協力や奉仕に喜びを感じ、自分のことよりも社会全体を優先する
- 会社や社会に役立つことをモチベーションに、勉強や努力をする
- 他者から信頼されることが多く、社会適応性に優れている
- 経済や理論に生きる人を冷たい人間だと感じやすい
- 権力に生きる人を否定しやすい
- 協調性を重んじるため、和を乱すことを嫌う傾向がある
- 他人に関心がある分、自分自身の趣味や娯楽を見つけるのが苦手な一面がある
- 人と繋がっていたい願望が強いため、孤独を極端に嫌う傾向がある
社会志向型の価値観の例え
例えば、社会志向型の人が同僚にご飯をご馳走するとしたら、同僚が喜んでくれそうなお店を基準に選びます。同僚が楽しんでくれれば満足です。
また、社会志向型の人が部屋のインテリアのために絵画を買うとしたら、その理由は友人に勧められたか、居心地のよい空間を演出するためです。誰にとっても居心地のよい部屋作りを考えるので、部屋の調和を考えて購入を決意します。
「6つの価値観」診断の解説
Q2:大勢で遊ぶことが好きか?少人数や1人で過ごすことが好きか?
大勢で遊ぶことが楽しいと感じられるのは、社交性が高いからです。これは社会志向型の特徴だと言えます。
Q12:デート中に急な仕事が入ったら、恋人をとるか?仕事をとるか?
経済的な事情よりも人間関係を重視するのであれば、社会志向型の考え方だと言えます。あるいは仕事をとるとしても、調和を乱したくないことが理由なのであれば、社会志向型の価値観だと言えます。
4. 審美志向型(Aesthetic appreciation intention type)
審美志向型の価値観とは、次のようなタイプの人です。
- 美の調和に関心を持つ
- 「美しいか?醜いか?」を基準にモノゴトを考える
- 芸術的な陶酔や、感情的・身体的な快楽を好む
- 理論よりも、感性や感覚を重視する
- 自分の美学の追求をモチベーションに、勉強や努力をする
- こだわりのある生活や人生を志向し、自分の美学のためには妥協をしない
- 束縛を嫌い、自由と個人主義的な行動を好む
- 経済的な損得や実用的かどうかは、あまり関心がない
- 人に興味はあるが、福祉にはあまり関心がない
- 繊細な感受性や豊かな感情を持つため、精神的に傷つきやすい一面がある
審美志向型の価値観の例え
例えば、審美志向型の人が同僚にご飯をご馳走するとしたら、自分のテンションが上がるお店を選びます。変わったインテリアや話題性があるなど、基準はまず自分が「楽しい!」と思えるかどうかです。
また、審美志向型の人が部屋のインテリアのために絵画を買うとしたら、その理由は自分の感性に触れたからです。無名の画家であったり、他人が見たらよく分からないような絵画でも、自分が「美しい!すばらしい!」と感じれば購入を決意します。
「6つの価値観」診断の解説
Q3:住む家は、新築や綺麗さにこだわるか?交通の便や低家賃にこだわるか?
生活の中で綺麗さを重視するのは、審美志向型の特徴だと言えます。
Q11:恋人選びは、外見を重視するか?内面を重視するか?
一般的に、人を評価する際に外見に比重を置くのであれば、審美志向型の考え方だと言えます。あるいは内面に美しさを感じて、その美しさにこだわるのであれば、審美志向型の価値観と言えます。
5. 理論志向型(Theoretical intention type)
理論志向型の価値観とは、次のようなタイプの人です。
- 論理的な探究に関心を持つ
- 「正しいか?誤りか?」を基準にモノゴトを考える
- 客観的なデータを重視し、論理的な思考や推論をすることが好き
- 真理の探究をモチベーションに、勉強や努力をする
- 自分の得意分野や興味分野には、徹底的に集中できる
- 嘘を嫌う傾向がある一方で、理論武装するため頑固で屁理屈に見られがち
- 自分の意見を正しいと思い込みやすく、他者と対立することがある
- 感覚や感性を否定しがちで、芸術や政治への関心が薄い
- 他者への思いやりや共感が乏しく、集団生活が苦手
- 社会適応性は一般的に良くない
理論志向型の価値観の例え
例えば、理論志向型の人が同僚にご飯をご馳走するとしたら、等価交換できるお店を選びます。仕事を手伝ってもらったお礼なら、自分が手伝ってもらった価値と同僚にご馳走する価値が見合えば満足です。
また、理論志向型の人が部屋のインテリアのために絵画を買うとしたら、その理由は寂しい空間を埋めるためです。アートの感性をあまり持ち合わせていないので、人気がある画家や評判のよい作品を参考に購入を決意します。
「6つの価値観」診断の解説
Q1:夏休みの宿題は、計画的にすませるか?とりあえず遊びを優先するか?
「やりたいこと」よりも「やらなければいけないこと」のために計画を立てて優先できるのは、理論志向型の特徴だと言えます。
Q9:旅行は、計画をしっかり立てるか?行き当たりばったりを楽しむか?
楽しむことさえ計画性を求めるのであれば、理論志向型の考え方だと言えます。
6. 宗教志向型(Religion intention type)
宗教志向型の価値観とは、次のようなタイプの人です。
- 宗教的なことに関心を持つ
- 「道徳的か?非道徳的か?」を基準にモノゴトを考える
- 神(信じるもの)を拠り所に、自分の救済を求める
- 正しく在ることをモチベーションに、勉強や努力をする
- 世俗的な快楽よりも、宗教的な道徳に従って生きることに意義を感じる
- 愛や恵みを人生の救いに感じ、心からボランティアに奉仕できる
- 自分の内なる声に耳を傾けることが好き
- 理屈では説明できないことを信じることができる
- 非科学的なことやスピリチュアルな分野に興味を持ちやすい
- 道徳にこだわり過ぎて、自分や他人に厳しさを求めることがある
宗教志向型の価値観の例え
例えば、宗教志向型の人が同僚にご飯をご馳走するとしたら、世間で話題かどうかは気にせず、平凡でも楽しいひと時を過ごせるお店を選びます。同僚と共有する時間が楽しければ満足です。
また、宗教志向型の人が部屋のインテリアのために絵画を買うとしたら、その理由は風水や運気アップです。権威のある人がおすすめしている作品や、どれほど運気アップに効果があるのかで購入を決意します。
「6つの価値観」診断の解説
Q5:宝くじで大金が手に入ったら、貯金を考えるか?豪遊を考えるか?
思わぬ大金を手に入れても、物欲など世俗的な誘惑に負けることなく、普段と変わらない生活を心がけようとするのであれば、道徳的であろうとする宗教志向型の価値観だと言えます。貯金する理由が他にある場合は、別のタイプである可能性があります。
Q8:お墓参りは、欠かさず行くか?行かないか?
先祖供養を自分のスケジュールの最優先事項にしているのであれば、神や仏の存在を大切にする宗教志向型の考え方だと言えます。
まとめ
シュプランガー氏が提唱した6つの価値観の特徴は、次のとおりです。
- 権力志向型:権力が大切で、勝利を求める人
- 経済志向型:お金が大切で、結果を求める人
- 社会志向型:仲間が大切で、協調を求める人
- 審美志向型:感性が大切で、美学を求める人
- 理論志向型:理屈が大切で、真理を求める人
- 宗教志向型:道徳が大切で、救済を求める人
あなたが何かを決断して行動する時、その理由の元になるのがこれら6つの価値観です。自己診断してみて、あなたはどのタイプの志向が強かったでしょうか?
おそらく「理論志向の一面もあるけど、社会志向の一面もあるなぁ・・・」のように、1つの価値観には収まらなかったのではないかと思います。
その理由は、一般的に人は場面に合わせていくつかのアイデンティを使い分け、それに伴っていろんな価値観が現れるからです。
例えば、家庭では父親として、宗教志向の価値観が強く現れるかもしれません。仕事場では上司として、経済志向の価値観が強く現れるかもしれません。ですので、すべての行動が1つの価値観だけに従っているとは限らないんですね。
1人でいる時、家族や友達といる時、仕事場にいる時、あなたはどんな価値観が現れますか? もっとも多く現れるのは、どのタイプの価値観ですか?
6つの価値観を知ったことで、価値観の違いの理解が深まったのではないかと思います。自己分析を深めて、あなたがもっとも心地よい価値観を再確認してみてください。
それがあなたらしい価値観です。
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