新しいアイデアを考える時の有名な会議手法に、日本ではブレストと呼ばれることも多い「ブレインストーミング」があります。
ですが、「やってみたけど、あまり効果がなかったなぁ・・・」と感じたことはありませんか? もしも効果がなかったのなら、ブレストが正しくできていなかったのかもしれません。
この記事では、ブレストで効果的な結果を出すために、次の3つについて解説します。
- ブレストの基本的な4つのルール
- ブレストを正しく進める3つのポイント
- ブレストでの発想と整理を助ける7つの発想モデル
ブレストを正しく進めて、効果のある会議にするために役立ててください。
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ブレインストーミングとは(ブレスト)
ブレインストーミング(Brain Storming:BS法)は、その名のとおり、他人同士の頭脳(Brain)を嵐(Storm)のようにかき混ぜるようなイメージのアイデア発想法です。
集団でアイデアを出し合うことで、一人では考えつかない発想を組み合わせて、斬新なアイデアが生まれることを期待した会議手法です。問題解決の場面でも使われます。
このブレインストーミングは、アメリカの広告代理店BBDO社で副社長をしていたアレックス・F・オズボーン氏によって、1938年に考案されました。
オズボーン氏はブレインストーミングの他にも「オズボーンのチェックリスト」など、いくつものアイデア発想法を考案した人物として有名です。
このブレストを正しく進めるためには、「4つのルール」と「3つのポイント」を守る必要があります。
まずは、基本的な4つのルールについて確認してください。
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ブレインストーミングの基本的な4つのルール
ブレストの基本的な4つのルールは、次のとおりです。
ブレスト 4つのルール
- 批判しない
- 自由に発言する
- 質よりも量を重視する
- アイデア同士を結合する
このルールを守らないと、新しいアイデアが生まれることが難しくなります。ですので、事前にメンバー間でルールを共有しておくことが大切です。
ルール1. 批判しない
ブレストを正しく行うためには、新しく出たアイデアはその場で判断しないようにします。
なぜなら、その場で判断や批判をしてしまうと、自由な発想の妨げになってしまうからです。特に立場の高い人が批判をしてしまうと、メンバーが萎縮したり、やる気を阻害する原因になります。
ですので、たとえ「それは予算的に無理だろう」というようなアイデアだとしても、「予算をクリアするためには何をすれば可能か」という、ポジティブな面からアイデアを広げるようにします。
ルール2. 自由に発言する
「こんなことは当たり前かな?」というアイデアでも、自由に発言することを促すようにします。
たとえどんなに些細なアイデアでも、新しいアイデアのきっかけになることがあるからです。探偵ドラマなんかでも、第三者のなにげない言動から推理を閃くシーンがありますよね。
ですので、しかめっ面で会議をするのではなく、笑い合えるような、自由に発言できるゆるい環境づくりが大切です。
ルール3. 質よりも量を重視する
「もっといいアイデアがあるはず・・・」と悩んで黙っているよりも、できるだけ多くのアイデアを出すことを心がけます。
そのためには、たとえどんなにイマイチなアイデアでも、大歓迎のムードをつくる必要があります。大量のアイデアを出し合うことで、新しいアイデアにつなげることを目指します。
ルール4. アイデア同士を結合する
他人のアイデアに便乗して新しいアイデアを加えたり、結合させることでアイデアの質を高めるようにします。
誰がアイデアを出したのかを重視するのではなく、チームとしてアイデアをつくっていくことを心がけます。
他人のアイデアに便乗する時に気をつけたいのは、「そうじゃなくて・・・」と批判してからアイデアを追加しないことです。出たアイデアを否定するような言い方をすれば、みんながアイデアを出しにくい空気が漂ってしまうからです。
では次に、ブレストを正しく進める3つのポイントを確認してください。
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ブレインストーミングを正しく進める3つのポイント
ブレインストーミングを正しく進行するためには、次の3つのポイントがあります。
ブレスト 3つのポイント
- 適正なメンバーを選ぶ
- 目的を明確にする
- 制限時間を設ける
ポイント1. 適正なメンバーを選ぶ
できるだけいろいろなアイデアを出すためには、考え方の違うメンバーであることが望ましいです。そのためには、年齢・性別・経験がそれぞれ違うタイプで、3〜10人程度で行うのが最適な人数だとされています。
メンバーが発言を萎縮しないためには、上役は参加しない方が良い傾向があります。
ポイント2. 目的を明確にする
ブレストを行う前に、何を求めて会議をするのか目的を明確にしておきます。
ブレストでは、アイデアの質よりも量が大切です。ですが、目的を明確にしていないと、ただ意見を出し合うだけで、方向性を見失ったアイデアが出てしまう危険があるからです。
ポイント3. 制限時間を設ける
新しい発想を生み出すためには、アイデアを出し合うことと、まとめることを別々に行うことが重要です。
だらだらした雰囲気でアイデアを出すだけで会議が終わらないように、あらかじめ
- アイデアを量産する時間
- 量産されたアイデアをまとめる時間
を設定しておきます。
ブレインストーミングのやり方とコツ
ブレインストーミングは、「4つのルール」の確認と「3つのポイント」をふまえたうえで、次の7つのステップで進めます。
ブレストのやり方
- 司会進行役か、書記係を設ける
- ホワイトボードか、大きめの紙か、たくさんの小さなカードを用意する
- アイデアを創出する時間には、挙手制か順番制でたくさんのアイデアを自由に出し合う
- 出たアイデアは、書記係がひたすら書いていく
- アイデアをまとめる時間には、出たアイデアの中から、似たアイデア同士を近い場所に移動させて、見た目でわかりやすいように整理する
- アイデア同士に順序や相関関係がある場合も、わかりやすいように整理する
- どのアイデアが重要か、実行可能な順番をつける
司会進行役のコツ
司会進行役は、挙手制か順番制で、参加者になるべく多くの意見を出してもらうことを心がけます。
挙手制で消極的な参加者に対しては、「◯◯さんの得意分野には、プラスアルファしたら面白そうな特徴はある?」などと尋ねて意見を出してもらうようにします。ただし、「もっと他に面白そうなアイデアはない?」と、今までのアイデアを否定するような言い回しにならないように気をつけることも大切です。
順番制の場合は、「特にありません・・・」「同じ意見です・・・」といった答えは禁止するようにします。
参加者のコツ
参加者は、自分ひとりで完全なアイデアを出す必要がないことを肝に命じておくようにします。
ただし、「特にありません・・・」「同じ意見です・・・」といった答えにならないように、ノートを持ち込んで周りの人の意見をメモしながら、自分の意見を膨らませるようにすることが大切です。
自分の好きなことや、得意な分野の視点から考えると、他の人とは違うアイデアが思いつきやすくなります。
書記係のコツ
書記係は、参加者が答えた言葉を要点にまとめる際には、出てきた単語はなるべくそのまま記すようにします。
書記係の解釈で言葉を変えてしまうと、本来のアイデアの意図とは違う内容になってしまうかもしれないからです。
ブレストでのアイデアを助ける5つの発想モデル
ブレインストーミングでは、自由にアイデアを出し合うことが大切です。
とは言え、自由すぎると逆に、アイデアが出しにくいということも起こります。アイデアの発想は、あるルールを設けることで出て来やすくなります。
その際に役立つ、5つの発想モデル(フレームワーク)を紹介します。
- ブレインライティング
- ゴードン法
- 希望点列挙法
- 欠点列挙法
- シックス・ハット法
1. ブレインライティング
ブレインライティングとは、「沈黙のブレインストーミング」と言われている発想法です。
話し合いの苦手な人が多い場合や、一人が話し続けて進行してしまう場合に行うと、普通のブレインストーミングを行うよりも、多くのアイデアを生み出せることがあります。
基本的には、「6・3・5法」と呼ばれるルールに従って行います。
6・3・5法
- 参加者は6人
- 1ラウンドで3つのアイデアを考える
- 1ラウンドは5分で行う
ブレインライティングのやり方
- メンバーを6人集めて、3×6マスのシートを1つ用意する
- それぞれの人がテーマについて、5分で3つのアイデアを書き込む
- 書いたシートを隣の人に回して、6人全員がアイデアを書く
- 書き終わったら、各メンバーが良いと思ったアイデアを2、3コ選んで全員で検討する
2. ゴードン法
ゴードン法とは、リーダー以外はテーマを知らない状態で、アイデアを出し合うブレインストーミングです。
アメリカのアーサー・D・リトル社のウィリアム・ゴードン氏が、新製品開発のためにブレインストーミングをヒントにして考案されました。
通常のブレインストーミングでは、自由な発想でアイデアを出し合うといっても、全員がテーマを知っていることで、固定観念にとらわれてしまう恐れがあります。
例えば、「新しいハサミ」というテーマでブレストを始めた場合、「ハサミ」の特徴に引っ張られたアイデアしか出てこない可能性があります。
ゴードン法では詳細なテーマを知らせずに、先入観がない状態で自由な発想をしてもらうことが目的です。
ゴードン法のやり方
- リーダーがテーマを抽象的なキーワードにして、メンバーに発表する
例えば、「新しいハサミ」を考えるとしたら、テーマを「楽しい文房具」「便利な道具」などにする - テーマについて、自由にブレインストーミングをする
- 本来のテーマ「新しいハサミ」を全員に伝えて、再度ブレインストーミングをする
3. 希望点列挙法
希望点列挙法とは、アイデアを出す際に、テーマについて「こうなったらいいな」という希望や願望からアイデアを発想する方法です。 現実や常識から一旦離れて理想を追求することで、自由なアイデアを出します。
列挙された希望点の中から良いものを選んで、実現しそうなアイデアへと整えていきます。
4. 欠点列挙法
欠点列挙法とは、テーマについて、欠点や不満な点などをあげて、解決のためのアイデアを発想する方法です。欠点を探す時は、クレーマーになったつもりで徹底的に粗探しをします。
列挙された欠点の中から重要なものを選んで、改善するためのアイデアを発想していきます。
5. シックス・ハット法
シックス・ハット法とは、6つの異なる視点から、テーマについて考えるアイデア発想法です。一度に一つの視点から考えることで普段の思考のクセを強制的に外し、新しいアイデアの発見ができます。
「水平思考」を提唱したことで有名な、エドワード・デ・ボノ氏によって考案されました。
6つの視点の特徴
- 客観的:実際の情報データに基づいた事実から、テーマについて考える
- 直感的:テーマについて感情的な印象を考える
- 肯定的:ポジティブに考えて、テーマについての良い面を探し出す
- 否定的:理論的な矛盾点や、失敗しそうな要因について、不安材料やリスクを探し出す
- 革新的:あらゆる可能性について、自由にアイデアを出す
- 俯瞰的:話し合いの方法について確認したい時や、結論について考える時に、冷静な視点で見る
ブレストのまとめ方に使える2つの発想モデル
ブレインストーミングで出たいろいろなアイデアは、整理をしてまとめます。
その際に役立つ、2つの発想モデル(フレームワーク)を紹介します。
- KJ法
- セブン・クロス法
1. KJ法
KJ法とは、カードにアイデアを書き出して、分類・整理することでアイデアを生み出す発想法です。ブレインストーミングで得られたアイデアをまとめる時に役立ちます。
1965年に文化人類学者の川喜田二郎氏によって考案され、川喜田氏のイニシャルからKJ法の名前がつきました。
KJ法のやり方
- テーマに関するアイデアを、小さなカードに書き出して並べる
- 似た内容のカードをまとめてグループをつくり、各グループに名前をつける
- グループが10コ以上できた場合は、さらに大きなグループとしてまとめて名前をつける
- 関連性のあるグループ同士が近くなるように並べ替える
- グループ同士の関係性を、線や矢印、記号を使って図解化する
- 図解化したアイデアを文章化する
2. セブン・クロス(7×7)法
セブン・クロス法とは、アイデアを7×7マスの計49項目に分類して、重要度を分かりやすくする発想法です。ブレインストーミングの内容を、重要度の高い順番に整理する時に便利な手法です。
アメリカの経営コンサルタントである、カール・グレゴリー氏によって考案されました。
セブン・クロス(7×7)法のやり方
- ブレインストーミングで出たアイデアを、小さなカードに書き出す
- カードを7つのカテゴリーに分類し、重要度の高い順番に左から右へ並べていく
- 各カテゴリーの中でも、重要度の高い順番に7つ、上から下へ並べていく
7×7マスの計49項目を整理して、マトリックス状の一覧表にすることで、出てきた意見の全体像をひと目で把握できます。重要な項目ほど左上にあるので、わかりやすいという利点があります。
必ず7×7マスである必要はありませんが、これくらいのアイデアを出すことで重要な項目が見えてきます。
楽しくブレストをするためのアイテム
ブレストは楽しい雰囲気で行うことで、自由なアイデアが出やすくなります。とは言え、会議室でたんたんと進行していると、ついつい重苦しい雰囲気になることがありますよね。
そんな時には、ブレストを楽しくするアイテムを使うことで、自由な発想が出てきやすくなる環境を作ることができます。
バタフライボード:公園でも会議ができるホワイトボード
気分を変えて会議の場所を屋外や公園などでやりたい場合は、持ち歩きができる自由度の高いホワイトボードを使うと便利です。
こちらの「バタフライボード」を使えば、簡単に持ち運びができて、書き直すことも自由にできます。
天井が高いところでは自由度の高いアイデアが出やすいという実験結果もありますから、気分を変えてブレストをしたい場合などにはピッタリのアイテムです。
ブレスター:ゲーム感覚でブレストを進めるカード
ブレストに慣れていない場合は、ゲーム感覚でアイデアを出し合うと良い結果に結びつくことがあります。こちらの「ブレスター」は、カードゲームのような要領で、新しいアイデアの創出を助けてくれます。
ブレストカード:面白法人カヤックの発想法をカードにしたゲーム
こちらの「ブレストカード」は、いろいろなWebコンテンツや企画を手がける面白法人カヤックが提供する、ブレストのためのカードゲームです。
イラストからアイデアを連想する「発想力」と、他人のアイデアを膨らませる「乗っかり力」を使って、たくさんのアイデアを出すことに役立ちます。
問題解決やアイデア発想に役立つツール
問題解決やアイデア発想のフレームワークは、多くの書籍でも紹介されています。
例えば『思考法図鑑』は、アイデアを発想するための思考法を60種類も知ることができる一冊です。
アイデア発想のためのアプローチをたくさん知っておけば、自分やチームに合った方法で最適なアイデアを生み出すことに役立ちます。
ビジネスに役立つフレームワーク
『ビジネスフレームワーク』は、アイデアをカタチにする際に役立つフレームワークを70種類も知ることができる一冊です。
起業アイデアを思いついた時には、問題の乗り越え方や、マーケティングの分析方法などがわかるようになります。社会人1年目や2年目の人であれば、上司に一目置かれる存在になるための企画力や、マネジメント力を鍛えることに役立ちます。
会議をスムーズに進めるリーダーのためのツール
あなたがリーダーとなって問題解決やアイデア発想の会議を進める場合は、会議の雰囲気を良くして、参加メンバーのアイデアを引き出すファシリテーションのスキルが重要になります。
『ファシリテーターの道具箱』は、参加メンバーに「全体像を考えてもらう」「分析的に考えてもらう」「他の視点で考えてもらう」ための技術を49種類も知ることができる一冊です。会議を進行するコミュニケーションに自信がない場合は、手元に置いておくと役に立ちます。
まとめ
ブレインストーミングをうまく行うためには、アイデアの発想と整理の時間を分けることが大切です。
出てきた意見はその場でついつい判断してしまいがちですが、ジャッジは後に回して、まずはアイデアを量産することがポイントです。
ぜひ、4つのルールと3つのポイントを意識して、ブレストを進めてみてください。
また、人数を集めて会議ができない場合などは、少人数や一人でもアイデアを創出できるエクスカーション法や水平思考法などがあります。斬新なアイデアが発想できますので、いろいろと試してみてください。
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