マーケティング心理学

フット・イン・ザ・ドアとは?断る自由を奪う交渉術の使い方

フット・イン・ザ・ドア

交渉ごとで承諾率を上げる心理テクニックのひとつとして、「フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)」があります。

相手が同意しやすい小さくて簡単な要求からスタートして、段階的に要求のレベルを上げることで、最終的に、本命である大きめの要求を通しやすくするというテクニックです。

なんの策もなく交渉した場合と比べると、4倍以上の差が出る交渉術です。

ビジネスの場面では「ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩的要請法)」と並んで有名ですが、恋愛や日常の場面でも使える交渉テクニックです。

この記事では、相手に断りづらくさせるフット・イン・ザ・ドア・テクニックの使い方と、コピーライティングやマーケティングへの応用についてお話しします。

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フット・イン・ザ・ドア (段階的要請法)とは

フット・イン・ザ・ドア(foot in the door)の名前は、「訪問販売員が少し開いたドアにつま先でも入れることができれば、商品を売ることができる」という描写に由来します。

ドアを開いてもらうこと自体は小さなことでも、相手からの承諾を一度でも得られれば、その後に続く大きな要求にも承諾してもらいやすくなるという例えです。

フット・イン・ザ・ドアの例え

例えば街中で、新発売の缶コーヒーを無料サンプルとして配っていたとします。

お姉さんから「どうぞ!」と手渡されて缶コーヒーを受け取ったところ、「5分ほどでできるアンケートにも、ご協力いただけませんか?」とお願いされました。この場合、あなたはアンケートを書いてしまうのではないでしょうか?

はじめからアンケートをお願いされていたら、面倒に感じて断っていたかもしれません。小さな要求を受け入れたことで、そのあとの大きな要求も受け入れたことになります。

なぜ、一度小さな要求を受け入れてしまうと、その後の要求にも応えてしまうのでしょうか?

自分の行動を一貫させたい「一貫性の原理」

人は無意識のうちに、「自分の行動や考え方には一貫性を持たせたい」と考える心理傾向があります。これを「一貫性の原理」と言います。

もしも、「無料サンプル」という要求を受け入れたのに、そのあとに続く「アンケート」の要求を拒否したら、自分の一貫性が保てないことになります。

自分の行動の一貫性を保つために、ついつい受け入れようとするんですね。

一貫性の原理が働く理由は、「一貫性の原理とコミットメントとは?約束を守りたくなる心理と使い方」の記事で詳しく解説しています。

フット・イン・ザ・ドアの実験例

フット・イン・ザ・ドアの効果を検証するために、1966年にアメリカの社会心理学者フリードマンとフレーザーが行なった実験があります。

カリフォルニア州で112人の住民を対象にした実験では、公共事業を名目に一軒ずつ家を訪問して、あるお願いをして回り、その成功率を比べました。

そのお願いとは、『注意深く運転しよう』と下手くそな字で書かれた、家の景観を損ねるような大きな看板を、「お宅の庭の芝生に立てさせてくれませんか?」というものです。住民からしてみれば、あまり受け入れたくないハードルの高い内容です。

このお願いに承諾した住民は、予想どおり低くて 16.7%でした。

ところが、このお願い事をする二週間前に、ある小さなお願いをしてOKをもらっていた場合は、看板を立てることに 76.0%のOKをもらうことに成功しました。

最初の方法と比べると、4倍強の成功率です。

成功率を4倍以上高めた小さなお願いとは?

二週間前にした小さなお願いとは、7.5cm四方の『安全運転しよう』と書かれたステッカーを、「車のフロントガラスか、家の窓に貼ってくれませんか?」というものでした。

このお願いに「いいですよ」と答えた住民は、「自分は公共心のある人間だ」ということを自覚したことになります。そこで、次に出された公共に関する大きな要求にもOKしやすくなったと考えられます。

なぜなら、『安全運転しよう』のステッカーは受け入れたのに、『注意深く運転しよう』の看板を拒否しては、「公共心のある人間だ」という一貫性を保てなくなってしまうからですね。

目的が少し違っても一貫性は働く

ちなみに、『安全運転しよう』ではなく、『カルフォルニアを美しくしましょう』という地域美化のためのステッカーを貼ってもらった場合には、大きな看板にOKしてくれた住民は47.6%でした。

たとえ目的が少し違っていたとしても、一度小さな要求を受け入れた場合は、次に出される大きな要求にも受け入れやすくなるということですね。

同じ目的であれば、より受け入れてもらいやすくなることがわかります。

フット・イン・ザ・ドアの2つのメリット

フット・イン・ザ・ドア・テクニックには、2つのメリットがあります。

  1. 小さなお願い事から始めるので、断られにくい
  2. 断られにくいことで、自分を守ることができる

例えば恋愛においては、好きな人に告白して「No」だった場合には、それまでの関係性が変わってしまうことになります。絶望を感じて、深く傷つくことになります。

ですが、フット・イン・ザ・ドアを使って小さな「Yes」を積み重ねていけば、関係性が変わることなく、告白で「Yes」をもらえる可能性が高くなります。

小さなお願いが断られにくいことで、自分を守ることができるんですね。

フット・イン・ザ・ドアの実用例

フット・イン・ザ・ドア・テクニックは、いろいろな場面で使うことができます。

フット・イン・ザ・ドアをビジネスで使う場合

ビジネスでは、いきなり買ってほしい商品を勧めても、うまくいくケースはほとんどありません。そこで、フット・イン・ザ・ドアを使って、小さな要求を通してから本命の要求を出すようにします。

ビジネスでの会話例

A:「5分だけお話しさせてもらってもよろしいですか?」
B:「いいですよ」
A:「・・・試しに一週間無料で、一度使ってみませんか?」
B:「そうですねぇ、使ってみようかな」
A:「・・・使い心地はいかがですか? このままお買い上げされますか?」
B:「そうですね、もらいましょうか」

“少し話すだけ” という小さなハードルをクリアすることで、商品を販売できる機会が増えます。

フット・イン・ザ・ドアを恋愛で使う場合

恋愛の場面で使うフット・イン・ザ・ドアも、小さな提案から始めます。

例えばデートに誘いたい女性がいて、いきなり「デートしよう?」と提案しても断られてしまうかもしれない場合は、簡単にOKしてくれそうな小さなお願いごとから始めます。

恋愛での会話例

A:「Bさんて、◯△の漫画を持ってるって言ってたよね、今度貸してくれない?」
B:「いいよ、貸してあげる」
A:「・・・すごく面白かったわ〜、今度◯△が映画で実写化されるみたいだけど、一緒に行かない?」
B:「うん、いいよ」

Bさんにとっては、◯△の漫画を貸すことに承諾したことで、◯△に関することにOKしやすくなります。この場合は、共通する話題を楽しめるわけですから、Bさんにとっても抵抗が少なくなりますよね。

フット・イン・ザ・ドアを日常で使う場合

「ついで」は、日常でもよく使われるフット・イン・ザ・ドア・テクニックだと言えます。

日常での会話例

A:「トイレに行くついでに、このCDを隣りの部屋のラックに置いてきてもらっていい?」
B:「いいよ、わかった」
A:「あ、ついでに本棚から◯◯の本を持ってきてもらっていい?」
B:「いいよ」

一度OKを出したことで、「ついで」を断りにくくなります。

フット・イン・ザ・ドアを使う時の3つの成功ポイント

フット・イン・ザ・ドアを使う時には、3つの成功ポイントがあります。

  1. 要求の差を大きくしすぎない
  2. 要求の段階を分ける
  3. 最初の要求の見返りで金銭的な報酬を与えない

1. 要求の差を大きくしすぎない

最初に出す小さな要求と、そのあとに出す大きな要求の差は、大きくしすぎないことが大切です。

例えば、1時間の残業をお願いしたい場合に、「10分だけ仕事を手伝ってくれない?」と、最初のお願いを極端に小さくしてOKをもらったとします。その次に「ひょっとしたら10分じゃ無理そうだから、1時間でもいい?」と、本命のお願いしても失敗しやすくなります。

1時間の残業をお願いしたいのだとしたら、最初に出す要求は、せめて「30分」くらいにして、心理的な負担を感じさせないようにすることがポイントですね。

2. 要求の段階を分ける

要求の差を大きくしすぎないためには、要求は段階を分けるようにすると成功しやすくなります。

例えば、「30分だけ仕事を手伝ってくれない?」と小さなお願いをした場合は、次に出す要求も「ひょっとしたら30分じゃ無理そうだから、一応45分見てもらっていい?」と小さな要求にします。

45分経つ前に「ごめん、あと15分だけ!」とお願いをすれば、最終的に1時間の残業もOKしてもらいやすくなります。

3. 最初の要求の見返りで金銭的な報酬を与えない

最初に出す小さな要求に応えてくれた時には、見返りとしてお金をあげないことが大切です。

要求に応えた見返りとしてお金をもらうと、人は「買収された」という印象を受けることになります。また、親切心で要求に応えた人にとっては、自尊心を傷つけることにもなります。

例えば、恋愛を進展させたくて「◯△の漫画を貸してくれない?」と相手にお願いしたのに、お礼にお金を用意してしまうと、単純な取引になってしまいます。

この場合は、次回からもお金を用意しないと相手は満足してくれず、お願いにOKしてくれない可能性も出てきてしまいます。

これは、アンダーマイニング効果と呼ばれる心理現象の影響です。

アンダーマイニング効果とは、自発的な行動(内発的動機)に対して、金銭的な報酬などの外発的な動機づけを行うと、やる気が低減する現象です。

ですので、フット・イン・ザ・ドアを成功させるためには、お金をあげないことが大切なんですね。

フット・イン・ザ・ドアのコピーライティングへの応用

フット・イン・ザ・ドアをコピーライティングに応用する場合は、セールスコピーの最初に読み手を限定して、小さな同意を得るようにします。

小さな同意を得ることで、最後まで読んでもらいやすくなります。

例えば、ダイエット商品のセールスコピーで「『この夏までには絶対に5kg痩せたい!』と思っているなら、この手紙はあなたにとって、絶対に役に立ちます」と書けば、該当する人は自然と同意してくれることになります。

あるいは、信念に訴えて同意を得ることもできます。

例えば、「たとえ痩せたとしても、健康的じゃなきゃ意味はないと思いませんか?」と書けば、健康的に痩せたい人は同意してくれることになります。

そのあとセールスコピーで健康的に痩せる商品であることを証明すれば、商品の案内にも応じてもらいやすくなります。

フット・イン・ザ・ドアのマーケティングへの応用

フット・イン・ザ・ドアをマーケティングに応用する場合は、お客さんに小さな行動を促します。

例えば、ブログではメールマガジンの登録を促します。ブログやメールマガジンでは質問を募集したり、コメントしてくれるように促します。小さな行動をしてもらえれば、「このブログ(メールマガジン)を応援している」ことを自覚してくれるようになります。

小さなコミットメントをしてもらうことで「一貫性」が働けば、ブログやメールマガジンに関心を持って読んでもらえるようになります。

まとめ

フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)とは、相手が同意しやすい小さな要求から始めて、段階的にハードルを上げると、本命の要求がとおりやすくなるという交渉術です。

相手がコミットメントすることで、一貫性のある言動を保ちたくなる「一貫性の原理」を応用したテクニックです。悪用すると人間関係を壊すことになりますが、上手に使えば、頼みにくいことでも快く引き受けてもらえる可能性があります。

フット・イン・ザ・ドアとは逆の心理テクニックとして有名なものには、「ドア・イン・ザ・フェイス」があります。こちらは、最初に無理めの大きな要求を出して、あえて断られることで、次に出す小さめの要求を通しやすくするテクニックです。

  • フット・イン・ザ・ドア:小さな(ダミー)要求にOK ⇒ 大きな(本命)要求もOK
  • ドア・イン・ザ・フェイス:大きな(ダミー)要求はNG ⇒ 小さな(本命)要求はOK

交渉ごとを有利に進めるために、使い分けてみてください。

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