マーケティング心理学

フット・イン・ザ・ドアとは?段階的な交渉の2つのメリットと使い方

フット・イン・ザ・ドア

交渉ごとで承諾率を上げる心理テクニックのひとつとして、「フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)」があります。

相手が同意しやすい小さくて簡単な要求からスタートして、段階的に要求のレベルを上げることで、最終的に、本命である大きめの要求を通しやすくするというテクニックです。

なんの策もなく交渉した場合と比べると、4倍以上の差が出る交渉術です。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの使い方、コピーライティングやマーケティングへの応用についてお話しします。

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フット・イン・ザ・ドア (段階的要請法)とは

『foot in the door』とは、「訪問販売員が少し開いたドアにつま先でも入れることができれば、商品を売ることができる」という描写に由来します。

ドアを開いてもらうこと自体は小さなことでも、たとえ小さくても相手からの承諾を得られれば、その後に続く大きな要求にも承諾してもらいやすくなるという例えです。

なぜ、一度小さな要求を受け入れてしまうと、その後の大きな要求にも答えてしまうのでしょうか?

これには、「一貫性の原理」という心理作用が働くためです。

一貫性の原理とは?

一貫性の原理とは、無意識のうちに「自分の行動や考え方には一貫性を持たせたい」と考える心理傾向のことを言います。

例えば、街中で新発売の飲み物を無料サンプルとして配っていたとします。

「どうぞ!」と手渡されて無料サンプルを受け取ったところ、「アンケートにもご協力ください」とお願いされたとしたら、あなたはアンケートを書いてしまうのではないでしょうか?

無料サンプルを受け取ってアンケートを拒否したら、自分の一貫性が保てないことになります。

はじめからアンケートをお願いされていたら、面倒に感じて断っていたかもしれません。「無料サンプル」という小さな要求を受け入れたことで、そのあとに続く「アンケート」という大きな要求も、一貫性を保つために受け入れようとします。

一貫性の原理が働く理由は、「一貫性の原理とコミットメントとは?約束を守りたくなる心理と使い方」の記事で詳しく解説しています。

フット・イン・ザ・ドアの実験例

1966年にアメリカの社会心理学者フリードマンとフレーザーが行なった、フット・イン・ザ・ドアの効果を検証した実験があります。

カリフォルニア州で112人の住民を対象にした実験では、公共事業を名目に一軒ずつ家を訪問して、あるお願いをして回り、その成功率を比べました。

そのお願いとは、『注意深く運転しよう』と下手くそな字で書かれた、家の景観を損ねるような大きな看板を、「お宅の庭の芝生に立てさせてくれませんか?」というものです。住民からしてみれば、あまり受け入れたくないハードルの高い内容です。

このお願いに承諾した住民は予想どおり低くて、16.7%でした。

ところが、このお願い事をする二週間前に、ある小さなお願いをしてOKをもらっていた場合は、看板を立てることに76.0%のOKをもらうことに成功しました。

4倍強の成功率です。

フット・イン・ザ・ドアで成功率を4倍以上高めた方法とは?

二週間前にした小さなお願いとは、7.5cm四方の『安全運転しよう』と書かれたステッカーを、「車のフロントガラスか、家の窓に貼ってくれませんか?」というものでした。

このお願いに「いいですよ」と答えた住民は、「自分は公共心のある人間だ」ということを自覚したことになります。そこで、次に出された公共に関する大きな要求にもOKしやすくなったと考えられます。

なぜなら、『安全運転しよう』のステッカーは受け入れたのに、『注意深く運転しよう』の看板を拒否しては、「公共心のある人間だ」という一貫性を保てなくなってしまうからですね。

目的が少し違っても一貫性は働く

ちなみに、『安全運転しよう』ではなく、『カルフォルニアを美しくしましょう』という地域美化のためのステッカーを貼ってもらった場合には、大きな看板にOKしてくれた住民は47.6%でした。

たとえ目的が少し違っていたとしても、一度小さな要求を受け入れた場合は、次に出される大きな要求にも受け入れやすくなるということですね。

同じ目的であれば、より受け入れてもらいやすくなることがわかります。

フット・イン・ザ・ドアの2つのメリットと使い方

フット・イン・ザ・ドアには、2つのメリットがあることがわかります。

  1. 小さなお願い事から始めるので「断られにくい
  2. 断られにくいことで、「自分を守ることができる

例えば恋愛においては、好きな人に告白して「No」だった場合には、それまでの関係性が変わってしまうことになります。絶望を感じて、深く傷つくことになります。

ですが、フット・イン・ザ・ドアを使って小さな「Yes」を積み重ねていけば、関係性が変わることなく、告白で「Yes」をもらえる可能性が高くなります。

いきなり「No」を突きつけられないことで、自分を守ることができるんですね。

このフット・イン・ザ・ドア・テクニックは、いろいろな場面で使うことができます。

フット・イン・ザ・ドアをビジネスで使う場合

ビジネスでは、いきなり買ってほしい商品を勧めても、うまくいくケースはほとんどありません。そこで、フット・イン・ザ・ドアを使って、小さな要求を通してから本命の要求を出すようにします。

A:「5分だけお話しさせてもらってもよろしいですか?」
B:「いいですよ」
A:「・・・試しに一週間無料で、一度使ってみませんか?」
B:「そうですねぇ、使ってみようかな」
A:「・・・使い心地はいかがですか? このままお買い上げされますか?」
B:「もらいましょうか」

フット・イン・ザ・ドアを恋愛で使う場合

恋愛の場面で使うフット・イン・ザ・ドアも、小さな提案から始めます。

例えばデートに誘いたい女性がいて、いきなり「デートしよう?」と提案しても断られてしまうかもしれない場合は、簡単にOKしてくれそうな小さなお願いごとから始めます。

A:「Bさんて、◯◯の漫画を持ってるって言ってたよね、今度貸してくれない?」
B:「いいよ、貸してあげる」
A:「すごく面白かったわ〜、今度◯◯の映画が実写化されるみたいだけど、一緒に行かない?」
B:「うん、いいよ」

Bさんにとっては、◯◯の漫画を貸すことに承諾したことで、◯◯に関することにOKしやすくなります。この場合は、共通する話題を楽しめるわけですから、Bさんにとっても抵抗が少なくなりますよね。

フット・イン・ザ・ドアを日常で使う場合

「ついで」は、日常でもよく使われるフット・イン・ザ・ドア・テクニックだと言えます。

A:「トイレに行くついでに、このCDを隣りの部屋のラックに置いてきてもらっていい?」
B:「いいよ、わかった」
A:「あ、ついでに本棚から◯◯の本を持ってきてもらっていい?」
B:「いいよ」

一度OKを出したことで、「ついで」を断りにくくなります。

フット・イン・ザ・ドアは三日坊主を克服する際に応用できる

交渉術ではありませんが、フット・イン・ザ・ドアの「一貫性」は、三日坊主を克服する際に応用することができます。

例えば、毎朝30分のジョギングを日課にしたいと考えたのに、四日目あたりで「今日は、面倒だなぁ」と感じたとします。そんな時は、フット・イン・ザ・ドアの『小さな要求』を、自分に対して出します。

ステップ1:目標の内容を分解する

まずは、目標の内容を分解します。

例えば、ジョギングの工程を「着替える」⇒「玄関に行って靴を履く」⇒「外へ出る」⇒「ストレッチをする」⇒「5分のウォーキング」⇒「25分のジョギング」という工程に分解します。

ステップ2:最初の工程だけをする

最初の工程である、「着替える」だけを目標にして実行します。

目標を「30分のジョギング」と考えると面倒に感じることでも、『小さな要求』である最初の「着替える」だけだったら、面倒に感じずにできそうな気がしませんか?

ステップ3:最初の工程をすると一貫性の原理が働く

『小さな要求』である「着替える」をクリアすると、一貫性の原理が働きやすくなります。

つまり、「せっかく着替えたんだから、靴までは履いてみようかな」という気持ちが起こりやすくなります。靴を履いたら、「じゃぁ外までは出てみようか・・・」と一貫性のエンジンが回転し始めます。

一番最初の工程さえ行動すれば、気分が乗らなければそのまま辞めても大丈夫です。そんな気持ちで、『小さな要求』をクリアするようにしてみてください。

小さな行動をすることで、一貫性が働きやすくなります。

フット・イン・ザ・ドアのコピーライティングへの応用

フット・イン・ザ・ドアをコピーライティングに応用する場合は、セールスコピーの最初に読み手を限定して、小さな同意を得るようにします。

小さな同意を得ることで、最後まで読んでもらいやすくなります。

例えば、ダイエット商品のセールスコピーで「『この夏までには絶対に5kg痩せたい!』と思っているなら、この手紙はあなたにとって、絶対に役に立ちます」と書けば、該当する人は自然と同意してくれることになります。

あるいは、信念に訴えて同意を得ることもできます。

例えば、「たとえ痩せたとしても、健康的じゃなきゃ意味はないと思いませんか?」と書けば、健康的に痩せたい人は同意してくれることになります。

そのあとセールスコピーで健康的に痩せる商品であることを証明すれば、商品の案内にも応じてもらいやすくなります。

フット・イン・ザ・ドアのマーケティングへの応用

フット・イン・ザ・ドアをマーケティングに応用する場合は、お客さんに小さな行動を促します。

例えば、ブログではメールマガジンの登録を促します。ブログやメールマガジンでは質問を募集したり、コメントしてくれるように促します。小さな行動をしてもらえれば、「このブログ(メールマガジン)を応援している」ことを自覚してくれるようになります。

小さなコミットメントをしてもらうことで「一貫性」が働けば、ブログやメールマガジンに関心を持って読んでもらえるようになります。

まとめ

フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)とは、相手が同意しやすい小さな要求から始めて、段階的にハードルを上げると、本命の要求がとおりやすくなるという交渉術です。

相手がコミットメントすることで、一貫性のある言動を保ちたくなる「一貫性の原理」を応用したテクニックです。悪用すると人間関係を壊すことになりますが、上手に使えば、頼みにくいことでも快く引き受けてもらえる可能性があります。

フット・イン・ザ・ドアとは逆の心理テクニックとして有名なものには、「ドア・イン・ザ・フェイス」があります。こちらは、最初に無理めの大きな要求を出して、あえて断られることで、次に出す小さめの要求を通しやすくするテクニックです。

  • フット・イン・ザ・ドア:小さな(ダミー)要求にOK ⇒ 大きな(本命)要求もOK
  • ドア・イン・ザ・フェイス:大きな(ダミー)要求はNG ⇒ 小さな(本命)要求はOK

交渉ごとを有利に進めるために使ってみてください。

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