3kgの荷物を持った後で10kgの荷物を持つと、10kgがすごく重く感じます。反対に、10kgの荷物を持った後で3kgの荷物を持つと、3kgがすごく軽く感じます。
同じモノでも直前に何を触れたのかによって、印象はずいぶん変わりますよね。このような、実際の差よりも大きく印象が変わる現象を、コントラスト効果と言います。
この心理効果を応用すれば、ギャップを生かした恋愛の仕方や、人をやる気にさせる方法、許してもらえる謝り方をマスターできるようになります。
マーケティングやコピーライティングでは、アンカリング効果と一緒に使うことで、商品を安く見せることができます。
どのように使うのか、コントラスト効果の使い方についてお話しします。ポイントは、「直前に何を見せるか?」です。
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コントラスト効果とは(対比効果)
コントラスト効果(Contrast effect)とは、2つ以上のモノゴトを認識する際に、最初と2番目のものに違いの差があると、実際の差よりも大きな差に感じる心理現象のことを言います。
物理的なものに限らず、言葉や文章のような概念的なものも含まれます。
コントラスト効果は、「知覚のコントラスト」「コントラストの原理」「対比効果」などとも呼ばれます。
例えば、普段は健康であることを当たり前に感じていても、風邪が治った直後は、健康であることがすごくありがたいものに感じたりしますよね。
「風邪」と「健康」との違いを、より大きな差に感じます。これがコントラスト効果です。
人は比べることで判断できる
人は2つ以上のモノゴトを比較することで、はじめてその度合いを判断することができます。ひとつを知っただけでは判断ができません。
例えば、「気温20度」は暑いでしょうか? 寒いでしょうか?
気温20度だけを言われたって、判断のしようがないですよね。
まずは季節が春・夏・秋・冬のいつなのかで感覚が変わります。昨日が15度なら今日の20度はすごく暖かく感じますし、昨日が25度なら今日の20度はすごく涼しく感じます。
このように、2つ以上を比較することで、その度合いを判断しています。
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人間関係・恋愛でのコントラスト効果の使い方
コントラスト効果を人間関係や恋愛の場面で使う場合は、「ギャップ」をつくることで利用できます。
例えば、強面の人は第一印象のハロー効果によって、性格まで「怖そう」だと勝手に判断されてしまいがちです。ですので、良い人に見せたいなら、ちょっとした優しさを見せるだけでも、見た目と中身のギャップ差ですごくいい人に感じます。
普段は頼りないイメージがあったとしたら、得意分野で能力を発揮すれば、普段とのギャップ差ですごく頼もしく見えるようになります。
マイナスからプラスに転じると、その差分で良い印象に変わるんですね。
印象によるコントラストは、ゲイン・ロス効果とも呼ばれます。
ギャップをつくると差分で得をするゲイン・ロス効果
普段の評価が「+1」の人が「+5」の評価に変わると、差分は『プラス4』です。ところが、普段「-3」の人が「+5」に変われば、差分は『プラス8』になるということです。
元ヤンの人が更正して評価されるのは、この差分によるゲイン(利益)効果の影響ですよね。反対に、いい人そうに見えて性格が悪かったとしたら、ロス(損失)効果によって大きなマイナス評価になります。
ですので、普段の自分はどう見られているのかを考えて、プラスに転じる「ギャップ」をつくる必要があります。
例えば、容姿の綺麗な女性は、ハロー効果によって全ての評価が高くなりがちです。
「料理はできそうだし、頭も良さそう、性格も良さそう・・・」
こんな風にプラスに見られがちな場合は、なるべく早い段階で「できない」ことをアピールしておく必要があります。
相手の頭の中にマイナスをつくっておいて、そこから少しでもプラスの「ギャップ」が生まれれば、ゲイン効果によってプラスの評価に変わります。
部下をやる気にさせるコントラスト効果の実験
人間関係を良好にするには、正しい順番で「ギャップ」をつくる必要があります。それを表す心理学の実験があります。
被験者を4つのグループに分けて、どのグループに属したいかを尋ねました。
- 終始褒める
- 終始否定する
- 最初に褒めて、最後には否定する
- 最初は否定して、最後には褒める
すると、「4」を選ぶ人が圧倒的に多い結果になりました。
一見すると「1. 終始褒める」が良さそうな気もしますが、コントラスト効果による差分の大きさの方が、魅力的に感じるようです。
「3」は最悪の順番です。はじめに褒めて後で否定するわけですから、その差分ツラく感じます。
ですので、あなたが部下に注意する必要がある時には、最後にフォローしてあげる言葉を残しておくことが大切です。
許してもらえる謝罪の仕方
ネガティブな報告をして、少しでも許してもらいたい場合は、まずは大きなネガティブの話しをします。そして最後に、本来打ち明けるべきネガティブな話を出します。
そうすることで、コントラスト効果をつくり出せます。
例えば、奥さんに許しを請う場合。
謝らなければいけないことがあるんだ。昨日、仕事で大きな失敗をしたんだ。
それで、ぼーっと車を運転してたら、危うく事故しそうになったんだよ。入院なんてことになってたら医療費はかかるし、その間の収入もなくなる。もしも人を巻き込んでたらと思うと、事故しなくて本当に助かった。
それで、どうしても気を紛らわしたくて・・・ ついパチンコしてしまって、2万円負けたんだ。本当にごめん!
事故したかもしれないことと比べたら、2万円の損失は、たいしたことではないような気がしませんか?(ウソだったら許せませんが)
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マーケティングでのコントラスト効果の使い方
コントラスト効果をマーケティングに応用することで、商品を安く感じてもらうことができます。それには、比較できる対象があることが大切です。
例えば洋服屋さんでは、3万円のジャケットの隣りに5万円のジャケットを置きます。すると、5万円との比較で3万円のジャケットが安く感じるようになります。
10万円のジャケットを隣りに置けば、さらに安く感じます。
コントラスト効果を使った販売の仕方
「ギャップ」をつくるには適した順番があるように、コントラスト効果を使って商品を販売するのにも適した順番があります。
商品紹介は、大きな価格から順番に紹介するようにします。
人は最初に目にするものを基準点として考える傾向があります。これを心理学では「アンカリング効果」と言います。最初に高い価格の商品を見ることで、その価格が基準点になります。
例えば、30万円のジャケットを紹介した後で5万円のジャケットを紹介すれば、コントラスト効果によって、5万円のジャケットがたいした価格ではないように感じます。
さらに、5万円のジャケットの購入を決意してもらった後では、3000円の小物の紹介にも応じてもらいやすくなります。
これは、テンション・リダクション効果を使ったクロスセルという手法です。
コピーライティングでのコントラスト効果の使い方
ラインナップが1つの商品を、セールスコピーやWebサイトのランディングページで販売する場合は、他の比較対象を登場させるようにします。
例えば、1万円の商品を販売する場合、
と表現することで、1万円を小さな価格であるように感じてもらえます。
または、お客さんが将来得られるベネフィット(未来の利益)を金額に換算した比較で表現することもできます。
例えば、「この商品を購入すれば、半年後には10万円を手にすることができます。」と、大きな額と比較することで、1万円の商品を安く感じてもらうことができます。
あるいは、「普通なら10万円を手にするには、最低1年はかかります。ですがこの商品では半年間で可能です。」と、期間を比較対象にすることもできます。
まとめ
コントラスト効果とは、2つ以上のモノゴトを認識する際に、実際の差よりも大きな差に感じる心理現象のことを言います。
人間関係や恋愛の場面で応用するには、「ギャップ」をつくるようにします。その順番は、最後に良い印象に変えることが大切です。
マーケティングに応用するには、最初に大きな価格の比較対象を紹介するようにします。商品がひとつの場合でも、他の比較対象と比べることで、安く感じてもらうことができます。
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