顧客心理を掴む心理学

行動経済学とは?マーケティングで絶対役立つおすすめ本【8冊】

2017-12-08

行動経済学 のおすすめ本

行動経済学の知識があれば、マーケティング活動を有利に進めることができます。なぜなら行動経済学とは、人がお金を使う時の心理を扱っているからです。

例えば、消費者は価格の違いをどのように感じるのか? どのような条件の違いで金額を支払っても良いと感じるのか? といったことをテーマに、数々の研究が発表されています。

また行動経済学は、お金を使う時の心理だけではなく、日常的にある交渉・説得や、恋愛の場面でも役に立ちます。

たとえば、あなたが大好きな女性にプレゼントをあげたいと思った時に、喜んでもらえる効果的なタイミングは、デートで会ってすぐでしょうか? それとも別れ際でしょうか?

この答えは、行動経済学を学ぶことで分かります。

この記事では、行動経済学についての解説と、行動経済学を学ぶ際におすすめできる本を紹介します。人間の意思決定に関わる心理の知識を手に入れて、マーケティングや交渉を優位に導いてください。

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行動経済学とは

行動経済学とは、従来の経済学にある「人間は合理的に行動する」という前提を否定して、人間の非合理性を取り入れた “経済学と心理学が融合した学問” です。

簡単に言えば、感情や思い込みで左右される『錯覚ばかりする人間』の経済活動(意思決定プロセス)をモデル化しようとする学問です。

従来の経済学でのホモ・エコノミクスとは

従来の経済学では、経済活動をモデル化しやすくするために、人間を合理的な存在(=ホモ・エコノミクス)として考えてきました。

ホモ・エコノミクスとは、意思決定をする際には完全な情報と完璧な計算力を持ち、錯覚や感情にとらわれることなく、自分の利益の最大化を追求する存在です。

実際の人間とは、かけ離れた存在ですよね。

そのため、どうしても合理的に説明できない事象が生まれます。

従来の経済学では、合理的に説明できない事象はアノマリー(異常な例)として扱っていました。ですが、アノマリーを放置しておくのは問題があるために、人間の非合理的な部分について研究されるようになりました。

その研究が行動経済学です。

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合理的に説明できないアノマリーとは

行動経済学の第一人者でもあるダニエル・カーネマン氏とエイモス・トヴェルスキー氏が考案した、人間が非合理的であることがよくわかる『リンダ問題』があります。

リンダ問題

リンダという31歳の独身女性がいます。

彼女は頭が良く、はっきりとものを言うタイプで、大学では哲学を専攻していました。学生時代は差別問題や社会主義の問題に強い関心を持ち、反核デモにも参加したことがあります。

リンダに当てはまる可能性が高いのは、次のどちらでしょうか?

  • A:銀行の現金出納係
  • B:銀行の現金出納係であり、女性解放運動を行なっている

この問題では、多くの人がBを選ぶ傾向にありました。

ですが、よく考えてみればおかしなことに気づくと思います。BはAの条件を含んで、さらに条件が増えています。ですので、BがAよりも確率が高いことはあり得ないんですね。

リンダ問題の集合ベン図

リンダ問題の集合ベン図

このような、ホモ・エコノミクスではしないような選択をしてしまうのが、感情のある人間の非合理的な部分です。

なぜ人間が非合理的な選択をしてしまうのかというと、問題をじっくりと考えずに、簡単に結論を出す傾向があるからです。

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簡単に意思決定をするヒューリスティクスとは

問題を簡略化して結論を得る方法を、ヒューリスティクスと言います。

ヒューリスティクスは、言い換えれば「脳のショートカット」のようなものです。大抵は正解へ導くことができますし、なにより結論に至るまでの時間を短縮できる利点があります。

ほとんどの場合は経験に基づいて結論を出すので、ヒューリスティクスは「経験則」と同義に扱われます。

人間の脳は体重の2%ほどの重量に対して、全身の20%ほどのエネルギーを消費します。つまり僕たち人間は、脳のエネルギーを節約するために無意識で経験則に頼る傾向があるんですね。そして経験則の思い込みによって、非合理的な選択もしてしまうというわけです。

行動経済学の研究によって、次のような代表的なヒューリスティクスが明らかになっています。

  • 代表性ヒューリスティック
  • 利用可能性ヒューリスティック
  • アンカーヒューリスティック

代表性ヒューリスティック

代表性ヒューリスティックとは、典型的な特徴から事柄の確率を過大に評価する思考パターンのことです。

例えば、学校内でタバコの吸い殻を見つけた時に、普通の学生と不良学生がいたら、不良学生が捨てたと思ってしまうことです。「不良はタバコを吸う」という確率の方が高いと考えてしまうんですね。

先ほどの『リンダ問題』での思考パターンは、この代表性ヒューリスティックにあたります。

利用可能性ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティックとは、思い浮かびやすい事柄を過大に評価する思考パターンのことです。

例えば、同じ飛行機事故のニュースをテレビで何度も見ることで、「飛行機は危ない」と判断してしまうことです。すぐに思い出せる情報が重要だと感じるんですね。

アンカーヒューリスティック

アンカーヒューリスティックとは、最初に触れた情報が印象に残り、その後の判断に影響を与える思考パターンのことです。

例えば、最初に見た商品の価格が1万円なら、次に見る1万1000円の商品は「高い」と感じることです。最初に触れた情報が、その後の判断の基準になるんですね。

行動経済学はいつから始まった?

人間の非合理的な心理を研究した行動経済学は、第一世代(旧行動経済学)と第二世代(新行動経済学)に分けることができます。

第一世代(旧行動経済学)は、1950〜1960年代に始まりました。

人間の経済行動が多くのバイアス(偏見)の影響を受けていることが認められ、1978年にはハーバート・サイモン氏、2002年にはダニエル・カーネマン氏、2017年にはリチャード・セイラー氏がノーベル経済学賞を受賞しています。

第二世代(新行動経済学)は、1990年代に始まりました。経済学の問題点を指摘するだけではなく、代替的なモデルを作り出す流れが生まれました。
参照サイト:ウィキペディア/行動経済学

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行動経済学の初心者にやさしいおすすめ本 8冊

行動経済学では、人間がいかに非合理的な選択をするのかを知ることができます。ここでは、行動経済学(旧行動経済学)を学ぶ際にオススメの本を紹介します。

知識ゼロでも今すぐ使える! 行動経済学見るだけノート/真壁 昭夫 著

まずは気軽に行動経済学を学びたいなら、『知識ゼロでも今すぐ使える! 行動経済学見るだけノート』がおすすめできます。

行動経済学の全体像や歴史、マーケティングに使われる心理効果などが、1テーマにつき見開き2ページで完結される構成で、わかりやすくイラスト入りで解説されています。

  • バブルはなぜ起こるのか?
  • 生活に役立つ行動経済学
  • セールスに惑わされないための行動経済学
  • 行動経済学のこれからの展望

などのトピックについて、ペラペラとめくるだけでも要点が頭に入ってきやすい作りになっています。

サクッと読めるのが長所ですので、「行動経済学の全体像を簡単に把握したい!」という人にとっては、入門編として最適な一冊だと思います。

ポケット図解 行動経済学の基本がわかる本/ハワード・S. ダンフォード 著

行動経済学のエッセンスがコンパクトにまとめられた、初心者にはうれしい一冊がこちらの『ポケット図解 行動経済学の基本がわかる本』です。

  • 行動経済学とは何か
  • ヒューリスティクス
  • プロスペクト理論
  • フレーミング

などの行動経済学の基礎知識がしっかりと詰め込まれていながら、完結に解説されているので、全体像を網羅的に理解することに役立ちます。

絶版されているのか、中古本でしか手に入れられないのが残念ですが、行動経済学を学ぶには確実な一冊です。

〔エッセンシャル版〕行動経済学/ミシェル・バデリー,依田 高典 他

こちらの『〔エッセンシャル版〕行動経済学』は、行動経済学についての全体像の知識が網羅的にまとめられた、教科書的な一冊です。

先ほど紹介した2冊に比べると硬派な印象を受けますので、ちょっと手強く感じるかもしれません。ただし、重要な用語は太文字になっていますので、わりと読みやすいと思います。

  • 人を動かす要因・意欲を刺激する要因は何か
  • 人は社会的要因にどのような影響を受けるのか
  • 性格・気分・感情は選択や意思決定にどう影響するのか

といったテーマを掘り下げて、解説されています。

「初心者だけど行動経済学を総合的に学びたい!重要な用語をたくさん知りたい!人間の意思決定のメカニズムが知りたい!」という人には、ピッタリな一冊です。

ファスト&スロー(上・下)/ダニエル・カーネマン 著

人間の意思決定のメカニズムを知る上で絶対に読んでおきたいのが、こちらの『ファスト&スロー』です。行動経済学のバイブル的存在と言っても良いかもしれません。

著者であるダニエル・カーネマン氏は、2002年にノーベル経済学賞を受賞した人物であり、行動経済学そのものを作った心理学者でもあります。

意思決定をする際には、人間の脳の機能である「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」が作用して、非合理的な選択をします。その理由や実験内容が紹介されています。

他の行動経済学の本をいくつか読めばわかりますが、出てくる事例の多くは、この『ファスト&スロー』に書かれている内容です。上下巻があるので大変なボリュームですが、その分、相当な知識が手に入ります。

予想どおりに不合理/ダン・アリエリー 著

実践的なマーケティングとして取り入れやすい事例が紹介されているのが、こちらの『予想どおりに不合理』です。とは言え、マーケティングだけではなく人間の不合理さについて幅広く学べます。

読みやすさで言えば、『ファスト&スロー』よりもはるかに読みやすいと思います。「行動経済学を初めて知る」という人にも向いている、入門的な一冊かなと感じます。

この本を読むことで、人は「おとり」や「無料」に弱い傾向があることが学べます。また、人はその場の雰囲気に流される傾向があることを学べます。

これらの事実を知ることで、より多くのお客さんを獲得できるアイデアが思い浮かぶようになると思います。応用すれば、女性を簡単に口説き落とすことにも役立ちます。

経済は感情で動く/マッテオ・モッテルリーニ 著

「◯◯効果」や「◯◯バイアス」など、より多くの心理効果を知ることができる、行動経済学の入門的な一冊です。

ひとつの心理効果の事例がクイズ形式で紹介されていて、サラッと読むことができます。初めて行動経済学に触れる人には、こちらの本がピッタリかなと思います。

多くの心理効果が紹介されている分、内容は広く浅くといった感じではあります。ただ、ページの端には用語解説が載っていますので、パラパラと読み返して辞書のようにも扱える一冊です。

まずはこちらの本を読んで、より興味が湧いたら別の行動経済学の本を読んでみるのも良いかと思います。

実践 行動経済学/リチャード・セイラー 著

2017年にノーベル経済学賞を受賞した、リチャード・セイラー氏による全米ベストセラーの著書です。

本書は、人々がより良い生活を送るためのちょっとした工夫「ナッジ:Nudge」について解説された本です。

社会保障制度の民営化、薬剤給付プログラム、臓器提供者を増やす方法など、おもに公共政策において行動経済学をどのように活かすかという実践アイデアが書かれています。

マーケティングに活かす方法が直接的に書かれているわけではありませんが、多くのヒントをもらうことができます。

選択の科学/シーナ・アイエンガー 著

「24種類の色とりどりのジャムを並べるより、6種類に絞ったほうが売れる」という、『ジャムの実験』で有名な著者による本です。

どのような選択をすれば人は幸せになれるのか? という『選択』をテーマに、いろいろな人間の心理について書かれています。

行動経済学だけではなく、日常にありふれた場面での心理について解説されています。そのため、明日使いたくなる心理学をたくさん学ぶことができます。

豊富な事例と実験データが紹介されていますので、ビジネスシーンでのヒントも得られます。

行動経済学で扱う心理効果

当サイト(Web活用術。)では、行動経済学に出てくる心理効果を解説した記事を書いています。人間の不合理な心理を深く学びたい場合は、ぜひ読んでみてください。

メンタルアカウンティング

入手方法や使い方によって、お金の価値が変わる心理の理論
メンタルアカウンティングとは?お金の心理学で無駄遣いをなくせ!

プロスペクト理論

人は得をするよりも、損をしたくない感覚の方が大きい心理の理論
プロスペクト理論とは?マーケティングに応用する損失回避の法則

アンカリング効果

最初に見た印象が基準になって、後に見る印象が変わる心理効果
アンカリング効果|商品価値を釣り上げる悪用禁止のマーケティング

コントラスト効果

直前に知覚した内容によって、後に知覚する感覚の差が大きく感じる心理効果
【コントラスト効果】恋愛やマーケティングに効くギャップの心理学

フレーミング効果

同じモノでもどこにフォーカスするのかで印象が変わる心理効果
フレーミング効果とは?文章を変えるだけで売上アップする行動経済学

ハロー効果

ひとつの特徴に引きづられて、全体の印象を決定してしまう心理効果
ハロー効果|面接・恋愛・マーケティングで使う第一印象操作テクニック

コンコルド効果

損するとわかっていても投資をやめられない心理効果
サンクコストとコンコルド効果|損失が拡大するもったいない心理とは

保有効果

手に入れたモノに価値を感じて、手放したくなくなる心理効果
保有効果とは?マーケティングで使う、失う恐怖と現状維持バイアス

極端の回避性

一番大きなモノや一番小さなモノは避けたいと感じる心理効果
【松竹梅の法則】買い物で真ん中を選ぶ心理「極端の回避性」の利用法

現在バイアス

未来の報酬よりも、目の前の報酬を重大に感じる心理作用
現在バイアスとは?行動経済学でわかる先延ばし癖のカラクリと防ぎ方

ピーク・エンドの法則

経験の印象は、ピークとエンドの度合いで決まる心理効果
【ピーク・エンドの法則】ストーリーは2つの印象でつくれ!

ちなみにこの記事の冒頭でお話しした、プレゼントを渡す効果的なタイミングとは「別れ際」です。『ファスト&スロー』に出てくる、ピーク・エンドの法則を応用して導き出すことができます。

▼売る商品より大事なもの▼ウェブセールスライティング習得ハンドブックcp-b

まとめ

行動経済学とは、人間の不合理的な選択を研究した、経済学と心理学が融合した学問です。

マーケティングでは、人間の心理を知ることが必要不可欠です。ビジネスで扱う心理を知るためには、まずは行動経済学を学んでみてください。

個人的には、『ファスト&スロー』『予想どおりに不合理』が、マーケティングで扱う心理を学ぶにはマストです。

参考になりましたら幸いです。

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  • この記事を書いた人

高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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