顧客単価を上げる販売手法に、アップセルとクロスセルがあります。これらのセールスは、お客さんの満足度を上げるために行います。
用語解説
- アップセル:グレードを上げた商品を薦めるセールス
- クロスセル:同時に別の商品を薦めるセールス
- ダウンセル:グレードを下げた商品を薦めるセールス
この記事では、
- アップセル・クロスセル・ダウンセルの違い
- それぞれの効果的な使い分け方
について解説します。
それぞれのセールス手法のタイミングを間違ってしまうと、お客さんに不快感を与えてしまう場合があります。
お客さんから感謝をされて売上を上げるためにも、アップセルとクロスセルの違いと効果的な使い分け方について、今一度確認してみてください。
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アップセルとは
アップセルとは、ある商品の購入を検討している人に対して、より高い価格の上位商品を薦める販売活動のことを言います。一人あたりの購入点数を変えずに、売上を上げることができます。
例えば、4万円のデジタルカメラを購入しようと考えている人に、上位商品である高機能な6万円のデジタルカメラを薦めて、上位商品を買ってもらうことがアップセルです。
この場合、何もしなければ4万円の売上だったはずが、アップセルを行うことで顧客単価が2万円も上がります。
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クロスセルとは
クロスセルとは、商品の購入を決定した人に対して、別の商品も同時に薦める販売活動のことを言います。一人あたりの購入点数を増やして、売上を上げることができます。
例えば、4万円のデジタルカメラの購入を決定した人に対して、5000円のメモリーカードや2万円の望遠レンズを薦めて、カメラと同時に買ってもらうことがクロスセルです。
この場合、何もしなければ4万円の売上だったはずが、クロスセルを行うことで6万5000円の売上に変わります。
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ダウンセルとは
アップセルとは反対に、ある特定の商品を検討していた人が、予算などの理由で購入の決断に至らなかった時に、グレードを下げた低価格の商品を薦める販売活動のことを、ダウンセルと言います。
例えば、4万円のデジタルカメラを検討していた人が、予算を理由に買うのをやめた場合、機能の劣る2万5000円のデジタルカメラを薦めて買ってもらうことがダウンセルです。
この場合、ゼロになるはずだった売上が、ダウンセルを行うことで2万5000円の売上に変わります。
アップセル・クロスセル・ダウンセルの効果的なタイミング
アップセルとクロスセルは、お客さんの「買い物をしよう!」という気持ちを後押しして顧客単価を上げるセールス手法です。
一貫性の原理を応用したセールスと言えますが、アップセルとクロスセルは、それぞれ有効なタイミングが違います。
アップセルの効果的なタイミングとは
アップセルは、商品購入を前向きに検討している段階で行うのが最適なタイミングです。
特定の商品購入を決定した後でアップセルを行うと、「せっかく買いたい商品が決まったのに、いまさら何・・・?」と、店員さんが売りたい商品を押し売りしている感じがしてしまいます。
反対に、まだ商品を買おうかどうしようかを悩んでいる段階の人にアップセルを行っても、的外れな提案になってしまいます。
まずは、商品が与えてくれるベネフィットを説明して、購入意欲が高まった時にアップセルを行うことが大切です。
カメラを例にあげると、「カメラが欲しいんだけど、どれにしようかなぁ・・・?」というタイミングです。
クロスセルの効果的なタイミングとは
クロスセルは、商品購入を決意した後で行うのが最適なタイミングです。
例えば、どのカメラを買おうかと考えている段階の人に、「ただ今、カメラと一緒に望遠レンズを買うとお得ですよ」とクロスセルをしたところで、魅力的な提案にはなりません。
なぜなら、カメラのグレードについて考えている段階であって、その先に必要になるかもしれない望遠レンズについては考えていないからです。
ついで買いをしやすいクロスセル
お客さんが商品購入を決意した後は、「ついでだから一緒に買っておこうかな」という気持ちになりやすい傾向があります。
これは、テンション・リダクション効果という心理作用が関係しています。人は意思決定をすると、次の瞬間には気がゆるみがちになるという心理現象です。
『購入』という意思決定をした瞬間は、“財布の紐がゆるみやすくなる瞬間” でもあるんですね。気持ちがゆるむことで、「どうせ財布を開くんだから、これもついでに買っちゃえ・・・」と、買い物に対する一貫性が働きやすくなるわけです。
コンビニやスーパーのレジ横に置いてあるお菓子や小物を、ついでに買ってしまったことはありませんか? あれは、テンション・リダクション効果を応用したクロスセルだったんですね。
ですので、商品購入を決意したタイミングが、クロスセルを成功させるコツだと言えます。
ダウンセルの効果的なタイミングとは
ダウンセルは、お客さんが商品の価格について、ネガティブな発言をした段階に行うのが最適なタイミングです。
例えばお客さんが、「いやぁ、この商品は良いんだけど、ちょっと高いかなぁ・・・」といった発言をした時に、別の商品の選択肢があることを伝えます。
ダウンセルの注意点
ダウンセルで気をつけたいのは、「値下げではない」ということです。
- 「高いから買わない」
- 「じゃあ安くします」
というやり取りをしたのでは、その場では売上が上がるかもしれませんが、ゆくゆくは自分の首を締めることにもつながります。それに、定価で買った人が値下げを知れば、不信感が生まれてしまいます。
ですので、ダウンセルは低価格の別商品で行うことが基本です。
Webサイトでのアップセルとクロスセル
接客業で頻繁に行われるアップセルとクロスセルですが、Webサイトでも行うことができます。
Webサイトでのアップセルの例え
Webサイトでアップセルを行うには、まずは安いバージョンの商品を一番目立つように配置しておきます。あるいは、安いバージョンの商品を広告で紹介しておきます。
そして、安いバージョンの商品の詳しい説明とともに、機能や品質で優れた上位商品を比較紹介をします。そうすることで、はじめは安さに惹かれた人でも上位商品の魅力が伝われば、アップセルを行うことができます。
効果的に上位商品を紹介するには、松竹梅の法則やアンカリング効果と呼ばれる心理効果を知っておくと役に立ちます。
Webサイトで行われるワンタイムオファー
またWebサイトでは、購入を決定した直後に行われる「ワンタイムオファー」という方法があります。
という注意書きとともに現れる、特別ページでのアップセルです。
人は購入を決意した瞬間がもっとも欲求が高い状態ですから、「どうせ買うなら、グレードの高い商品の方が良いかも・・・ しかも買える機会が一度きりしかないなら・・・」と、アップセルの効果が期待できます。
ただし、ワンタイムオファーは「むりやり買わされた」と感じる場合もありますので、キャンセルが発生しやすくなるオファーでもあります。
購入者に不満を抱かせないためには、アフターフォローが大切です。
Webサイトでのクロスセルの例え
ECサイトの場合、カートに入れた直後のページに関連商品を紹介することで、クロスセルを行うことができます。
Amazonなどで見かける、
- 「この商品を買った人はこんな商品も買っています」
- 「あと◯◯円の購入で、送料無料になります」
という紹介がクロスセルにあたります。
また、アップセルと同様にワンタイムオファーでクロスセルを行うこともできます。この場合は、特別割引などを用意しておく必要があります。
アップセル、クロスセル、ダウンセルの失敗例
アップセルやクロスセルのタイミングを間違えてしまうと、お客さんは「このお店では二度と買い物したくない・・・」と思ってしまうことがあります。
ここではお店側の失敗例として、僕が受けたセールスの体験をお話しします。
ある日、携帯ショップで・・・
数年前のある日、僕は携帯ショップで iPhone の機種変更を考えていました。どのグレード(何GB)にしようかと悩んでいたところ、対応してくれた店員さんの一言は、「 iPad との2台持ちがおすすめですよ」でした。
「家にいる時には大きな画面の iPad が使いやすいですし、持ち運びだってカバンに入れれば重くないです。何GBかで悩むくらいなら、2台持ちで用途を分けてみてはどうですか?」という提案でした。
顧客にとっては不要だった提案
どのグレードの iPhone にしようか検討していた段階で、クロスセルを受けたんですね。(正確には、クロスセルというよりも、別の商品パッケージを提案されたことになりますが)
iPadというツールにも魅力はありました。
ですが、「家にいる時はノートパソコンがあるし、持ち歩くのに2台は不要。それに想定していた価格よりも高くなる」という考えを伝えました。つまり、当時の僕は iPad は不要だと思ったわけです。
するとその店員さんは、「ちょっと待ってくださいね」という一言とともに、店の奥へと消えていきました。「一体、何を待たされるんだろう?」と思っていると、少しして店員さんは戻ってきました。
待たされたあげく・・・
何を言うのかと思えば、「安い価格で iPad を持てるプランをご用意できます」と、僕にとって不要な iPad のプランのダウンセルを提案してきたんです。さも苦労して、上司と掛け合ってきたように言われました。
「もう二度とこのお店に来ることはないだろう・・・」と思った瞬間でした。
その後、月額プランでのアップセルを受けましたが、このお店に対する不信感が芽生えた僕にとっては、聞き入れる気にはなりませんでした。
ピントの外れた提案は不信感を招く
この店員さんは、僕の希望やライフスタイルを考えずに、お店の売上しか考えていなかったんですよね。iPad のプランを薦めるように上司から指導されていたんだと思いますが、僕にとってはまったくピントの外れた提案だったわけです。
アップセルやクロスセルは、お客さんの「買い物をしよう!」という気持ちを後押しするセールス手法です。お客さんの気持ちががまだ動いていない段階でアップセルやクロスセルをすると、押し売り感が出てしまうんですね。
そうならないためには、お客さんが何を求めているのかをしっかりと把握することが大切です。
ダウンセルは信用を得られることもある
お客さんの要望に応えるためには、ダウンセルをすることだってあり得ます。
「お客さんの用途だと、この機能はいらないですから、こちらの安い方でも十分ですよ」という風に接客してもらったら、お客さんは店員さんに対して信頼感が芽生えますよね。
そうなれば、一度の買い物では売上が下がったとしても、また来たいと思ってもらえるようになります。ダウンセルで満足度が上がれば、クロスセルで買い物をしてくれるかもしれません。
Webサイトであっても同じです。ただ商品を紹介するのではなく、
- どんな人に向いているのか?
- なぜ向いているのか?
を説明することが、アップセルやクロスセルを行ううえでも大切なことです。
まとめ
- アップセルとは、グレードを上げた商品を薦めるセールス
- クロスセルとは、同時に別の商品を薦めるセールス
- ダウンセルとは、グレードを下げた商品を薦めるセールス
いずれにしても大切なことは、お客さんが求めているものを提案して、満足度を上げることです。
間違った提案をした場合は、たとえ一時的に売上が上がったとしても、お客さんからの信用を失い、長期的には売上を下げることになってしまいます。
また、「アップセル・クロスセル」という戦術は、「フロントエンド・バックエンド」という非常に重要なマーケティング戦略のために行います。
次の記事では、売上を最大にするためのマーケティング戦略を解説します。
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