商品・サービスを紹介する時には、商品がもたらすベネフィットを伝えることが大切です。なぜなら、お客さんは商品そのものではなくベネフィットを買うからです。
ベネフィットは、大きく分けると2種類に分類することができます。
- 「機能的ベネフィット」・・・商品の持つ性能について
- 「情緒的ベネフィト」・・・商品から生まれる感情について
「情緒的ベネフィト」の中にはさらに、「自己表現ベネフィット」があります。
この3つのベネフィットを意識して使い分けることで、商品・サービスの魅力を最大限に相手に伝えることができるようになります。
売れるセールスコピーを書くためには、なんとなくベネフィットを書き並べるのではなく、3種類を使い分けるようにしてみてください。あなたの書くコピーが、より魅力的なコピーに変わります。
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アーカーのベネフィット3分類
「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」の3種類のベネフィットは、カリフォルニア大学で名誉教授を務める、経営学者でマーケティング理論家のデイビッド・A・アーカー(David Allen Aaker)氏によって分類されました。
おもにブランドについて言及されたベネフィットですが、一般の商品・サービスについても同じ考え方ができます。
3種類のベネフィットの特徴はつぎのとおりです。
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機能的ベネフィットとは
機能的ベネフィットとは、商品が持つ特徴によってもたらされる、利用者のプラスに働く効果です。一般的には「メリット」と同じような意味で使われます。
例え
便利、早い、安い、簡単、おいしい、軽い、頑丈/など
機能的ベネフィットの例え 1:包丁
例えば、切れ味バツグンの、持つところが滑りにくい素材でできた包丁があったとします。
この包丁の「よく切れる」「滑りにくい」という特徴は、料理をする人にとってはプラスに感じる特徴になりやすいですよね。
- 《よく切れて便利》
- 《滑りにくくて安全》
これがプラスに作用する機能的ベネフィットです。
機能的ベネフィットの例え 2 :賃貸住宅
例えば、駅から徒歩1分の新築の賃貸住宅があったとします。
この「駅から徒歩1分」「新築」という特徴は、賃貸住宅を借りたい人にとってはプラスに感じる特徴になりやすいですよね。
- 《駅から徒歩1分で便利》
- 《新築で綺麗》
これが機能的ベネフィットと言えます。
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情緒的ベネフィットとは
情緒的ベネフィットとは、商品を持つことで利用者が得られるプラスの感情です。
例え
安心感、高級感、楽しさ、格好良さ、充実感/など
情緒的ベネフィットの例え 1:包丁
「よく切れる」という特徴の包丁で料理をすると、硬い食材や、崩れやすい食材でもスッと包丁が入って簡単に切ることができます。
食材を切る時に力がいらないので、《なかなか切れないイライラから解放》されますよね。「持つところが滑りにくい素材」は、《手が滑って指を切る危険も少なくなるので安心》できます。
- 《なかなか切れないイライラから解放される》
- 《手が滑って指を切る危険も少なくなるので安心できる》
これがプラスの感情を得られる情緒的ベネフィットです。
情緒的ベネフィットの例え 2:賃貸住宅
「駅から徒歩1分」という特徴を持った賃貸住宅を借りることで、朝は多少寝坊をしても《すぐ駅に着く安心感》を得ることができますよね。
または「新築」の住宅に住んだことで《友達を呼んで自慢》ができたり、《部屋を綺麗にしたくなる充実感》も得られます。
- 《すぐ駅に着く安心感が得られる》
- 《友達を呼んで自慢ができる》
- 《部屋を綺麗にしたくなる充実感が得られる》
これが情緒的ベネフィットと言えます。
自己表現ベネフィットとは
自己表現ベネフィットとは、商品を持つことで可能になる自己表現、自己実現のかたちです。
例え
自分らしくいられる、自分に自信が持てる、自分の理想に近づける/など
自己表現ベネフィットの例え 1:包丁
「よく切れる」という特徴の包丁は、料理の中の “ただ切る” という作業を、“細かい包丁細工” のレベルへと昇華させることができます。それは、家庭料理をワンランク上の世界へ連れて行ってくれることになります。
料理が好きな人にとっては、料理がさらに好きになり、《自分をレベルアップさせてくれるアイテム》になります。
また、「よく切れる」包丁を使うことで、《料理に対する自信》も生まれます。
- 《自分をレベルアップさせてくれるアイテム》
- 《自分に自信がつく》
これが自己表現ベネフィットです。
自己表現ベネフィットの例え 2:賃貸住宅
「駅から徒歩1分」という賃貸住宅に住むことで、移動時間を短縮することができます。その短縮でできた時間を自分の好きなことに使えば、《自分らしい時間を長く過ごす》ことができます。
また綺麗な「新築」の住宅に住むことで、毎日を気分良く過ごすことができるようになれば、《理想の生活に近づく》ことができるようになります。
- 《自分らしい時間を長く過ごせる》
- 《理想の生活に近づく部屋》
これが自己表現ベネフィットと言えます。
3種類のベネフィット 重要度のポイント
「ブランドの神様」とも呼ばれるアーカー氏は、この3種類のベネフィットについて、次のように語っています。
「機能的ベネフィットではなく、情緒的ベネフィット・自己表現ベネフィットに目を向けよ」
この言葉を理解するためには、『マズローの欲求5段階説』と重ねてみればわかりやすいと思います。
ベネフィット3分類をマズローの5段階説で分析してみる
『マズローの欲求5段階説』とは、心理学者のアブラハム・マズロー氏が説いた欲求段階説です。
人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するようになるというものです。
マズロー氏は、「人間は自己実現に向かって
- 自己実現欲求 :あるべき自分になりたい
- 承認欲求 :褒められたい・認められたい
- 所属と愛の欲求 :集団に属したい・仲間が欲しい
- 安全欲求 :安全・安心な暮らしがしたい
- 生理的欲求 :食べたい・寝たいなど命の維持
機能的ベネフィットをマズローの5段階説で表現すると
マズローの5段階説を見てみると、商品のプラスになる特徴を言い表す機能的ベネフィットは、物質を手に入れたり使うことで満たされる「生理的欲求」「安全欲求」に向けた表現が多いことがわかります。
先ほどの包丁・賃貸物件の例えで言うと、
- 《よく切れて安全な包丁》
- 《駅徒歩1分で便利な物件》
といった、商品自身についての表現です。
情緒的ベネフィットをマズローの5段階説で表現すると
次に情緒的ベネフィットは、商品の機能的ベネフィットを「所属と愛の欲求」「承認欲求」を満たす表現に変えることができます。
例えば、
- 《よく切れる包丁を使えば料理の腕前も上がり、大好きな彼もメロメロ》
- 《新築で駅徒歩1分の賃貸住宅に住むことができるのは、ひと握りの選ばれた人間だけ》
といった、利用者の感情の変化についての表現です。
自己表現ベネフィットをマズローの5段階説で表現すると
最後に自己表現ベネフィットは、「自己実現欲求」を満たすことを言い表せます。
例えば、
- 《よく切れる包丁は、料理づくりの才能を開花させてくれる》
- 《移動時間の短縮は、自分を自由に解放できる時間をつくり出せる》
といった、自己成長の表現です。
これらのことから、機能的ベネフィットよりも、情緒的ベネフィット・自己表現ベネフィットの方が、人間がより求める高次の欲求につながりやすいことがわかります。
だからこそ、特にブランドにおいての「ベネフィット3分類」では、情緒的ベネフィット・自己表現ベネフィットの方が重要なんですね。
まとめ
商品・サービスを買う理由になるベネフィットは、大きく分けると3つに分類することができます。
- 機能的ベネフィット
- 情緒的ベネフィット
- 自己表現ベネフィット
その重要度は、機能的ベネフィットよりも、情緒的ベネフィット・自己表現ベネフィットの方が重要です。ですので、これから商品を販売する際には、情緒的ベネフィット・自己表現ベネフィットを意識して訴えるようにしてみてください。
実際にベネフィットを考える際には、ベネフィットの構成を4つに分解した「FABフォーミュラ」という公式を使うと便利です。
次の記事では、FABフォーミュラを使ったベネフィットの作り方について解説します。
Next⇒「【FABフォーミュラ】魅力を伝えるベネフィットの具体的な作り方」
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