顧客心理を掴む心理学

スピノザの48種類の感情|マーケティングで扱う感情と情動

2017-10-26

スピノザ 48種類の感情

マーケティングやコピーライティングでは、「感情に訴えることが大切」「感情を揺さぶれ」という言葉が頻繁に出てきます。

マーケティングで『感情』が大切な理由は、人は感情によって行動を起こすからです。

例えば、あなたがお金持ちになりたかったとして、そのための方法をいろいろと試しているのだとしたら、その行動の原動力はなんでしょうか?

  • 「老後の不安を少しでも解消したいから」
  • 「低収入で惨めな思いをしくないから」
  • 「もっといろんな楽しい遊びをしたいから」

理由はいろいろあるとは思いますが、いずれにしても『感情が動いたから』ですよね。

モヤモヤしたり、イライラしたり、そういった『不快』な感情を取り除くため、あるいはワクワクしたり、ウキウキしたり、『快』の感情を得るために人は行動を起こすわけです。

ということは、あなたが商品・サービスを販売する際には、お客さんの原動力になる感情のスイッチを入れれば良いということになります。

では、感情とは何種類ほどあるのでしょうか?

感情の種類については、古代から現在に至るまでに哲学者や心理学者がいろいろな説を唱えています。

この記事では、オランダの哲学者スピノザが分類した48種類の感情を紹介します。

感情の種類を把握しておけば、あなたの商品・サービスではどのような感情のスイッチをお客さんに入れれば良いのかヒントが見えてきます。

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スピノザの48種類の感情

1879年に『心理学』が学問として誕生する以前は、人間の心理である感情は哲学として考えられていました。

17世紀オランダの哲学者バールーフ・デ・スピノザ(Baruch De Spinoza)は、神は唯一無限の純粋なる「実体」であり、その他一切は神の「属性」であると考えました。

そして、神の属性である人間の感情については、1677年に刊行された書籍『エチカ - 幾何学的秩序に従って論証された』の中で、次のように言っています。

「三つの感情<喜び・悲しみ・欲望>以外に私は、他の基本的感情を認めない。すなわち、ほかの一切の感情は、この三つから成り立つのである。」

スピノザは人間の基本的感情を3つとして、感情を48種類に分類しています。

3つの基本的感情

1欲望不足を満たそうと強く感じる人間の本質であり、意識を伴った衝動
2喜び成功を体験したり優しさに触れてうれしく感じる気持ち
3悲しみ無力感や挫折感などで、やる気をなくす気持ち

スピノザは、「喜び」は人間の活動能力を増大させる刺激として『快感』、「悲しみ」は人間の活動能力を減少させる刺激として『苦痛』と呼びました。

スピノザによれば、感情をコントロールできない無力こそが人間の屈折の原因であり、理性に従うことで自由人となるとしています。

基本的感情から生まれる その他の感情

その他の感情は3つの基本的感情から派生したものであるとして、自分以外の外部、自分自身の内部の原因によって変化するとしています。

外部の原因

4驚き予期しない突然の出来事に瞬間的に表れる、他の感情に属さない状態
5軽蔑劣ったもの、無価値だと思うものに対してさげすむ気持ち
6かけがえのないものに感じ、慈しむ喜びの気持ち
7憎しみ強い抵抗感や不快感を抱く悲しみの気持ち
8好感好ましいと感じる喜びの気持ち
9反撥他人の言動などを受け入れず、強く否定したい悲しみの気持ち
10帰依神仏や高僧などの優れた者を信じて、よりどころにしたい愛の気持ち
11嘲弄あざけり、からかう喜びの気持ち
12希望望ましいものを獲得しようとする期待を伴った喜びの気持ち
13恐怖身の危険や、不安を感じる悲しみの気持ち
14安堵気がかりなことが除かれ、心が落ち着く喜びの気持ち
15絶望希望が全くなくなったという悲しみの気持ち
16歓喜非常に喜ぶこと、心から喜ぶ気持ち
17落胆期待や希望どおりにならず、元気をなくす悲しみの気持ち
18憐憫(れんびん)かわいそうに思うこと、あわれむ悲しみの気持ち
19好意親しみや好ましく感じる喜びの気持ち
20憤慨ひどく腹を立てる憎しみの気持ち
21買いかぶり実際以上に相手を高く評価する愛のある気持ち
22見くびり軽視して、バカにする憎しみの気持ち
23ねたみ他人をうらやましく思って憎む気持ち
24同情他人の幸福や苦悩を自分のことのように感じる、愛の気持ち

内部の原因

25自己満足自分自身の言動に対して満足に感じる喜びの気持ち
26謙遜へりくだり、控え目な態度をとる悲しみの気持ち
27後悔自分のしてしまったことを、あとになって悔やむ悲しみの気持ち
28高慢自分を愛するあまり、人より優れていると思い上がって他人を見下す気持ち
29自卑自分が他人よりも劣っていると感じる悲しみの気持ち
30名誉他人から優れていると評価を受けて、誇りに感じる喜びの気持ち
31恥辱名誉などを傷つけて、恥ずかしく感じる悲しみの気持ち

欲望

32思慕思いしたうこと、恋しく感じる衝動
33競争心他に張り合って負けたくないと感じる衝動
34感謝ありがたいと感じる愛の衝動
35慈悲心いつくしみ、あわれむ衝動
36怒り傷つけられたり思いどおりにならないなど、腹立たしく感じる衝動
37復讐心自分がやられた嫌なことをやり返したいと感じる衝動
38残忍愛する人に対しても、むごいことを平気でできる衝動
39臆病ちょっとしたことにも怖がったり、尻込みする衝動
40勇敢物事を恐れることなく積極的にしようとする衝動
41小心勇敢とは対称に、気が小さく、びくびくする衝動
42恐慌害悪を避けようと、おそれあわてる衝動
43鄭重(ていちょう)人が気に入ることをして、気に入らないことは控えようとする衝動
44名誉欲優れていると認められたい衝動
45美味欲おいしいものを味わいたい愛の衝動
46飲酒欲お酒を飲みたい愛の衝動
47貪欲強く欲しいと感じる愛の衝動
48情欲男女間の肉体を欲する愛の衝動

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スピノザが分類した感情には情動が含まれている

スピノザが分類した48種類の感情には、心理学や脳科学でいうところの『情動』が含まれています。

情動とは、扱う分野によって意味合いが多少変わりますが、大きくまとめると「衝動的に感じる喜び、不安、恐怖といった心の動きや、食欲や性欲など体が求める本能的な欲求に関わる心の動き」のことです。

例えば、スピノザが分類した欲望の中にある「美味欲、飲酒欲、情欲」などは、体が求める一次的な欲求です。

一次的な欲求には、飲水欲求、食物欲求、性的欲求、毒性回避欲求、暑熱・寒冷回避欲求、障害回避欲求などがあります。

感情と欲求は単純に切り離せるものではありませんので、心理学が誕生する以前の哲学者であるスピノザは、これを一つの感情として扱ったんですね。

マーケティングで扱う感情と情動

マーケティングで扱う感情や情動とは、

  • 現状で味わっている感情
  • 商品・サービスを利用しないことで起こる可能性のある感情
  • 商品・サービスを利用することで得られる感情

についてです。

セールスコピーなどのクリエイティブ(広告物)では、これらの感情を刺激することを考えます。

どの感情をメインに扱って商品・サービスをアピールするかは、マーケターの腕の見せどころと言っても良いかもしれません。

セールスで感情を扱う例え

例えば、肌荒れの悩みを解消する商品を販売するのなら、

  • 周りの人の目が気になってしまう小心
  • 嘲笑されたくないという臆病
  • 肌が汚いことで好きな人に嫌われるかもしれないという恐怖
  • 友達から軽蔑されたらどうしようという不安

といった感情を刺激することができます。

また、商品を使うことで肌が綺麗になれば、

  • 好きな人からより愛されるという喜び安堵感
  • 消極的だった自分が消え去るという自己満足
  • 未来が開ける希望

という感情を刺激することができます。

商品・サービスがどのような欲求を満たすものなのか、さらにメインのターゲットを想定することで、扱う感情はさらに絞ることができます。

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まとめ

感情とは、行動の原動力になるものです。マーケティングやコピーライティングでは、お客さんに行動してもらうために感情を刺激することが大切です。

感情の種類は、古代から現在に至るまでにいろいろな説があります。その中でも17世紀オランダの哲学者スピノザは、人間の基本的感情を『喜び、悲しみ、欲望』の3つとして、感情を48種類に分類しています。

単純に考えれば、人は「快」を求めて「不快」を避けるために行動します。

これは人間の脳の構造や、赤ちゃんが誕生して最初に生まれる情動が「快」と「不快」であるとした研究からも頷けます。

あなたのお客さんは、どのような感情を抱きたいと思っていますか? また、どのような感情を避けたいと思っていますか? ぜひ、お客さんが抱きそうな感情を探ってみてください。

スピノザの哲学を深く知りたくなったら

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  • この記事を書いた人

高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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