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フット・イン・ザ・ドアとは?営業や恋愛、セールスコピーでの使い方

2017-03-31

フット・イン・ザ・ドア

交渉ごとで承諾率を上げる心理テクニックのひとつとして、「フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)」があります。

なんの策もなく交渉した場合と比べると承諾率が4倍以上も高くなることから、ビジネスの場面では、ドア・イン・ザ・フェイス、ローボール・テクニックと並んで有名な交渉術です。

さらに、恋愛や日常の場面でも、ごく自然に使うことができる心理テクニックです。

この記事では、

  • 相手に断りづらくさせるフットインザドア・テクニックの使い方
  • 3つの成功ポイント
  • コピーライティングやマーケティングへの応用

について解説します。

あなたの交渉レベルを引き上げるために役立ててください。

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フット・イン・ザ・ドア (段階的要請法)とは

フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)とは、相手が同意しやすい小さくて簡単な要求からスタートして、段階的に要求のレベルを上げることで、本命である大きめの要求を通しやすくするという交渉術です。

「フット・イン・ザ・ドア(foot in the door)」の語源は、「少し開いたドアに、訪問販売員が足のつま先でも入れることができれば商品を売ることができる」という描写に由来します。

ドアを開いてもらうこと自体は小さなことでも、一度でも相手からの承諾を得られれば、その後に続く大きな要求にも承諾してもらいやすくなることを表しています。

フット・イン・ザ・ドアの例え

例えば、友達から「今月ちょっとピンチで、5000円貸してくれない?」とお願いされたとします。

「いいよ」と快く貸してあげたところで、友達がさらにお願いをしてきたとします。「5000円だとちょっと不安だから、できれば1万円貸してもらえたら助かるんだけど・・・」

この場合、あなたは1万円を貸してあげるのではないでしょうか?

はじめから「1万円貸して?」というお願いだったとしたら、もしかしたら断っていたかもしれません。ですが、『5000円』という要求を受け入れたことで、そのあとの『1万円』の要求も受け入れたことになります。

一度小さな要求を受け入れてしまうと、その後の要求にも応えやすくなってしまうんですね。これは、一貫性の原理が働くからです。

自分の行動を一貫させたい「一貫性の原理」

一貫性の原理とは、無意識のうちに「自分の行動や考え方には一貫性を持たせたい」と考える心理傾向のことです。

もしも、『5000円』という要求を受け入れたのに、そのあとに続く『1万円』の要求を拒否したら、一度オッケーしたはずの「お金を貸す」という一貫性が保てないことになりますよね。

ですので、自分の行動の一貫性を保つために、ついつい受け入れようとするんですね。

一貫性の原理が働く理由は、「一貫性の原理とコミットメント|ビジネス・恋愛で使う3つのコツと会話例」の記事で詳しく解説しています。

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フット・イン・ザ・ドアの実験例

フット・イン・ザ・ドアの効果を検証するために、1966年にアメリカの社会心理学者フリードマンとフレーザーが行なった実験があります。

カリフォルニア州で112人の住民を対象にした実験では、公共事業を名目に一軒ずつ家を訪問して、あるお願いをして回り、その成功率を比べました。

そのお願いとは、『注意深く運転しよう』と下手くそな字で書かれた、家の景観を損ねるような大きな看板を、「お宅の庭の芝生に立てさせてくれませんか?」というものです。住民からしてみれば、あまり受け入れたくないハードルの高い内容です。

このお願いに承諾した住民は、予想どおり低くて 16.7%でした。

ところが、このお願い事をする二週間前に、ある小さなお願いをしてOKをもらっていた場合は、看板を立てることに 76.0%のOKをもらうことに成功しました。

最初の方法と比べると、4倍強の成功率です。

成功率を4倍以上高めた小さなお願いとは?

二週間前にした小さなお願いとは、7.5cm四方の『安全運転しよう』と書かれたステッカーを、「車のフロントガラスか、家の窓に貼ってくれませんか?」というものでした。

このお願いに「いいですよ」と答えた住民は、「私は公共心のある人間だ」ということを自覚したことになります。

そこで、次に出された公共に関する大きな要求にもOKしやすくなったと考えられます。

なぜなら、『安全運転しよう』のステッカーは受け入れたのに、『注意深く運転しよう』の看板を拒否しては、「私は公共心のある人間だ」という一貫性を保てなくなってしまうからですね。

目的が少し違っても一貫性は働く

ちなみに、『安全運転しよう』ではなく、『カルフォルニアを美しくしましょう』という地域美化のためのステッカーを貼ってもらった場合には、大きな看板にOKしてくれた住民は47.6%でした。

たとえ目的が少し違っていたとしても、一度小さな要求を受け入れた場合は、次に出される大きな要求にも受け入れやすくなるということですね。

同じ目的であれば、より受け入れてもらいやすくなることがわかります。

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フット・イン・ザ・ドアの2つのメリット

フットインザドア・テクニックには、2つのメリットがあります。

  1. 小さなお願い事から始めるので、断られにくい
  2. 断られにくいことで、自分を守ることができる

例えば恋愛においては、好きな人に告白して「No」だった場合には、それまでの関係性が変わってしまうことになります。絶望を感じて、深く傷つくことになります。

ですが、フット・イン・ザ・ドアを使って小さな「Yes」を積み重ねていけば、関係性が変わることなく、告白で「Yes」をもらえる可能性が高くなります。

小さなお願いが断られにくいことで、自分を守ることができるんですね。

フット・イン・ザ・ドアの実用例

フットインザドア・テクニックは、いろいろな場面で使うことができます。

ビジネスで使うフット・イン・ザ・ドア

ビジネスでは、いきなり買ってほしい商品を勧めても、うまくいくケースはほとんどありません。そこで、フット・イン・ザ・ドアを使って、小さな要求を通してから本命の要求を出すようにします。

ビジネスでの会話例

A:「5分だけお話しさせてもらってもよろしいですか?」
B:「いいですよ」
A:「・・・試しに一週間無料で、一度使ってみませんか?」
B:「そうですねぇ、使ってみようかな」
A:「・・・使い心地はいかがですか? このままお買い上げされますか?」
B:「そうですね、もらいましょうか」

“少し話すだけ” という小さなハードルをクリアすることで、商品を販売できる機会が増えます。

恋愛で使うフット・イン・ザ・ドア

恋愛の場面で使うフット・イン・ザ・ドアも、小さな提案から始めます。

例えばデートに誘いたい女性がいて、いきなり「デートしよう?」と提案しても断られてしまうかもしれない場合は、簡単にOKしてくれそうな小さなお願いごとから始めます。

恋愛での会話例

A:「Bさんて、◯△の漫画を持ってるって言ってたよね、今度貸してくれない?」
B:「いいよ、貸してあげる」
A:「・・・すごく面白かったわ〜、今度◯△が映画で実写化されるみたいだけど、一緒に行かない?」
B:「うん、いいよ」

Bさんにとっては、◯△の漫画を貸すことに承諾したことで、◯△に関することにOKしやすくなります。この場合は、共通する話題を楽しめるわけですから、Bさんにとっても抵抗が少なくなりますよね。

日常で使うフット・イン・ザ・ドア

「ついで」は、日常でもよく使われるフット・イン・ザ・ドア・テクニックだと言えます。

日常での会話例

A:「トイレに行くついでに、このCDを隣りの部屋のラックに置いてきてもらっていい?」
B:「いいよ、わかった」
A:「あ、ついでに本棚から◯◯の本を持ってきてもらっていい?」
B:「いいよ」

一度OKを出したことで、「ついで」を断りにくくなります。

フット・イン・ザ・ドアを成功させる3つのポイント

フット・イン・ザ・ドアを成功させるには、3つのポイントがあります。

  1. 要求の差を大きくしすぎない
  2. 要求の段階を分ける
  3. 最初の要求の見返りで金銭的な報酬を与えない

1. 要求の差を大きくしすぎない

最初に出す小さな要求と、そのあとに出す大きな要求の差は開きすぎないことが大切です。

例えば、1時間の残業をお願いしたい場合に、「10分だけ仕事を手伝ってくれない?」と、最初のお願いを極端に小さくしてOKをもらったとします。その次に「ひょっとしたら10分じゃ無理そうだから、1時間でもいい?」と、本命のお願いしても失敗しやすくなります。

最終的に1時間の残業をお願いしたいのだとしたら、最初に出す要求は「30分」くらいにして、心理的な負担を感じさせないようにすることがポイントです。

2. 要求の段階を分ける

要求の差を大きくしすぎないためには、要求は段階を分けるようにすると成功しやすくなります。

例えば、「30分だけ仕事を手伝ってくれない?」と小さなお願いをした場合は、次に出す要求も「ひょっとしたら30分じゃ無理そうだから、一応45分見てもらっていい?」と小さな要求にします。

45分経つ前に「ごめん、あと15分だけ!」とお願いをすれば、最終的に1時間の残業もOKしてもらいやすくなります。

3. 最初の要求の見返りで金銭的な報酬を与えない

最初に出す小さな要求に応えてくれた時には、見返りとしてお金をあげないことが大切です。

要求に応えた見返りとしてお金をもらうと、人は「買収された」という印象を受けることになるからです。また、親切心で要求に応えた人にとっては、自尊心を傷つけることにもなります。

例えば、恋愛を進展させたくて「◯△の漫画を貸してくれない?」と相手にお願いしたのに、漫画を貸してくれたお礼にお金を用意してしまうと、関係性の構築ではなく商取引になってしまうんですね。

お金の存在でやる気をなくすアンダーマイニング効果

この場合は、次回からもお金を用意しないと相手は満足してくれず、お願いにOKしてくれない可能性も出てきてしまいます。

これは、アンダーマイニング効果と呼ばれる心理現象の影響です。

アンダーマイニング効果とは、自発的な行動(内発的動機)に対して、金銭的な報酬などの外発的な動機づけを行うと、やる気が低減する現象です。

ですので、フット・イン・ザ・ドアを成功させるためには、お金をあげないことが大切なんですね。

コピーライティングに応用するフット・イン・ザ・ドア

フット・イン・ザ・ドアをコピーライティングに応用する場合は、セールスコピーの最初に読み手を限定して、小さな同意を得るようにします。

小さな同意を得ることで、最後まで読んでもらいやすくなります。

例えば、ダイエット商品のセールスコピーで

「『この夏までには絶対に5kg痩せたい!』と思っているなら、この手紙はあなたにとって、絶対に役に立ちます」

と書けば、該当する人は自然と同意してくれることになります。

あるいは、信念に訴えて同意を得ることもできます。

例えば、

「たとえ痩せたとしても、健康的じゃなきゃ意味はないと思いませんか?」

と書けば、健康的に痩せたい人は同意してくれることになります。

そのあとセールスコピーで健康的に痩せる商品であることを証明すれば、商品の案内にも応じてもらいやすくなります。

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マーケティングに応用するフット・イン・ザ・ドア

フット・イン・ザ・ドアをマーケティングに応用する場合は、お客さんに小さな行動を促します。

例えば、ブログではメールマガジンの登録を促します。ブログやメールマガジンでは質問を募集したり、コメントしてくれるように促します。

小さな行動をしてもらえれば、「このブログ(メールマガジン)を応援している」ことを自覚してくれるようになります。

小さなコミットメントをしてもらうことで「一貫性」が働けば、ブログやメールマガジンに関心を持って読んでもらえるようになります。

三大交渉術の違い

フット・イン・ザ・ドアと並んで有名な交渉術に、次の2つがあります。

  • ドア・イン・ザ・フェイス
  • ローボール・テクニック

他の2つの交渉術との違いを知っておくことで、使い分けができるようになります。

ドア・イン・ザ・フェイスとフット・イン・ザ・ドアの違い

ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩的要請法)とは、フット・イン・ザ・ドアとは逆の心理テクニックです。

ドア・イン・ザ・フェイスは最初に無理めの大きな要求を出して、あえて断られることで、次に出す小さめの要求を通しやすくするテクニックです。

交渉を提案する側の立場が強い時に使われる傾向があります。

  • フット・イン・ザ・ドア:小さな(ダミー)要求にOK ⇒ 大きな(本命)要求もOK
  • ドア・イン・ザ・フェイス:大きな(ダミー)要求はNG ⇒ 小さな(本命)要求はOK

ローボール・テクニックとフット・イン・ザ・ドアの違い

ローボール・テクニック(特典除去法)は、フット・イン・ザ・ドアと似ている交渉術です。

ローボール・テクニックは最初に好条件を提示して、承諾を得てから悪条件を提示する、ちょっとズルい心理テクニックです。

こちらも一貫性の原理を応用した心理テクニックですが、交渉相手との信頼関係が崩れるリスクがある交渉術です。

  • フット・イン・ザ・ドア:小さな条件にOK ⇒ 別の大きな条件もOK
  • ローボール・テクニック:好条件の要求でOK ⇒ 好条件を取り外してもOK

▼売る商品より大事なもの▼ウェブセールスライティング習得ハンドブックcp-b

まとめ

フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)とは、相手が同意しやすい小さな要求から始めて、段階的にハードルを上げると、本命の要求がとおりやすくなるという交渉術です。

相手がコミットメントすることで、一貫性のある言動を保ちたくなる「一貫性の原理」を応用したテクニックです。

悪用すると人間関係を壊すことになりますが、上手に使えば、頼みにくいことでも快く引き受けてもらえる可能性があります。

交渉ごとを有利に進めるために、他の交渉術と合わせて使い分けてみてください。

さらに説得力を高める方法を知りたい場合は、こちらを参考にしてください。
説得力を高める16の秘訣|心理テクニックでYESを引き出す方法

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  • この記事を書いた人

高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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