新しいモノをひとつ取り入れると、統一させたいと感じる心理が働きます。このような心理作用を、心理学ではディドロ効果と言います。
例えば、ジョギングを始めようと思って新しいシューズを買ってみたら、なんだかウエアまで一式揃えたくなってしまった・・・。なんていう経験はありませんか?
ディドロ効果を応用すれば、ファンやリピーターを増やすことに役立ちます。あなたがマーケティングに携わるなら、「揃えたくなる心理」について、ぜひ知っておいてください。
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ディドロ効果 とは「統一したい心理」
ディドロ効果(Diderot Effect)とは、生活の中に今までとは違う「理想的な価値」がもたらされた場合、新しい理想的な価値に合わせて、所有物や環境などを統一させようとする心理作用のことです。
身の回りのモノを高水準の商品へと統一させたい心理だけではなく、節約志向の人は低価格な商品を揃えたいと感じたり、ジョギングを始めた人が関連グッズや健康に関する情報を好むようになったりすることも同じ心理作用です。
たまにテレビの特集で、節約術にハマった主婦を取材していたりしますよね。あの主婦も、身の回りを「節約」で統一させようとするディドロ効果が働いた結果だと言えます。
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ディドロ効果の由来は、ディドロ氏によるエッセイ
ディドロ効果は、18世紀にフランスで活躍した思想家ドゥニ・ディドロ氏が書いたエッセイ『私の古いガウンを手放したことについての後悔』に由来します。
エッセイの内容は次のとおりです。
みすぼらしい書斎の住人であったディドロは、ある日友人から緋色(深い赤色)のドレシングガウンをプレゼントしてもらった。ディドロは美しいそのガウンをとても気に入って、もともと使っていた “みすぼらしくて心地よい古いガウン” を捨てることにした。
問題はここから始まった。
美しいドレシングガウンを使い始めてしばらく経つと、ディドロは書斎にあるタペストリーがボロくなっているようで気になり始めた。ガウン姿の自分と調和が取れていないように感じたからだ。
新しいタペストリーに替えると、今度はボロくなった椅子も気になってしまう。結局、書斎にある版画、本棚、時計など、優雅な緋色のガウンに合わないモノは、取り替えないと気が済まなくなってしまった。
やがて書斎は最新の家具で揃えられるようになったが、ディドロはかえって居心地が悪くなってしまうのだった・・・。
このエッセイを「所有物の調和を求めて次々とモノを消費してしまう」ことの例えとして『ディドロ効果』と名付けたのが、文化人類学者のグラント・マクラッケン氏です。
1988年に刊行した著書『文化と消費とシンボルと』の中で言及されました。
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ディドロ効果はなぜ起こる?
なぜ人は、新しい価値に合わせて統一感を求めるのでしょうか?
人にはもともと、一貫性を持たせた行動を取ろうとする性質があります。これを一貫性の原理と言います。統一させたい心理が働くディドロ効果は「一貫した行動を取りたい」と願う、この一貫性の原理が働いた結果だと言えます。
「新しいモノをひとつ受け入れたんだから、他のモノについても受け入れなければ気持ちが悪い・・・」という心理が働くんですね。
揃えたい心理は一貫性による自己表現
ディドロ効果は、所有欲や購買意欲そのものが、ひとつの自己表現であることも考えられます。
人は自分がどんな人間なのかを、持ち物や身の回りの環境によって表現しています。きっとあなたも好きなモノに囲まれることで、心地よさを感じるのではないでしょうか。
つまりは、アイデンティティを表現するために、統一感のあるモノを揃えようとするんですね。これは無意識でしている場合もあります。
ディドロ氏の場合は、心地よい古いガウンを捨てて書斎を新しいモノに統一したことで、本来の自分のアイデンティティとは違っていたことに気づいたので、後悔してしまったわけです。
マーケティングで使われるディドロ効果
ディドロ効果をマーケティングに応用すれば、ファンやリピーターをつくる商品販売をすることができます。
わりと一般的ではありますが、その方法はセットやシリーズで商品を見せることです。
例えば、IKEAなどの大型家具店では、一部屋丸々セットになったインテリアの展示がされていますよね。洋服屋さんでは、マネキンでトータルコーディネートがされています。
おもちゃ屋さんでは、シルバニアファミリーやフィギュアなどが、一式セットで商品陳列されています。ガチャガチャなんかも、シリーズとして販売することで、思わず揃えたくなるようにしています。
お客さんはセットであることを認識することで、そのうちのひとつを買えば一貫性の原理も手伝って、揃えたくなる心理が働きやすくなるんですね。
ディドロ効果のスイッチを入れるには
揃えたくなる心理を働かせるためには、お客さんの一貫性の原理を働かせるようにします。
例えば、シリーズのひとつを、格安または無料でプレゼントします。お客さんが商品を手にして新しい価値を気に入ってくれれば、その他のシリーズもディドロ効果で揃えたい心理が働きやすくなります。
スマホのゲームやアプリでも、アバター(自分の分身となるキャラクター)の顔や服のパーツの一部、またはアイテムをプレゼントしていますよね。
一部だけが豪華になることで、その他がショボいと気になって揃えたくなります。
ディドロ効果+ツァイガルニク効果で期待感を持たせる
シリーズは一度に販売しなくても、予告しておくことでディドロ効果を働かせることができます。
例えば、商品を1つだけ販売する時には、すでにシリーズの一部であることを知らせておきます。そうすることで、シリーズを揃えたくなる期待感を持たせることができます。
このような場合は、未完成が気になるツァイガルニク効果が手伝っています。
ゲームで使われる期待感と統一感の応用
最近は、ゲームでもこの手法はよく使われています。
例えば、主人公のレベルによって使える必殺技があらかじめ表示(ロック)されていて、あとどれくらいレベルを上げればその技が使えるのか(アンロック)がわかるようになっています。
あらかじめ全部見えていることで、ゲームを最後までやり遂げたい気持ちを盛り上げてくれます。
全て揃えたいと思うディドロ効果と、未完成の状態が気になるツァイガルニク効果をうまく使った例だと言えます。
ディドロ効果を使ったビジネスモデル
ディドロ効果を上手く使ったビジネスといえば、『漫画全巻ドットコム』が思い浮かびます。
『漫画全巻ドットコム』では、漫画を全巻一気に揃えることができます。
テレビなどで紹介された漫画が気になった場合は、一気に全巻揃えることができますので、ディドロ効果の「揃えたくなる心理」をうまく使ったビジネスモデルだと言えます。
まとめ
ディドロ効果とは、身の回りを「理想的な商品」で統一させたいと感じる心理作用のことです。人が本質的に持っている、一貫性の原理が働くために起こります。
ディドロ効果をマーケティングに応用すれば、商品をセットやシリーズにすることで、統一させたい心理が働きやすくなります。商品のクオリティが高ければ、リピーターやファンが生まれやすくなる販売方法でもあります。
ビジネスを展開する際には、お客さんにどんな価値観を提案するのかを含めて商品開発をしてみてください。
さらに心理学をマーケティングに応用する方法は、こちらを参考にしてください。
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