僕たち人間には、潜在意識(無意識)と顕在意識(意識)が存在するとされています。この2つの意識が一致していないと、目標を掲げても失敗しやすくなります。
例えば、
- 新しいことにチャレンジしたいのに、なぜか行動できない・・・
- 目標を立てたのに、思うように実行できない・・・
- 立てた目標が間違っている気がする・・・
なかなか行動できないのは、潜在意識と顕在意識の不一致が原因で起こります。
この2つの意識の違いを理解してコントロールできれば、2つの意識がケンカをすることなく目標達成ができるようになります。大げさに言えば、思いどおりの人生に変えることが可能です。
もしも、あなたが目標達成をしたいなら、あるいは人生を変えたいと思っているなら、潜在意識の特徴と、潜在意識を書き換える方法について理解しておいてください。
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顕在意識(意識)とは
顕在意識とは、普段認識することができる意識のことです。「表面意識」とも呼ばれ、論理的な思考・理性・知性・判断力を指します。
簡単に言えば、「言葉にできる意識」のことです。
例えば、
- 「私は今、歩いている」
- 「私は今、明日の献立を考えている」
という自覚をすれば、それが顕在意識になります。
「明日は洋服を買いに行こう」と自分の意思で行動を決めたとしたら、顕在意識で決意したことになります。
顕在意識は人間脳にあたる部分
この顕在意識は、前回の記事で解説した「古い脳と新しい脳」でいうところの『新しい脳(人間脳)』にあたると考えれば、わかりやすいかもしれません。
ちなみに生まれたばかりの赤ちゃんには、まだ顕在意識はありません。お腹が空いたり、不快感に襲われると泣き叫ぶのは、本能や感情がむき出しの状態だからです。
赤ちゃんはほぼ100%、次に説明する潜在意識の状態だと言えます。
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潜在意識(無意識)とは
潜在意識とは、普段認識することができない意識のことです。「無意識」とも呼ばれ、感情・感覚・直感・記憶・本能的な欲求を指します。
潜在意識は「記憶の宝庫」とも言われ、過去に起こった印象的なことを記憶しています。顕在意識では思い出せないことでも、潜在意識には記憶が蓄積されています。見たこと・聞いたこと・感じたこと・考えたことの全てです。
例えば、「明日は洋服を買いに行こう」という顕在意識での決意は、
- 「もっとオシャレがしたいなぁ・・・」
- 「デートに合う服がないなぁ・・・」
と感じていた潜在意識から導き出された決意でもあるということです。
洋服を買いに行って、赤い服ではなく青い服を選んだとしたら、潜在意識で「自分に赤い色は似合わない・・・」と感じているからですね。
「何かイヤな予感がする・・・」というモヤモヤした気持ちになる場合は、潜在意識にある苦い記憶が体の反応となって現れるからです。
潜在意識は爬虫類脳・哺乳類脳にあたる部分
この潜在意識は、「古い脳と新しい脳」でいうところの『古い脳(爬虫類脳・哺乳類脳)』にあたると考えれば、わかりやすいかもしれません。
例えば、呼吸や瞬きは無意識でしていますよね。お腹が空くことや汗をかくこと、眠っている時の寝返りや瞬間的な体の反応は無意識で現れます。また、ある出来事に対して湧き上がる怒りや不安などの感情も、無意識で現れるはずです。
潜在意識の特徴は、後ほど詳しく解説します。
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心理学者フロイト氏とユング氏による意識・無意識の概念の違い
一般的に知られている「意識・無意識」の意味合いは、2大精神科医であるフロイト氏とユング氏の概念が融合されたものです。
フロイト氏による意識・前意識・無意識
「意識・無意識」の概念は、オーストリアの精神医学者・精神分析学者・精神科医であったジークムント・フロイト氏によって提唱されました。
フロイト氏によると、人間の精神構造は「意識・前意識・無意識」の3層構造であると考えられました。さらに、人間の精神機能は「自我・超自我・エス(イド)」の3つの機能があると考えられました。
- 自我:理性と本能をコントロールしようとする部分(意識)
- 超自我:道徳や良心といった理性(前意識)
- エス(イド):本能的な欲求(無意識)
ユング氏による顕在意識・潜在意識・集合的無意識
一方で、スイスの精神科医・心理療法家であったカール・グスタフ・ユング氏は、フロイト氏とは違った「意識・無意識」の概念を提唱しました。
ユング氏によると、人間の精神は個人の顕在意識と潜在意識の下に、社会集団や人類に共通する集合的無意識があると考えられました。
- 顕在意識:普段、自覚している意識
- 潜在意識:普段、自覚していない意識
- 集合的無意識:社会集団や人類に共通する無意識
このフロイト氏の「自我・超自我・エス(イド)」と、ユング氏の「個人の顕在意識・個人の潜在意識」の概念を融合させたものが、一般的に広まっている「意識・無意識」の意味合いになります。
顕在意識は3〜10%、潜在意識は90〜97%
顕在意識と潜在意識は、よく氷山で例えられます。海上に浮かんで見える氷山(意識)は、海中に沈んで見えない氷山全体(無意識)の一角でしかないという表現です。
その力関係の比率は、顕在意識が3〜10%、潜在意識が90〜97%と言われています。
- 顕在意識:3%、潜在意識:97%
- 顕在意識:5%、潜在意識:95%
- 顕在意識:10%、潜在意識:90%
このような表現がされています。
ですので、表面意識である新しい脳が「ジョギングを毎日続けて5kg痩せよう!」と目標を立てたとしても、無意識である古い脳が「ジョギングは面倒だからやめよう」と判断すれば、圧倒的な力を持っている古い脳に負けてしまうことになるんですね。
こんなにも影響力に違いがあるのは、潜在意識の特徴を知ることで理解できると思います。
影響力が大きい潜在意識 6つの特徴
影響力の大きな潜在意識の特徴は、次のようにまとめることができます。目標達成においては重要なキーワードになります。
- 潜在意識は価値観である
- 潜在意識は習慣である
- 潜在意識は空想と現実の区別ができない
- 潜在意識は自分と他人の区別ができない
- 潜在意識は変化が怖い
- 潜在意識は思い込みで作られる
1. 潜在意識は価値観である
潜在意識とは価値観でもあります。
価値観とは好き嫌いに基づいた判断基準で、行動の動機になるものです。僕たち人間は、無意識に価値観に沿った考え方をしています。その結果、無意識での思考は行動となって現れます。
価値観は無意識に口グセに現れる
例えば、あなたは『失敗は悪いこと』という価値観を持っているとしましょう。
小さい頃に失敗をして笑われた経験が価値観を作ったのか、「失敗しちゃダメだよ」という教育を受けて価値観が生まれたのかもしれません。
とにかく失敗が嫌いなあなたは、いつも効率を考えるクセがついているはずです。新しいことを始める際には失敗しない方法ばかりを考え、なかなか行動に移せないかもしれません。
- 「それ、ホントに大丈夫?」
- 「失敗しない?」
などと、価値観は無意識に口グセとなって、行動に現れています。
潜在意識は見たいモノしか見ない
また、あなたは『料理が好き』という価値観を持っているとしましょう。
料理が好きなあなたは、新しい食材を見つけると無意識で新しい調理法を考えるはずです。レストランで食事をする際にも、「どんな食材で、どんな調味料を使っているのか」を無意識に考えます。
テレビを見れば自然と料理に注目し、本屋さんに行けば料理が表紙の本についつい手が伸びてしまうかもしれません。
言い換えれば、潜在意識が見たいモノしか見えていないとも言えます。
もしもあなたが料理に興味がないのなら、同じテレビを見ても料理の映像に注目することはないはずです。同じ本屋さんに行って料理の表紙の本が視界に入ったとしても、気づくこともなく、本を手に取ることもありません。
このように、潜在意識は見たいモノだけを見て、行動に現れているんですね。
ちなみに、“見たいモノしか見えない” 脳の機能は、「選択的注意」と呼ばれています。選択的注意は視覚の他にも、“聞きたいモノしか聞こえない”、“感じたいモノしか感じない” など、五感すべてで起こります。
心理現象としては、カラーバス効果やカクテルパーティー効果が有名です。
2. 潜在意識は習慣である
潜在意識とは習慣でもあります。
人間の行動の多くは、習慣化されて無意識で行なっています。
例えば、きっとあなたはハミガキを毎日されていますよね。歯を磨かないと、なんだか気持ち悪く感じると思います。
- ごはんを食べたら歯を磨く
- 寝る前に歯を磨く
- 出かける前に歯を磨く
タイミングは人によって違いますが、何かをしたタイミングでハミガキという行動のスイッチが自動的に入っているはずです。
それは、ハミガキが習慣化されているからです。
習慣とは無意識での行動
また、毎朝同じような朝食を作っているとしたら、意識しなくても同じ動作をしているはずです。
という一連の流れがあるとしたら、何も考えていなければ、冷蔵庫からソーセージを取り出したかったはずなのに、ついつい卵を取り出そうとするはずです。
- ご飯を食べる時に同じ歯から噛み始めるクセ
- 椅子に座ったら足を組んでしまうクセ
- 背中が丸くなってしまうクセ
・・・これらも全て習慣化された動きであり、僕たち人間は習慣化された行動を無意識にしていることがわかると思います。
3. 潜在意識は空想と現実の区別ができない
潜在意識は、空想と現実の区別ができない特徴があります。
前回の記事でもやってもらいましたが、もう一度、酸っぱいレモンをかじる想像をしてみてください。
実際にレモンを食べたわけではないのにヨダレが出てきますよね。ということは、潜在意識は酸っぱいレモンを食べる想像と、実際に食べる現実との区別ができていないということです。
言い換えれば、潜在意識は過去と現在と未来の区別ができないということでもあります。
4. 潜在意識は自分と他人の区別ができない
潜在意識は、自分と他人の区別ができない特徴があります。
例えば、ホラー映画が苦手な人は、自分自身は安全な映画館でゆったり鑑賞しているはずなのに、映画の中の主人公が体験する恐怖を自分ごとのように感じて背中がゾクゾクしたり、思わず目を背けたりします。
また高所恐怖症の人は、鉄橋の上で遊んでいる人の映像を見るだけでも体がゾワゾワしてしまいます。
自分が体験していることではないはずなのに、潜在意識は『体感』となって現れるんですね。
いくら 顕在意識(新しい脳)の理性的な『言葉』で「これは目の前で起こっている現実じゃない、怖くない!」と考えたとしても、潜在意識(古い脳)の『体感』が現れれば恐怖を感じるということです。
人は『言葉=意識』ではなく『体感=無意識』にリアリティを感じるんですね。
5. 潜在意識は変化が怖い
潜在意識は新しい行動を避ける特徴があります。
なぜなら、古い脳である爬虫類脳は安全を第一に考えるからです。そして大抵は、現在が安全な状態だと認識しているからです。「昨日と同じ状況であれば、今日も安全に生きられる可能性が高い」という認識です。
安全な状態を抜け出して、わざわざ新しい行動をすることは、爬虫類脳にとっては「危険が増えるだけだから怖い!」と考えるんですね。
このような爬虫類脳の極度の安全志向は、太古の時代に培われた記憶が関係しているとされます。
太古の時代では、身の安全が確保されてませんでした。そのため、新しい行動は死につながる可能性を高める行為でした。新しい土地へ行けば危険な獣に遭遇するかもしれません。見たこともないモノを食べたなら、毒で死んでしまうかもしれません。
だからこそ、潜在意識は新しい行動に「待った!」をかけようとするんですね。
ホメオスタシスが行動を元に戻そうとする
前回の記事の、爬虫類脳の特徴でお話しした「ホメオスタシス」という機能を思い出してください。
ホメオスタシスとは、安全のために体をいつもの状態に保とうとする機能のことですね。心臓を一定のリズムで動かしたり、寒ければ体をブルブル震わせて体温を一定に保とうとします。
この機能は体だけではなく、思考にも影響します。
つまり、新しい考えが浮かんだとしても、安全のためには、新しい考えすら元に戻そうとする力が働くということです。
ですので、例えばセミナーで「すごい良いことを学んだ!さっそく実践しよう!」とモチベーションが上がったとしても、数日が過ぎれば「あぁ、そんなことも学んだな・・・」と、元の状態に戻りやすくなります。
学生時代をふり返ってみてください。真夜中にめちゃめちゃいい感じのラブレターを書いたと思ったのに、次の日の朝に読み返してみると、めちゃめちゃ恥ずかしく感じた経験はありませんか?
あれはいつもの冷静な状態に戻そうとする、ホメオスタシスが働いた結果でもあったんですね。
爬虫類脳は、とにかく変化が怖いんです。
ですので、たとえ「体に良いこと・将来役に立つこと」とわかっているはずの場合でも、潜在意識は新しい行動を避けようとします。
6. 潜在意識は思い込みで作られる
最後に、潜在意識は思い込みで作られる特徴があります。
はじめに「潜在意識とは価値観である」とお話ししましたが、その価値観は思い込みで作られているということです。
例えば、あなたは犬が苦手だとしましょう。
犬を見ただけで体が固まったり、心臓がドキドキしてしまうとしたら、それは潜在意識が「私は犬が苦手」と感じているからですね。
ですがあなたは本当に、全ての犬が苦手なのでしょうか?
犬が苦手になった原因が小さな頃に犬に手を噛まれたからだとしたら、たった一匹の犬に噛まれただけに過ぎません。そのたった一回の体験で、「犬が苦手」というフィルターをかけた状態で全ての犬を見ていることになるんですね。
全ての犬があなたの手を噛む、なんてことはないですよね。
このように、潜在意識は思い込みで作られています。言い換えれば、あなたのアイデンティティは全て思い込みに過ぎないということでもあります。
これらの特徴を考えれば、普段の生活は潜在意識に支配されていると言っても過言ではないほど、いかに潜在意識の影響力が大きいのかが理解しやすくなったのではないでしょうか。
行動できない原因は顕在意識と潜在意識の不一致
ここまでお話ししてきた潜在意識の特徴をまとめてみると、目標を立ててもなかなか行動できない原因がわかってくると思います。
潜在意識の特徴
- 90〜97%ほどの影響力がある
- 価値観となって、口グセや行動に現れる
- 見たいモノしか見えない
- 習慣化され、行動に現れる
- 空想と現実の区別ができない
- 過去と現在と未来を区別できない
- 自分と他人を区別できない
- 『言葉』ではなく『体感』にリアリティを感じる
- 変化を嫌い、元の状態に戻そうとする
- 思い込みで作られる
例えば、あなたが顕在意識で「人生を変えるために勉強しよう!一日3時間を費やすぞ!」と意気込んだとしても、潜在意識が「勉強よりもテレビが好き」と感じていたとしたら、無意識で勉強よりもテレビに注目してしまうということです。
無意識でいつものようにテレビの前に座りますし、無意識で「今は勉強よりもテレビを見よう」と行動の先延ばしをします。最終的には「勉強よりもテレビを見た方が人生は楽しい」と、元の状態に戻ろうとします。
「なぜだかやる気にならない・・・」と感じたとしたら、
- 「勉強なんて面倒で嫌いだ・・・」
- 「人生なんて変えなくても、このままの方が安全だ・・・」
- 「勉強が活かせなかったら怖い・・・」
といった、あなたが意識できない潜在意識が足を引っ張っていることが考えられるんですね。
こんな言い方をすると潜在意識が悪者のように感じるかもしれませんが、潜在意識とはあなたを守る防衛システムのようなものです。
しかも、あなたを生まれたての赤ちゃんのように扱う、思い込みの激しい超過保護な防衛システムです。
潜在意識の思いどおりに結果が導かれる
逆に言えば、潜在意識の思いどおりに、結果が自然に導かれるということです。
例えば、タバコが嫌いな人は、タバコを吸うことはありません。走ることが好きな人は、毎日のジョギングも苦ではありません。勉強が好きな人は、時間を忘れて勉強することができます。
このように、「好き・嫌い」というキーワードが行動を生んでいるんですね。これは、感情を司る哺乳類脳の領域です。
ですので、前回の記事でもお話ししたとおり、目標とする行動が「大好き」になれば、自然と行動が生まれ、自然と得たい結果に導かれるということです。
目標達成するには価値観の転換が必要
「好き・嫌い」という感覚は、価値観に基づく感情です。
目標とする行動が「大好き」になるためには、潜在意識である価値観の転換が必要になります。
もしも、ジョギングが嫌いなあなたが「ジョギングって楽しい!」という価値観に変えることができたなら、簡単にジョギングを続けられるということですね。
あるいは、「ジョギングは毎日するのが当たり前」という価値観に変えることができれば、簡単にジョギングを続けられるようになります。
潜在意識である価値観を変える方法は、次の記事で解説します。
まとめ
顕在意識とは、普段自覚ができる意識のことです。論理的な思考・理性・知性・判断力を指します。「脳の三位一体論」での『新しい脳(人間脳)』にあたると言えます。
潜在意識とは、普段自覚ができない意識のことです。感情・感覚・直感・記憶・本能的な欲求を指します。「脳の三位一体論」での『古い脳(爬虫類脳・哺乳類脳)』にあたると言えます。
潜在意識の影響力は、90〜97%とも言われるほど強力です。
ですので、いくら顕在意識で「毎日勉強するぞ!」と意気込んだとしても、潜在意識が「勉強よりも遊ぶ方が楽しいぞ」と感じれば、なかなか行動を変えられなくなります。
あなたの立てた目標を簡単に実行・達成するためには、次の記事を参考に潜在意識の書き換えをしてください。
Next⇒「潜在意識を書き換える2つのアプローチと自己暗示の方法」
参考サイト:
Wikipedia/無意識
Wikipedia/自我
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