パーティー会場のような大勢の人が集まる騒がしい場所でも、自分の名前を呼ぶ声や、自分が興味のある言葉などは自然と聞き取ることができます。
このような現象を、認知心理学ではカクテルパーティー効果と言います。
例えば、電車に乗っている時に、自分が降りる駅の車内アナウンスだけは、騒音の中でも不思議と聞き取れたりしますよね。
このカクテルパーティー効果は、脳の「選択的注意」という機能によって起こります。
この脳の機能は、恋愛関係や人と仲良くなることに利用できます。また、マーケティングやコピーライティング、ブログ記事のタイトルに応用すれば、お客さんを思わず注目させることができます。
カクテルパーティー効果を応用するポイントは、「相手が反応しやすい言葉」です。カクテルパーティー効果のメカニズムを知って、反応率の高い広告づくりに役立ててください。
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カクテルパーティー効果のメカニズム
なぜ、騒がしい場所でも、自分に関係する言葉は聞き取ることができるのでしょうか?
理論的には、騒がしい場所で特定の人の声と周りの人の声が混ざった場合は、音の区別はできなくなるはずです。
実際、同じ会話の内容をモノラル録音した場合には、後から聞き返してみても、雑音ばかりで何を話しているのかを聞き取ることはできません。
ですが、その場で会話している場合は、周りの音が5dB大きい状況でも、90%の明瞭度で特定の人の声を聞き取ることができます。これは、アメリカの音響学者ロックナーとバーガーの実験によって明らかになっています。
物理現象として考えれば、耳は2つありますので、音の発生位置を知ることができます。音源ごとに異なる基本周波数の差もありますので、音の違いで聞き分けられると考えられています。
音は「耳」ではなく「脳」で聞いている
もう一つ、聞きたい音を聞き分けられるのは、聴覚ではなく、脳の情報処理能力の高さが関係していると考えられています。
空気の振動である「音」を聞いているのは『耳』です。ですが、耳に届いた「音」が神経信号に変換されて、認識しているのは『脳』です。
僕たちの脳は、すべての情報を等しく処理しているわけではなく、その一部だけを優先的に選択して処理しています。
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選択的注意の代表例がカクテルパーティー効果
複数あるうちの一つの情報に向けられた注意を「選択的注意」と言います。
脳は自らが注意を向けたものを優先的に処理して、必要ではない情報はインプットしないようにガードしているんですね。
なぜなら、五感から受け取るすべての情報を同じように脳に届けたら、脳がパンクしてしまうほどの情報量になってしまうからです。
例えば、本を読むときに、目から入る文字の情報と、時計の「カチ、カチ・・・」という音の情報や、肌が衣服に擦れる感覚などの情報を全て等しく受け取っていたとしたら、とてもじゃないけど読書に集中なんてできないですよね。
カクテルパーティー効果とは、選択した情報を脳が優先的に処理して、その他の情報をシャットアウトする機能のことなんですね。
この機能は、音だけではなく、視覚など五感から受け取る情報すべてに対して起こります。
視覚の選択的注意はカラーバス効果
意識することで、それに関係する情報が目に飛び込んでくる現象は「カラーバス効果」と言います。耳に関係するカクテルパーティー効果と同じように、脳の機能で起こります。
例えば、あなたの奥さんが初めての赤ちゃんを授かったとします。すると、今まで意識することなんてなかった「赤ちゃんに関する情報」をよく受け取るようになります。
街中ではお腹の大きな女性を見つけ、ベビーカーを見つけ、赤ちゃんの泣き声が耳に入るようになります。テレビを見ても、オムツやベビー用品のCMをよく見つけることになります。
あなたが「赤ちゃん」を意識したことで、脳が赤ちゃんに関する情報を無意識で選ぶようになります。
「そろそろ引っ越そうかなぁ」なんて考えている時に、やたらとマンションの広告が目に入るのは、カラーバス効果の影響なんですね。
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名前が重要なことがわかったコリン・チェリー氏の実験
カクテルパーティー効果(Cocktail party effect)は、1953年にイギリスの心理学者コリン・チェリー(Edward Colin Cherry)氏によって提唱された心理現象です。
チェリー氏の行った実験では、被験者の左右の耳に異なる音声刺激を同時に聞かせて、一方の耳に注意を傾けてもらいました。すると、注意を傾けなかった方の耳に、聞こえるはずの音が聞こえなくなる現象が起こったのでした。
この実験から、人は注意を向けた情報を優先し、それ以外の情報を無視できることが証明されたんですね。
また別の実験では、集中しない方の耳に被験者の名前を呼ぶ音声を入れました。すると、自分の名前を呼ばれた方の音に意識が傾き、集中するはずの音声を無視する現象が起きたのでした。
このことから、人は自分の名前に強制的に意識が向くことが分かったのでした。
カクテルパーティー効果を恋愛に応用する
自分の名前に意識が向くカクテルパーティー効果は、人間関係の構築や恋愛に応用することができます。
例えば、相手と仲良くなりたい場合には、できるだけ会話の中で相手の名前を呼ぶようにします。そうすれば、好意的な印象が残りやすくなります。
この効果は、アメリカの心理学者の実験でも実証されています。
男女に15分間会話をさせて、会話の中で相手の名前を呼んだ場合と呼ばなかった場合の印象を尋ねました。
すると、名前を呼んだ時の方が「フレンドリー」「社交的」「もう一度会ってみたい」など、相手に対して好印象を残す結果になりました。
出典:『Meeting and Understanding People』Chris L. Kleinke 著
名前を呼ぶことに効果がある理由は、個人にとって「名前」がもっとも深く関係している言葉だからですね。ですので、名前ほどではないにしても、相手に深く関係する話や興味のある話をすることでも、好印象を残せることができます。
相手が興味のある話なら、話の内容に意識してもらいやすくなるからですね。
自分のことが好きかどうかは、カクテルパーティー効果でわかる?
このカクテルパーティー効果を使えば、相手が自分のことを好きかどうかがわかります。
例えば、騒がしい街中で相手と会話してみて、「えっ、今なんて言った?」なんて、あなたの声が相手に届きにくいようなら、あなたは相手にとって大切な存在ではない可能性があります。
あなたのことを意識してくれていないということですね。
逆に、あなたが何も話していないのに、相手が「今、なんか言った?」と聞いてくるようなら、あなたのことを意識しているということです。
カクテルパーティー効果をコピーライティングに応用する
何を注意するのかを取捨選択できる脳の機能は、コピーライティングに応用することができます。
セールスコピーなどでは、お客さんが興味のある言葉を使うことで注目を集めることができます。「自分に関係がある」と思ってもらうことができれば、カクテルパーティー効果で注意を引きやすいということですね。
「自分に関係がある」度合いが高くなればなるほど、お客さんの注目を集めることができます。そのMAXが、実験でもあったように『相手の名前を呼ぶこと』と言うわけです。
例えば街中で、あなたの名前を呼ばれた場合と、違う名前を呼ばれた場合では、振り返ってしまう割合は全く違いますよね。ですので、広告のキャッチコピーやセールスレターでは、相手に関係している言葉を積極的に使って意識をこちらに向けるようにします。
カクテルパーティー効果を使った注目されるタイトル例
注目させるタイトルを作るためには、読み手の3つの属性を使った呼びかけをするようにします。
- ジオグラフィック(地理的属性)
- デモグラフィック(人口統計的属性)
- サイコグラフィック(心理的属性)
1. ジオグラフィック(地理的属性)
読み手の住所、周辺環境、勤務地などのジオグラフィック(地理的属性)を使った呼びかけの場合。
例え
- 目黒区にお住いのあなたへ
- 家から駅まで遠いと感じるあなたに朗報です
- 新橋まで通勤されているあなたへ
- 通勤に40分以上かけると人生を損している事とは
2. デモグラフィック(人口統計的属性)
読み手の年齢、性別、職業、役職、学歴、家族構成などのデモグラフィック(人口統計的属性)を使った場合。
例え
- 子育てを終えた40代の女性にお勧めできる保険があります
- 営業職なら絶対に知っておくべきキャリアアップの情報とは
- この1年が正念場だとお感じの社長様へ
- 高卒だから・・・なんて諦めている人はぜひ読んでください
- 3人家族にピッタリの車があります
3. サイコグラフィック(心理的属性)
読み手の目標、現状、悩み、信念などのサイコグラフィック(心理的属性)を使った場合。
例え
- 年収1,000万円を目指すフリーランスへ
- 会社の歯車でいることがイヤになってきたらするべきこと
- 足の匂いが気になって仕方ないあなたに知ってほしいこと
- 成功するためには才能が必要なんて思っていませんか?
これらを複合させて、たった一人に呼びかけるようにすることができれば、強力に惹きつけるタイトルにすることができます。
まとめ
カクテルパーティー効果とは、自分が注意した情報を優先的に処理して、その他の情報をシャットアウトする脳の機能のことです。音だけではなく、五感から受け取る情報すべてに対して起こります。
マーケティングやコピーライティングに応用するには、相手に関係している言葉を使うことが大切です。あなたが使っている言葉ではなく、「相手が使っている言葉」です。
どんな言葉が相手に響くのかは、相手のことを深く知る必要があります。そのためにも、マーケティングでは理想の顧客像である「ペルソナ」を設定することが大切ですね。
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