顧客心理を掴む心理学

文脈効果とは?同じ商品でも価値を上げるマーケティングの使い方

2017-05-16

文脈効果 を使って売上アップ

言葉や文章、記号の理解について、対象とするモノが前後の文脈や状況によって意味合いが変わる現象のことを、文脈効果と言います。

例えばデートの場面で「きみがほしい」という言葉を聞けば、ドキッとするセリフに感じると思います。これが料理を作っている時に聞けば、「卵の黄身が必要なんだな」と理解すると思います。

同じ言葉であっても、前後の文脈や状況によって意味合いは変化しますよね。

これが文脈効果です。

この文脈効果はもともとの意味から幅が広がり、現在ではマーケティングでも使われるようになっています。例えば、自動販売機で販売している120円のコーラは、状況と見せ方を変えることで 1,000円でも売ることができます。

どうやって見せ方(文脈)を変えるのか?

商品の見せ方によって商品の価値を変化させる文脈効果を理解して、ビジネスへの応用に役立ててください。

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文脈効果とは

もともとの文脈効果(Context effect)は、1955年にアメリカの認知心理学者であるジェローム・シーモア・ブルーナー(Jerome Seymour Bruner)氏が、『Journal of General Psychology』で発表した研究が始まりです。

ブルーナー氏は、最初に見る文字群によって、「崩れたB(Broken-B)」がどのように読まれるのかを調べました。

broken-B

Broken-B

その結果、「L・M・Y・A」を最初に見た人は「B」と読む人が多く、「16・17・10・12」を最初に見た人は「13」と読む人が多い結果になりました。

同じ図形でも読み方が変わる文脈効果の例

ブルーナー氏の「Broken-B」をわかりやすくした典型的な例に、次のような図形があります。

文脈効果の例

文脈効果の例

上の列では、文字として「A、B、C、D」と読むことができますよね。下の列では、数字として「12、13、14、15」と読むことができます。

左から2番目の「B」のような図形は、上の列でも下の列でも同じ形をしているのに、前後の文字(文脈)から判断して「B」や「13」に見えています。

ざっくりと言えば文脈効果とは、周りの状況からふさわしい事柄を判断する、「空気を読む力」と言ってもいいかもしれません。

文脈効果は文章を脳内で修正してくれる

文脈効果は、脳のあいまいな優秀さを教えてくれます。次の、ひらがなばかりの文章を読んでみてください。

こんちには  みなさん  おんげき  ですか? わしたは  とても  げきんです。 にんんげは  もじを  にしんき  するときには  その  さしいょ  と  さごいの  もじさえ  あってれいば  よむとこが  できる  そでうす。 あたなにも  よめまたしか?

文字の順番はバラバラでも、意味を正しく理解できたのではないでしょうか。

脳が記憶の中にある言葉と結びつけて自動修正してくれることで、文章として理解することができます。これは文脈効果のおかげなんですね。

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文脈効果と似ている現象

文脈効果は、「プライミング効果」と呼ばれる現象が関わっています。また、文脈効果と似ている現象には「クレショフ効果」があります。

直前に影響を受けるプライミング効果

プライミング効果とは、先行した情報に影響を受けて、別のモノゴトを覚えやすくなったり思い出しやすくなったりする現象です。

例えば、『ライオン・シマウマ・サイ』の写真を見せた後に「スピードの速いものと言えば?」と質問すると、動物の「チーター」を答える人が多くなります。

スピードの速いものは、新幹線や飛行機などいくらでもあるのに、先行した情報に影響を受けて、動物の範囲内で考えやすくなる傾向があるんですね。

直前の映像に影響を受けるクレショフ効果

クレショフ効果とは、視覚情報について、たとえ無関係な情報同士でも、隣り合っていれば関連づけて意味を持たせてしまう現象です。

例えば、『お墓』の写真のすぐ隣りに『無表情の男性』の写真があれば、2つの写真を無意識に関連づけて、『無表情の男性』が悲しい表情に見えてしまいます。

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マーケティングで使う文脈効果

現在では、「文脈」は文章や記号の理解だけではなく、いろいろな状況で起こる周辺の環境や、前後の時間軸を含めて「文脈」と呼ばれるようになっています。

そして「文脈効果」の意味合いは、いろいろな状況で起こる促進的効果、抑制的効果も含めて使われるようになっています。

「◯◯といえば△△」の文脈の流れをつくる

例えば、TDLに行けば、帰りにお土産を買いたくなったりしませんか? 観光地でご当地のソフトクリームが売っていたら、思わず食べたくなることはありませんか?(←これは個人的な好みだけかもしれませんが)

居酒屋に入れば「とりあえず生中!」とオーダーしてしまうことや、「夏といえば海」「祭りといえばりんご飴」という連想も、広く捉えると文脈だと言えます。

  • 「◯◯に行けば△△したくなる」
  • 「◯◯といえば△△」

という文脈の図式を、お客さんの頭の中につくり上げることができれば、プロモーションとしての文脈効果は成功したようなものだと言えます。

周りの見た目を変えて商品価値を変える

商品・サービス以外の周辺の環境を変えることで、商品の意味合いを変えることができます。つまり、文脈効果をマーケティングとして応用すれば、商品の価値を上げることができます。

その方法は、商品を単体で見せるのではなく、商品の前後の時間軸や周りの環境も含めてお客さんに見せるようにします。

もっともわかりやすいのは、“器” です。

例えば、飲食店で焼きそばをオーダーした際に、紙のお皿に盛られて出てくるのと、高級なお皿に盛られて出てくるのとでは、同じ焼きそばでも違って見えますよね。

ビールを飲むのにしたって、缶ビールでそのまま飲むのと、キンキンに冷えたビールジョッキに注いで飲むのとでは、美味しさが変わります。

同じ商品でも周辺の情報を変えることで、総合的な価値が変わるんですね。

スーパーマーケットで学ぶ文脈効果

スーパーマーケットでは、文脈効果を活かした販売方法を目にすることができます。

果物や野菜を販売する際には、ただ果物を並べるだけではなく、木箱に入れることで産地直送をイメージできます。魚を販売する際には、ただ魚を並べるだけではなく、氷を敷くことで新鮮さをイメージできます。

ジュースの商品パッケージを見てみれば、フルーツに水滴がついている写真を見せることで、鮮度が高い演出をしています。お寿司に使う黒い色の器も、お寿司の色を鮮やかに見せるのと同時に、高級感も演出しています。

シチュエーションを変えて商品価値を変える

シチュエーションを変えることでも、商品の価値を変えることができます。

例えば自動販売機で売っている120円のコーラは、 “場所” を変えることで価値が変わります。高級ホテルで、高級なグラスにレモンが添えられて、ボーイさんが部屋まで運んでくれることで、1,000円で提供しても満足感を味わってもらうことができます。

たとえ紙皿に盛られた焼きそばでも、お祭りの屋台やキャンプ場という “環境” が変われば、美味しさも変わりますよね。

商品への文脈を変えることで、満足度も変わります。

文脈効果を使ったコピーライティング

文脈効果をキャッチコピーなどに応用するには、商品の前後の時間軸や、商品の環境をイメージできるようにします。

また、良いイメージとくっつけることで、商品の価値を引き上げるようにします。

例え

  • GPS衛星電波時計が知らせる正確無比な時の刻みが、できる男を育てる
  • 農家直送の濃厚たまごと新鮮な朝採れ野菜でつくったミモザサラダ
  • 北海道の大自然に恵まれた大地で育ったゴロゴロじゃがいも
  • 沖縄の鮮やかな碧い空と碧い海を満喫できる、最高に贅沢な3日間の旅
  • 英国紳士が愛した革靴

例えの解説

腕時計のコピーでは、商品を使った後の時間を表現しています。「正確な時計」と「できる男」は本来無関係ですが、文脈としてつなげることで、時計の価値を上げています。

ミモザサラダやじゃがいものコピーでは、素材が採れた情景を表現することで、商品価値を上げるようにしています。

また北海道や沖縄、英国を使ったコピーでは、土地や場所の良いイメージと商品をくっつけることで、商品価値を上げるようにしています。

いずれも、商品自体の表現ではないことに注目してください。

▼売る商品より大事なもの▼ウェブセールスライティング習得ハンドブックcp-b

まとめ

文脈効果とは、言葉や文章、商品を見るときに、前後の文脈や状況によって、意味合いや感じ方が変わる現象のことを言います。

文脈効果をマーケティングに応用するためには、商品を単体で見せるのではなく、周辺の情報を変えて全体で見せるようにします。

コピーライティングに応用するためには、商品を使う前、使った後の情景が浮かぶような表現をします。また、商品の環境をイメージできるように表現したり、他の良いイメージとくっつけることで商品の価値を上げるようにします。

気をつけたいのは、「詐欺行為」と取られるほど周辺の環境を変え過ぎないことです。いくら周りを変えたところで、商品自体は変わりませんから、「盛りすぎ」に注意ですね。

あなたのビジネスでは、どのように文脈効果を使えそうですか? ぜひ考えてみてください。

さらに心理学をマーケティングに応用する方法は、こちらを参考にしてください。

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高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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