弱者が強者に勝つための戦略に、ランチェスター戦略があります。大企業が取る戦略とは真逆の戦略です。
小さな会社が業績を上げて大きくしていくためには、大企業と同じような戦い方をしても勝つことはできません。弱者である小さな会社には、弱者の取るべき戦略があります。
弱者の戦略とは、戦うべき場所を絞って、その場所でNo.1の存在になることです。
この記事では、弱者の戦略と言われるランチェスター戦略の基礎知識について解説します。ランチェスター戦略を理解して、あなたが取るべき戦略に役立ててください。
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ランチェスター戦略 とは
ランチェスター戦略とは、第一次世界大戦で生まれた軍事戦略を元に日本で研究され、体系化されたマーケティング理論です。
このランチェスター戦略は、1972年に刊行された書籍『ランチェスター販売戦略』によって広く知られるようになりました。著者は、日本での経営コンサルタントの草分け的な存在だった田岡信夫氏です。
ソフトバンク、アサヒビール、エイチ・アイ・エス、ソニー、セブンイレブンなどは、ランチェスター戦略をとったからNo.1になったと言われています。
日本でも多くの企業が取り入れていることから、ランチェスター戦略は「販売戦略のバイブル」とも言われています。
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ランチェスター戦略の成り立ち
ランチェスター戦略は、次の2つの考え方から成り立っています。
- ランチェスター法則
- ランチェスター戦略方程式
マーケティングにはあまり関係がないので、ここは流し読み程度でも大丈夫です。
1. ランチェスター法則とは
ランチェスター法則とは、第一次世界大戦時に戦闘機の開発に従事していたイギリス人であるF・W・ランチェスター氏が考案した軍事法則です。兵力数と武器性能の関係性を、「武器効率(質)× 兵力数(量)」で表したものです。
2. ランチェスター戦略方程式とは
ランチェスター戦略方程式とは、第二次世界大戦の際に「武器効率(質)」を、さらに「戦闘」と「戦術」に分けたもので、アメリカで進化発展したものです。
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ランチェスター戦略の2つの法則
ランチェスター戦略は、次の2つの法則でできています。
- 弱者の戦略である「第一法則」
- 強者の戦略である「第二法則」
マーケティングは、この2つを押さえておけば大丈夫です。
1. ランチェスター 第一法則(弱者の戦略)
弱者の戦略とは、局地戦・接近戦・一騎打ちという、一対一の戦いに当てはまる戦闘力の法則です。
局地で敵を目の前にして戦う場合には、戦闘力 = 武器効率(質)× 兵力数(量)となります。戦闘力は兵力数(量)に比例するので、単純に兵力数が多い方が勝つことになります。
兵力数が少なくても勝つためには、武器(質)の性能を上げる必要があります。

ランチェスター戦略 第一法則
弱者の戦略のポイント
- 局地戦では兵力数の多い方が勝つ
- 局地戦では武器性能の高い方が勝つ
2. ランチェスター 第二法則(強者の戦略)
強者の戦略とは、広域戦・遠隔戦・確率戦という、集団対集団の戦いに当てはまる戦闘力の法則です。
広域で多人数同士で戦う場合には、戦闘力= 武器効率(質)× 兵力数(量)の二乗 となります。兵力数が多い方が圧倒的に勝つことになりますので、兵力数が相手よりも多い時は、なるべく広域での戦闘を選ぶことが大切です。

ランチェスター戦略 第二法則
強者の戦略のポイント
- 広域戦では総合力の高い方が勝つ
「どっちみち兵力数の多い方が勝つんかい」と思いますが、兵力数が大きくなると、その力は分散します。弱者が強者と戦うためには、なるべく接近戦で、相手の分散した弱い部分に一点集中することが重要になるということです。
ビジネスにおける弱者の基本戦略とは
ランチェスター戦略をビジネスに置き換えると、武器効率と兵力数は次のとおりです。
- 武器効率とは「商品力」
- 兵力数とは「販売力」
例えば、同じ地域で競合他社と同じような商品を販売している場合は、販売力の大きい方が勝つことになります。営業パーソン(チラシ広告)の数を増やして、数の力で営業すれば、競合他社に勝てるということです。
営業の人数を増やせない小さな会社の場合は、商品力を上げて勝負することになります。
商品力を上げるためには、「差別化」が重要になります。
店舗ビジネスでの弱者の戦略
ランチェスター戦略を店舗ビジネス(整体院、美容室、飲食店、小売店など)に置き換えると、次のとおりです。
- 武器効率(商品力)とは「魅力度」
- 兵力数(販売力)とは「売り場面積・席数」
兵力数とは、商品・サービスの販売を最大化させるための店舗の大きさの部分にあたります。
兵力数が少ない小さな会社の場合は、やはり「差別化」を図ることで、商品の魅力度を上げて勝負することになります。
Webサイト(ブログ)での弱者の戦略
ランチェスター戦略をWebサイト(ブログ)に置き換えるなら、次のとおりです。
- 武器効率とは「記事の内容」
- 兵力数とは「記事数」
Webサイトにアクセスを集めるためには、ブログ記事の内容を圧倒的に素晴らしいものにするか、ブログ記事数を圧倒的な数にするかのどちらかが必要です。
ブログ記事数を大量生産できない小さな会社の場合は、ブログ記事の内容で勝負することになります。記事の分野を絞って、一点集中(専門化)することが大切です。
ランチェスター戦略の成功事例
差別化で有名な成功事例のひとつが、アサヒ飲料の朝専用缶コーヒー「ワンダ・モーニングショット」です。
缶コーヒーのトップブランドであるコカ・コーラ社の「ジョージア」に対して、わざわざ “朝専用” という使用シーンを絞ったことで年間1500万ケースを売り、ヒットに成功しました。
このヒットの裏には、「缶コーヒーを飲む人の43%が朝に飲む」という調査結果を持っていたことにあります。コンビニのPOSレジのデータによると60%が午前中に売れていて、そのうちの80%が男性だというデータに基づいて、朝専用の缶コーヒーが発売されたんですね。
ここで重要なのは、情報が戦略のカギを握るということです。
弱者の戦略の考え方
ランチェスター戦略においての弱者と強者の位置付けは、「弱者=中小企業」「強者=大企業」というわけではありません。
- 強者=競合する局面においてシェアNo.1の企業
- 弱者=競合する局面においてシェアNo.1以外の企業
という考え方です。
弱者が勝つためには、競合する局面においてシェアNo.1の獲得を目指します。
シェア(市場占有率)No.1の目安
ランチェスター戦略方程式から、市場占有率の目標数値が導き出されています。
73.9% | 圧倒的No.1の独占的なポジションで、2位が逆転不可能なシェア |
41.7% | ほぼ一人勝ちの有利なポジションで、多くの企業の目標値 |
26.1% | No.1になれる最低条件で、1位であっても安定しない |
小さな会社は、まずは26.1%のシェアを目指して、局地戦で戦う必要があります。
No.1になるための3つの方針
ランチェスター戦略では、No.1になるために重要な3つの方針があります。
- 絶対的No.1主義
- 足下の敵攻撃の原則
- 一点集中主義
1. 絶対的No.1主義
ランチェスター戦略では、ただ一位になれば良いというものではありません。市場シェアが41.7%以上の一人勝ちのポジションになることが目標です。
ビジネスではNo.1以外は生き残れないため、はじめはどんなに小さくてもNo.1を取る必要があります。
No.1になりやすい順番
弱者がNo.1になるためには、なりやすい順序があります。
それは、エリア ⇒ 顧客 ⇒ 商品の順番です。まずはエリアを小さくして ⇒ 顧客層を絞って ⇒ 特定の商品に限定して、小さなNo.1を積み重ねていきます。
例えば、小さな八百屋さんが、「商品点数」「価格」という局面でシェアNo.1の大きなスーパーマーケットに対抗するためには、「地域を限定する」ことでシェアNo.1を目指す方法が考えられます。
次に「顧客を絞る」、さらに「扱う商品を絞る」ことでシェアNo.1を目指します。
スーパーマーケットと同じような戦略をしても、スーパーマーケットに対抗することはできないからですね。
2. 足下の敵攻撃の原則
No.1になるためには、「競争目標」と「攻撃目標」を分ける必要があります。
競争目標として、自分より上位の競合に対しては差別化戦略(違うことをする)を取ります。攻撃目標として、自分より下位の競合に対してはミート戦略(同じことをする)を取ります。
例えば、あなたの会社がシェアNo.2だった場合、まずはワンランク下のシェアNo.3の競合と同じことをして、シェアを奪う戦略を取ります。「勝ちやすい敵に勝つ」ということですね。
もしも、小さな八百屋さんの近くに、少し弱い八百屋さんがあったとしたら、少し弱い八百屋さんと同じような戦略をとれば、シェアを奪うことができるということです。
3. 一点集中主義
競争に打ち勝つためには、攻撃を集中することが必要です。
攻撃目標を「エリア」「顧客」「商品」に絞って一点集中しなければいけません。一点集中とは「小さく絞って、やらないことを決める」ということです。
「あれもやってみよう、これもやってみよう」と、手を広げないことが大切です。
小さな八百屋さんが大きなスーパーマーケットに対抗するためには、チラシを広域に撒いたり、商品点数を増やすようなことはしない方が良いということですね。
ランチェスター戦略を学ぶおすすめの本
ランチェスター戦略は、書籍からも多くを学ぶことができます。たくさんの本が出版されていますが、ここではおすすめできる3冊を紹介します。
【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則
こちらの本では、実際の戦争で行われた14の歴史事例から、ランチェスター戦略の要点を学ぶことができます。さらに38の企業の成功事例から、弱者の「差別化戦略」と強者の「ミート戦略」の理解を深めることができます。
2005年の刊行以来、増版を重ねてロングセラーを続けた書籍のバージョンアップの新版で、ランチェスター戦略を極めてビジネスに活かしたいなら、迷わず読んでおきたい一冊です。
小さな会社の稼ぐ技術
こちらの書籍は、「小さく絞れ」と言われても、なかなか小さく絞れない個人事業主や小さな会社のための教科書的な一冊です。
小さな会社が売上を上げるための具体的な事例が50ほど紹介され、ランチェスター戦略によるナンバーワン獲得の方法がわかるようになります。
もしもあなたが「これからどうやって戦っていけばいいんだろう?」と悩まれているのなら、こちらの一冊で “小さく絞る勇気” をもらうことができます。
三国志で学ぶランチェスターの法則
こちらの本は、「なぜ諸葛孔明は天下三分の計を唱えたのか?」「なぜ赤壁の戦いで勝利を収めることができたのか?」といった三国志のストーリーを絡ませながら、企業が成功した事例とともにランチェスター戦略を学ぶことができる一冊です。
あなたが三国志好きなら、楽しみながらランチェスター戦略を理解できると思います。
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まとめ
小さな会社を大きくするためには、ランチェスター戦略を取り入れることが最善策です。
ランチェスター戦略をビジネスやWebサイトに置き換えると、
- ビジネス:武器効率とは「商品力」、兵力数とは「販売力」
- Webサイト:武器効率とは「記事の内容」、兵力数とは「記事数」
となります。
シェアNo.1を獲得するためには、まずはエリア・顧客・商品を小さく絞って、小さなNo.1の獲得を目指します。そのためには、差別化して一点集中することが大切です。
次の記事では、弱者が成功する3つの戦略を解説します。
Next⇒「 ランチェスター戦略で差別化して一点集中してNo.1をつくる」
追伸
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