お客さんに何かを選んでもらう時には、選択肢は3つまでにした方が良いです。また、商品のおすすめポイントを並べる時には、6つ以上をあげた方が良いです。
なぜ、3や6という数字を出したのか? これには理由があります。
それは「マジカルナンバー」という、人が瞬間的に記憶できる短期記憶の数が関係しています。
人は一度にたくさんのことを見聞きしたとしても、すべてを憶えることはできません。それなのにWebサイトでは、ユーザーに対して、一度にたくさんの情報を与えようとしてしまいがちです。
人が瞬間的に憶えられる限界の数「マジカルナンバー」を知ることで、マーケティングに応用できる数字がわかるようになります。
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マジカルナンバーとは
マジカルナンバーとは、人が瞬間的に記憶できる短期記憶の限界数を表したものです。
アメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラー(George Armitage Miller)氏が、「人は一度聞いただけで、直後に再生できる記憶容量はどのくらいか」について研究し、1956年に発表した論文『マジカルナンバー7±2』(原題:The Magical number seven, plus or minus two: some limits on our capacity for processing information)というタイトルから、このネーミングで呼ばれるようになりました。
この研究は、認知心理学の先駆けのひとつになりました。
短期記憶とは
短期記憶とは、数十秒から数分で忘れてしまう記憶のことです。
例えば、 友達から「今度電話番号が変わるから、今から新しい番号を教えるね。03 - 3145 - 847x だよ。登録しといて」と言われて、その場で番号を暗記したとします。
ですがその番号は、自分の携帯電話のメモリーに入力してしまえば、数分後には忘れてしまうと思います。
これが短期記憶です。
その友達がさらに、「そうそう、今度出張で一週間フランスに行くんだって? ついでと言ってはなんだけど、買ってきて欲しい雑貨があるんだ」と、雑貨リストを読み上げたとします。
「えっ、そんなに?」という感想は置いておいて、あなたはこのリストを聞いて、瞬間的に全てを記憶できますか? きっと、「ええっと、最初に言ったの何だっけ?」と聞き返すことになると思います。
短期記憶の数には、限界があるということですね。
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マジカルナンバー7±2
ミラー氏が発表した論文では、「日常的なことを対象にした場合の記憶容量は、7個を中心としたプラスマイナス2個の範囲内である」という説を唱えています。
7個というのは情報量ではなく、「かたまり」の数のことを指します。この「かたまり」は「チャンク」と言います。
チャンクとは
チャンクとは、ミラー氏が提唱した概念で、人が知覚する情報のまとまりを意味します。
例えば、「たんききおく」という文字を、「た・ん・き・き・お・く」と一文字ずつ知覚すれば6チャンクになります。「短期・記憶」として理解すれば2チャンク、「短期記憶」で理解すれば1チャンクになります。
チャンク化することで、見やすく、憶えやすくなる効果があります。
短期記憶の限界数は5〜9チャンク
つまり「マジカルナンバー7±2」では、人が瞬間的に覚えられる限界の数は「7チャンク」を中心にして、個人差によって5〜9チャンクであるということを言っています。
ただし、ミラー氏は「7」という数字については断言せず、“現在のところは判断を差し控えることにしておく。 「7」という数字の背景には、何か深い真実があるのではないか。 それは、ピタゴラス的な自然現象であると考えている” といった内容の言葉を付け加えています。
「7」には説得力がある
マジカルナンバー7は、現在でも多くの人に信じられています。
それは「7」という数字が、世界中の多くの人にとって「不思議な力を持った数字」という認識があることが考えられます。
「7」という数字は、世界に23億人の信者がいると言われているキリスト教においては、「神」を表す神聖な数字とされています。「神がこの世界を創造して最初に休息したのが7日目」というところから、1週間の単位は7日になっています。その他にも、キリスト教には7つの大罪、7大天使など、7にまつわる数字が出てきます。
音楽では1オクターブに7つの音階が含まれています。自然界を見渡せば、太陽系の天体の数は7つとして数えられますし、世界は7つの大陸と7つの海に分けられます。虹だって、細かく分類すればいろんな色があるのに、7色にまとめられています。
この「7」という文化は、中国に伝わり、やがて日本にも入ってきました。
「七福神」や「七草」、「七夕」など、聖書の影響を受けない人であっても、知らず知らず「7」という数字は何か意味のある数字として認識するようになりました。
そのため、短期記憶の数が「7」だと聞くと、なにか自然の摂理のように感じます。
短期記憶の数は本当に7チャンク?
ですが、短期記憶の数は本当に7チャンクでしょうか? 例えば、日常的な野菜を7つあげてみます。あなたは瞬間的に、次の7つの野菜を憶えられますか?
ちなみに僕にはすごくハードルが高いです。では、2つ減らして、5つだったらどうですか?
ずいぶんと憶えやすくなったと思いませんか?
マジカルナンバー7では、プラスマイナス2としていますので、「5つ」も許容範囲内ではあります。ですが、ミラー氏も自身で語っていたように、短期記憶の限界数を「7±2」とするのは少し怪しい気もします。
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マジカルナンバー4±1 の登場
マジカルナンバーの研究は続き、2001年にはミズーリ大学の心理学教授であるネルソン・コーワン(Nelson Cowan)氏が、「4±1」こそ、正しいマジカルナンバーであると発表しています。
現在では、マジカルナンバー4±1が短期記憶の定説となっています。
つまり、「4チャンク」を中心とした3〜5チャンクこそが短期記憶の限界の数であるということです。
電話番号を思い返してみれば、「03 - 3145 - 847x」というのは3チャンクですよね。さらに、それぞれのチャンクを分解してみると、2〜4つの数字群で構成されています。これは「マジカルナンバー4」の範囲内の数です。
ミラー氏のマジカルナンバー7では、「日常的なことを対象にした場合の記憶容量は」という条件付きでした。ですので、例えば「03 - 3145 - 847x - 9212 - 836 - 908 - 7124」という7チャンクの見慣れない数字群では、とてもじゃないけど憶えられそうにありません。
一方の「03 - 3145 - 847x」という3チャンク(4±1の範囲内)であれば、たとえ見慣れない数字群であっても、瞬間的にだったら憶えられそうですよね。
略語は知らず知らず、マジカルナンバー4 で表現していた?
マジカルナンバー4は、略語を思い返した時にもしっくりきます。
- 「カンニングペーパー」⇒「カンペ」
- 「アラウンドフォーティー」⇒「アラフォー」
- 「ももいろクローバーZ」⇒「ももくろ」
- 「エンターテインメント」⇒「エンタメ」
など、憶えやすく言いやすい略語は、4文字以内の傾向があります。人が憶えやすい響きとして、自然と「4±1」の範囲で表現しているのかもしれないですね。
マジカルナンバー4 をマーケティングに利用する
短期記憶の数は「4±1」であるというマジカルナンバーを意識すれば、マーケティングで扱う数字が見えてきます。
5つ以内を意識する
例えば、商品のバリエーションを複数用意する時には、「4±1」を意識した数が良いことがわかります。
6つ以上の選択肢があると、短期記憶の数を超えてしまうために、比較検討するのに疲れさせてしまうからです。また、真ん中を選びやすくなる「松竹梅の法則」を考えれば、価格差のある商品の選択肢は3つであることがベストだと言えます。
Webサイトでは、ナビゲーションメニューの数を5つ以内に抑えることで、「このサイトはどんなサイトか?」という理解が瞬間的に分かりやすくなります。
6つ以上を意識する
反対に、ブログのカテゴリーの数は、短期記憶の数を超える6つ以上を並べることで、「たくさんの情報が揃っているサイトだ!」という印象を与えることができます。
セールスコピーでベネフィット(商品の満足感)を並べる時にも、一度に憶えきれない6つ以上を並べることで「イイことがたくさんある!」という印象を読み手に与えることができます。
選んでもらいたい時や憶えてもらいたい時は、できれば3つ以内にします。憶えきれないたくさんの情報があるという印象を与えたい時は、6つ以上を心がけるようにしてみてください。
まとめ
マジカルナンバーとは、人が一度に記憶できる短期記憶の数のことです。その数は5〜9であるという「7±2」の説から始まりましたが、現在では3〜5であるという「4±1」の説が有力です。
人に憶えてもらいたい情報を伝える時には、なるべくシンプルに、3つ以内にすることが大切です。
また、多くの情報があるという印象を伝えたい時には、6つ以上にしてみてください。マジカルナンバー7±2も含めて考えれば、10個以上がベストです。
さらに心理学をマーケティングに応用する方法は、こちらを参考にしてください。
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