マーケティングを実行する際には、色々なマーケティング要素を組み合わせて行います。このマーケティング要素の組み合わせを、マーケティングミックスと言います。
マーケティングミックスは、現在では次の3つに集約できます。
代表的な3つのマーケティングミックス
- 4P:製品のための分析
- 8P(7P):サービスのための分析
- 4C:顧客のための分析
この記事では、マーケティングミックスと、4P・8P・4Cの分析を解説します。
マーケティング活動は、全ての要素が一貫していることが大切です。
あなたのマーケティング活動が統一できているかどうかを確認するためには、マーケティングミックスの要素を分解して考えてみてください。
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マーケティングミックスとは
マーケティングミックス(Marketing Mix)とは、マーケティングを実施する際の「戦術」にあたる、色々なマーケティング要素の組み合わせのことです。
例えば、利益の最大化を効率的に図るために
- 商品のネーミングをどうするか?
- 商品のパッケージデザインをどうするか?
- 商品の価格をどうするか?
- どうやって安く生産するか?
- お店はどこに構えるか?
- どうやって宣伝するか?
といった、マーケティング活動を決定する様々な要素のことです。
マーケティングミックスは統一感が重要
この記事の冒頭でもお話ししたとおり、マーケティングミックスでは全ての要素が一貫していることが大切です。
なぜなら、統一感のないマーケティング活動は、顧客に良くない印象を与えたり、売上げの最大化を阻むことになるからです。
例えば、競合の商品と比べて高額なのに、安っぽいパッケージで販売してしまっては違和感を感じますよね。高級品をうたっていながらディスカウントショップで販売していては、なんだか変な感じがします。
企画部門と制作部門と販売部門がそれぞれの意思で行動をすると、このような間違いが起こってしまいます。
個人ビジネスや小規模ビジネスの場合は、このようなミスは起こりにくいかもしれません。ですが、マーケティング活動を統一させるためには、マーケティングミックスの要素を分解して確認してみることが大切です。
マーケティングミックスの歴史
マーケティングミックスは、製品中心のマーケティングが主流だった、1950年代に初めて登場しました。
最初に「マーケティングミックス」という言葉を使用したのは、ハーバード・ビジネススクール教授のニール・ボーデン(Neil Borden)氏だとされています。
ボーデン氏は、「製品計画・価格・パッケージ・ブランド・流通経路・広告・販売促進・陳列・対面販売・サービス提供・物流・調査と分析の質と量」をマーケティングミックスの要素としてあげました。
その後、1960年にアメリカのマーケティング学者エドモンド・ジェローム・マッカーシー(Edmund Jerome McCarthy)氏が、マーケティングミックスを「製品・価格・流通・プロモーション」の4つにまとめて、その頭文字をとって4P分析として提唱しました。
これによって、マーケティングミックスの代表的なモデルが4Pとして広まりました。
現在のマーケティングミックスは3つに集約できる
現在では、マーケティングミックスは次の3つに集約できます。
- 4P:製品のための分析
- 8P(7P):サービスのための分析
- 4C:顧客のための分析
ひとつずつ解説していきます。
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4P分析:製品のためのマーケティングミックス
製品のための4P分析とは、次の4つの要素のマーケティングミックスです。
製品視点の4P
- Product:製品
- Price:価格
- Place:流通
- Promotion:プロモーション
1960年に提唱された4P分析は、おもに製造業に関するものでした。
本来は「消費者志向の分析」という位置付けでしたが、1970年代に消費者志向が叫ばれるようになってからは、4P分析は「売り手側から捉えた分析」という位置付けに変わりました。
1. Product:製品
4P分析の「製品」とは、お客さんに対価をもらって提供する商品のことです。製品以外にも、保証やアフターサービスなども含まれます。
具体的に何を商品にするのかを決定し、想定した顧客層(ペルソナ)に向けた機能や品質、パッケージデザイン、ブランドであることを確認する必要があります。
また、ベネフィット(満足感)を確認することも大切です。
製品は、マーケティングのコンセプトと一貫していることが大切です。
マーケティングのコンセプトとは、簡単にいえば USPのことです。
例えば、『一人暮らしの女性が気軽に使える・買える掃除機』というコンセプトなのに、出来上がった製品のサイズが大きかったり、重量が重かったりすると、コンセプトとは合わないですよね。
2. Price:価格
4P分析の「価格」とは、商品の販売価格のことです。
固定費や変動費、ライバルの存在を考えた上で価格を設定しますが、想定した顧客層が満足できる価格であることを確認する必要があります。
価格を設定する際には、「PSM分析(Price Sensitive Measurement)」と呼ばれる情報収集の方法があります。アンケートを取ることで、価格帯の参考にできます。
PSMの4つの質問
- 質問1:この商品がこれ以上高いと「高すぎる」と感じる価格はいくらか?
- 質問2:この商品を高いと感じる価格はいくらか?
- 質問3:この商品を安いと感じる価格はいくらか?
- 質問4:この商品がこれ以上安いと「安すぎて不安になる」と感じる価格はいくらか?
商品の価値は、商品自体が持っている機能や性能の他に、商品から受けるイメージ、商品を購入する場所の雰囲気など、いろいろな要素がトータルされます。
安いことに価値がある場合もあれば、高いことに価値がある場合もあります。ですので商品の価格は、総合的なイメージで判断することが大切です。
例えば、『若い女性が気軽に買える掃除機』のはずなのに、あまりにも価格が高額だと、コンセプトと一貫性がないですよね。
3. Place:流通
4P分析の「流通」とは、商品がお客さんの手元に届くまでの経路のことです。
直営店で販売するのか、卸をとおして小売店で販売するのか、インターネットで通信販売を行うのか、どのようにしてお客さんに商品を提供するのかを決定します。
流通には3種類あります。
流通の3種類
- 人:訪問販売など、人を介した経路
- 媒体:インターネットやテレビ、カタログなど、情報媒体を介した経路
- 場所:店舗や自動販売機など、場所を介した経路
流通も、マーケティングのコンセプトと一貫性があるかどうかを確認する必要があります。
例えば、『若い女性が気軽に買える掃除機』がネット販売をしていなかったとしたら、コンセプトと矛盾することになりますよね。
4. Promotion:プロモーション
4P分析の「プロモーション」とは、製品を顧客層に知ってもらい、買ってもらうための活動のことです。広告、パブリシティ、販売促進ツール、セールス活動があります。
製品の存在を知ってもらい、「買いたい」と思ってもらうことが大切ですが、一貫したプロモーションであるかを確認する必要があります。
プロモーションは、次の2つの要素に分解できます。
プロモーションの2つの要素
- 媒体の選択
- 表現の作成
1. 媒体の選択とは
媒体の選択とは、どの媒体でプロモーションを行うのかを決定することです。
報道機関で紹介してもらう、テレビCM、ラジオCM、新聞広告、雑誌広告、看板、店頭ポップ、試供品提供などがあります。
近年では、インターネット広告、オウンドメディア、ブログ、YouTube動画、SNSなど、インターネット媒体の種類も増えています。
例えば、若い女性に向けた掃除機なら、新聞紙の折り込み広告を出すよりもインターネット広告を出した方が、見てもらえる可能性は高そうですよね。
2. 表現の作成とは
表現の作成とは、どのようなメッセージを、どのようなニュアンス(デザイン)で伝えるのかを決定することです。
例えば、一人暮らしの女性に向けた掃除機なのに、荒々しいメッセージと力強いストロングトーンの色合いで広告を作ったら、女性に向けたイメージが伝わらないかもしれません。
プロモーションも、マーケティングのコンセプトと一貫していることが大切です。
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8P分析:サービスのマーケティングミックス
サービス・マーケティングの8Pとは、次の8つの要素のマーケティングミックスです。
サービス・マーケティングの8P
- Product elements:サービス・プロダクト
- Price and other user outlays:価格とその他のコスト
- Place and time:場所と時間
- Promotion and education:プロモーションと啓発
- Physical environment:物理的環境
- Process:サービス・プロセス
- People:人
- Productivity and quality:生産性とサービス品質
1970年代になると、産業のサービス化が進み、サービスにも当てはまるフレームワークが求められるようになりました。
そこで、「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー氏は、4P分析に3つの「P」を付け足して、7P分析を提唱しました。
現在では、クリストファー・ラブロック氏とヨッヘン・ウィルツ氏の著書『サービス・マーケティング』に登場する、さらにもう1つの「P」が加わった「8P」が広まっています。
1. Product elements:サービス・プロダクト
8Pの「サービス・プロダクト」とは、お客さんに対価をもらって提供するサービスのことです。4Pでの「製品」にあたります。
レストランなら料理やドリンク、美容室ならカットやパーマ、タクシーなら移動、ホテルなら宿泊といったサービス内容のことです。
8Pも4Pと同様に、一貫性があることが大切です。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』というコンセプトでオープンしたお店のメニューが、「鴨肉のコンフィ」「お寿司」「トムヤムクン」のように多国籍だったり、「それ、お母さんが作るか?」というメニューの場合は、一貫性がないですよね。
2. Price and other user outlays:価格とその他のコスト
8Pの「価格とその他のコスト」とは、サービスの販売価格のことです。4Pでの「価格」にあたります。
サービス以外にかかる費用も含めて、どのような価格で提供するのかを決めます。
価格も、コンセプトと一貫していることが大切です。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』という親しみのあるコンセプトなのに、「焼肉定食2500円」「野菜炒め定食1500円」だったりすると、なんだか違和感を覚えますよね。
3. Place and time:場所と時間
8Pの「場所と時間」とは、サービスを受ける場所と時間のことです。4Pでいえば「流通」にあたります。
例えば整体院なら、どこにお店を構えるのかで行きやすさが変わりますよね。サービスを受けるまでの待ち時間や、サービスが終了するまでの時間など、時間が早いことで高まる価値もあれば、時間をかけることで高まる価値もあります。
そして、サービスを受ける場所によっても価値は変わります。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』というお気軽感のあるコンセプトのお店が、駅から離れすぎているなど、お店に行くことが困難な場合は、わざわざ足を運んでくれない可能性があります。
また、ファミリー層の住宅街にあった場合は、近くて行きやすい立地条件ではあるものの、足を運びたくなるコンセプトではないかもしれません。
4. Promotion and education:プロモーションと啓発
8Pの「プロモーションと啓発」とは、サービス内容を顧客層に知ってもらい、利用してもらうための啓発活動のことです。4Pでの「プロモーション」にあたります。
どんな価値のあるサービスなのか、なぜサービスが必要なのかを知ってもらい、どんな媒体でどんなメッセージを発信するのかを考えます。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』の想定している顧客層が「一人暮らしの20〜30代」の場合は、新聞へチラシ広告を出しても、見てもらえる可能性が低いかもしれません。
また、“お母さんの味が楽しめる”という暖かみのあるコンセプトなのに、駅前で配るチラシがビジネス文書のような簡素なデザインや、パチンコ屋のような派手派手しいデザインの場合は、親しみのあるイメージが伝わらないかもしれません。
5. Physical environment:物理的環境
8Pの「物理的環境」とは、インテリア、ユニフォーム、デザイン、音楽、匂いなど、五感で受け取る情報に関する全てのことです。
お客さんは、視覚・聴覚・嗅覚など五感から入る情報の全てを、サービス体験として受け取ります。
ですので、お店に入った時に、業者からのダンボールが店内に置きっ放しになっていたり、目につく場所にサービスとは無関係のモノが置いてあったりすると、良い体験をしたとは感じなくなってしまいます。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』というコンセプトなのに、店内に流れる音楽がヘビメタだったりすると、違和感を覚えますよね。
6. Process:サービス・プロセス
8Pの「サービス・プロセス」とは、サービスを提供する方法やサービスの流れのことです。
サービスの品質は、サービスをお客さんに提供するまでのプロセスと、具体的なサービスプログラムの実行によって決まります。
例えばディズニーランドでは、アトラクションに乗るまでに長蛇の列に並ばなければいけない場合、音楽を流したり、モニターで期待感を膨らませたり、待ち時間をも楽しませる工夫がされていますよね。
サービスを提供するプロセスにも、気を配る必要があるということです。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』なら、店内に入ってから料理を注文するまでと、料理が運ばれてくるまで、また、会計の際に至るまでに、一貫したコンセプトを考える必要があるということですね。
7. People:人
8Pの「人」とは、サービスを提供する人や、その他のスタッフ、さらにお客さんも含まれます。
サービスを提供するスタッフのパフォーマンスが、サービス体験に大きな影響を与えます。ですので、自社のブランドイメージに沿った行動を、スタッフ自らの意思で判断できるような人材教育をすることが理想的です。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』というアットホームなコンセプトだとしたら、「オーダー以外の注文は受け付けません」といった冷たい対応は、しない方がよいかもしれません。
また、ドレスコードのある高級レストランがあるように、サービスを受けるお客さん以外のお客さんもまた、サービス体験に影響を与えます。
8. Productivity and quality:生産性とサービス品質
8Pの「生産性とサービス品質」とは、生産性と品質は同時に考慮しなければいけないということです。
効率を追求しすぎると、サービスの品質が低下する可能性があります。また、サービスを追求しすぎると、生産性が下がる可能性があります。
ですので、生産性と品質は同時に改善することが大切なんですね。
例えば、『お母さんの味が楽しめる定食屋さん』というコンセプトであれば、効率を求めすぎると、暖かみのある接客ができないかもしれません。丁寧すぎる接客をすると、他のお客さんを待たせてしまうかもしれません。
4C分析:顧客視点のマーケティングミックス
顧客視点の4Cとは、次の4つの要素のマーケティングミックスです。顧客視点の「4C」は、企業視点の「4P」と対応しています。
顧客視点の4C
- Customer Solution:顧客ソリューション
- Customer Cost:顧客コスト
- Convenience:利便性
- Communication:コミュニケーション
製品中心だったマーケティングは、1970年代に消費者志向のマーケティングへと移行しました。
これによって、アメリカのマーケティング学者ロバート・ローターボーン(Robert Lauterborn)氏は、1993年に、4Pに対応させた『買い手視点の4C』という分類を提唱しました。
ローターボーン氏は、「4Pを設定する前に、まずは買い手の視点に立って4Cの検討から入るべき」と主張しています。
1. Customer Solution:顧客ソリューション
4Cの「顧客ソリューション」とは、顧客にとって製品は「欲求を満たすための問題解決策である」という考え方です。4Pの「製品」に対応しています。
「商品そのものの価値」ではなく、「顧客が商品を使用することによって得られる価値」を重視することが大切だということです。
例えば『手軽に扱える掃除機』なら、吸引力の機能ではなく、簡単に扱えることで得られるメリットや満たされる欲求を考えることが大切なんですね。
レストランであれば、メニューそのものではなく、レストランで食事をすることで得られる満足感を考えることが大切だということです。
2. Customer Cost:顧客コスト
4Cの「顧客コスト」とは、顧客にとって価格は「負担である」という考え方です。4Pの「価格」に対応しています。
「この商品なら、どれくらいのお金を出してもいいか」を、顧客視点で考えることが大切だということです。
顧客コストには、商品を維持するための負担や、廃棄するための負担も存在します。さらに、金銭面の負担だけでなく、その商品の購入までにかかる時間や手間など、心理的な負担も含まれます。
3. Convenience:利便性
4Cの「利便性」とは、顧客にとっては「いかに簡単に商品を手に入れられるかが重要である」という考え方です。4Pの「流通」に対応しています。
例えば、日用品であれば、スーパーやコンビニなどですぐに手に入れられることが利便性が高いですよね。通販であれば申し込みは簡単な方が良いですし、面倒な手続きは極力少ない方が利便性は高くなります。
4. Communication:コミュニケーション
4Cの「コミュニケーション」とは、顧客にとっては「商品の知りたい情報を入手できることが重要である」という考え方です。4Pの「プロモーション」に対応しています。
企業側が届けたいメッセージではなく、顧客が知りたい情報が大切だということです。また、双方向のコミュニケーションを取れるようにして、顧客の声が正確に企業に届くことも大切です。
以上が、4Cの考え方です。
4Cは4Pに取って替わるものではなく、優れた4Pを実現するために「まず先に顧客ありき」であることを、改めて考え直すことに用いるフレームワークです。
まとめ
マーケティングミックスとは、製品・サービスを商品化するにあたって、いろいろなマーケティング要素をまとめたものです。
現在では、
- 製品のための4P
- サービスのための8P
- 顧客視点の4C
に集約できます。
マーケティングでは、全ての要素が一貫していることが大切です。全体をとおして統一感があるマーケティング活動ができるように、一つ一つを分解して確認してみてください。
マーケティングの全体の流れは、次の記事で解説しています。
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