売れる商品・サービスを作るためには、あるいは売れるセールスコピーを書くためには、ニーズ(必要性)ではなくウォンツ(欲求)に訴えることが大切です。
なぜなら、世の中の経済活動のほとんどがウォンツ(欲求)で成り立っているからです。あなたがお金を使うときも、きっとその多くが欲求を満たすための行動ではないでしょうか?
- ニーズ(Needs)とは「必要性」
- ウォンツ(Wants)とは「欲求」
ニーズとウォンツの違いを理解すれば、売れる商品・サービスを作れるようになり、売れるセールスコピーが書けるようになります。
2つの違いについて、しっかりと理解を深めてください。
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ニーズ(Needs)とは
ニーズとウォンツの違いについては、「近代マーケティングの父」と呼ばれるアメリカの経済学者フィリップ・コトラー氏が、次のように定義づけています。
「ニーズ(Needs)とは、人間が生活上必要な、ある充足状況が奪われている状態(欠乏状態)のこと」
つまり、日常生活でどうしても『必要』なものです。
テレビのニュースなどで使われる、「この度、消費者のニーズに応える商品が発売されました・・・」という《要望》の意味とは違うことに注意してください。
マーケティングでのニーズとは、例えば次のようなケースです。
ニーズの例え
- 喉がカラカラ ⇒「飲み水」が必要
- お腹がペコペコ ⇒「食べ物」が必要
- 心地よく寝たい ⇒「布団」が必要
- お尻を清潔にしたい ⇒「トイレットペーパー」が必要
- 移動手段に使いたい ⇒「車」が必要
自ら進んでではなくても、どうしても必要に感じてお金を使った時のことを思い出してみてください。
- 電気代を払いましたか?
- 風邪を治すための治療費を払いましたか?
- 移動のために電車代を払いましたか?
これらがニーズです。
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ウォンツ(Wants)とは
続いてコトラー氏は、ウォンツについては次のように定義づけています。
「ウォンツ(Wants)とは、ニーズを満たすための、特定のモノが欲しいという欲望のこと」
つまり、“欲しい” と感じる『欲求』です。
例えば、つぎのようなケースです。
ウォンツの例え
- 同じ水なら⇒「体に良いミネラルウォーター」が欲しい
- 同じ食べ物なら⇒「好物の美味しいステーキ」が欲しい
- 同じ布団なら⇒「軽くて暖かい羽毛布団」が欲しい
- 同じトイレットペーパーなら ⇒「いい香りと肌触りのやさしいトイレットペーパー」が欲しい
- 同じ車なら⇒「カッコいい高級車」が欲しい
自ら進んで、「欲しい!」と感じてお金を使った時のことを思い出してみてください。
- 趣味の遊びに使いましたか?
- 並んでまでラーメンを食べましたか?
- 数ある商品の中から選んで買い物をしましたか?
これらがウォンツです。
消費者は『必要』という理由だけでモノを買うのではなく、『欲しい』からモノを買います。これを意識しないと、商品づくりやセールスコピーではモノが売れません。
その理由は、次のとおりです。
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ニーズが売りにくい理由とは
ニーズとは、日常生活の上で必要なものです。ですので、必要になったら当然手に入れたいと考えます。ただし、必要なだけのモノであれば、なるべく無駄をはぶいて簡単に(安く)手に入れたいという思いが働きます。
例えとして、生活に必要なトイレットペーパーで考えてみましょう。
ニーズ商品は価格競争に巻き込まれやすい
トイレットペーパーを買う場合、あなたは何を基準にしていますか?「どうしても『必要』だから」という理由なら、まずは最低限の品質を見るのではないでしょうか。
『必要』なだけであれば、必要最低限の品質さえあれば、買うための条件はクリアすることになります。ということは、「安ければ安いほどよい」ことになります。
その結果、特徴のないニーズ商品は、価格競争に巻き込まれやすくなります。
ですので、「お尻を清潔に保つための必需品!」と商品のニーズ(必要性)ばかりに訴えると、『低価格・最低限の品質』以外では売りにくくなります。
欲しくなる特徴があればニーズ商品はウォンツ商品になる
ただし、ニーズの商品に「欲しくなる特徴」を付け加えることで、低価格でなくても売れるようになります。
例えば、特徴のないただのトイレットペーパーの隣りに、別種類のトイレットペーパーが売っているとします。その商品のキャッチコピーには、「新登場!シルクのようなツルすべの肌触り・・・まるでセレブの心地」と書いてあります。
特徴のないトイレットペーパーと、セレブ感を味わえるトイレットペーパーなら、あなたはどちらを『欲しい』と感じますか?
ニーズ(必要性)ではなくウォンツ(欲求)に訴えることで、商品は売れやすくなります。
ウォンツが売りやすい理由とは
ウォンツが売りやすいのは、人は欲求を満たすために生きているからです。
例えば、あなたは腕時計を持っていますか? 仕事に使う時にどうしても必要で、こだわりがないという人であれば、おそらく腕時計は1つだけしか持っていないと思います。
必要なだけだから、というのはニーズです。
もしも、腕時計が好きで服装やTPOに合わせていろいろ変えたいという人であれば、腕時計はいくつも持っていると思います。好きなブランドが新商品を発売したら、チェックをすると思います。
あるいは常に新しい腕時計の情報はないかを、ネットや雑誌で探しているかもしれません。
そして、好みの腕時計を発見したら「かっこいいデザイン、新しい機能、欲しい!」という感情が働くはずです。いくつも持っているのにです。(そして、欲しい感情を正当化するための理由を後から考えます)
欲しいという感情、これがウォンツです。
世の中の経済活動のほとんどがウォンツで回っている
人はウォンツを満たしたいためにモノを買います。一時的にウォンツが満たされたとしても、人の欲はなくなりません。腕時計が好きな人は、腕時計を買い続けます。ゴルフが好きな人は、ゴルフに関する商品を買い続けます。
これが、世の中の経済活動のほとんどがウォンツで回っている理由です。
ですので、欲しいという感情のウォンツに訴えることができれば、商品を売りやすくすることができるんですね。いかに欲しいと思ってもらえるか、いかにウォンツを高めるかが、セールスを楽にしてくれるということです。
ニーズとウォンツの関係性
ニーズとは必要性で、ウォンツとはニーズを満たすための欲求です。ですので商品販売の際には、できるだけ「欲しい!」と感じてもらうためにウォンツに訴えることが大切です。
ですが、商品によってはニーズに訴えることも重要です。
例えば、高級車・高級家具・装飾品・趣向品など、ウォンツ傾向が強い商品です。
「欲しい!」感情だけが先行している場合は、商品を買う際に「・・・でも、これって本当に必要かな?」と考えることがあります。贅沢に感じたり、無駄遣いかもしれないと感じることってありますよね。
ですので、ウォンツ傾向が強い商品については、ニーズについても訴える必要があります。
つまり、ニーズとウォンツの両方がなければ、人は商品の購入を決意しないんですね。
購入に至るまでのお客さんの4つの状態
お客さんが商品・サービスを購入するまでの様子は、ニーズとウォンツを使うと次の4つの状態に分けることができます。
今すぐ客 | ・ニーズ ⇒ 高い ・ウォンツ ⇒ 高い | 今すぐに商品が必要だし欲しい! |
お悩み客 | ・ニーズ ⇒ 高い ・ウォンツ ⇒ 低い | 商品の必要性は感じているけど、欲しいとは思わない |
そのうち客 | ・ニーズ ⇒ 低い ・ウォンツ ⇒ 高い | 商品の魅力は感じているけど、今すぐ必要ではない |
まだまだ客 | ・ニーズ ⇒ 低い ・ウォンツ ⇒ 低い | 商品に関心はあるけど、欲しいとは思わないし、今すぐ必要でもない |
全てのお客さんを「今すぐ客」に変えることができれば、商品・サービスが売れやすくなるということですね。
ニーズとウォンツを考える時の注意点
ニーズとウォンツについて考えると、「何がニーズで、何がウォンツか?」を必要以上に考えてしまうことがあります。
例えば『健康食品』という商品は、“病気にならないために必要な” ニーズ商品なのか、“健康で楽しく生活したい” ウォンツ商品なのかを考えることです。
マーケティングやコピーライティングを考える際には、どちらがニーズでどちらがウォンツかを厳密に使い分ける必要はありません。大切なのは、「今すぐ必要だし欲しい!」という感情を引き出すためには何が重要かを考えることです。
ウォンツに訴えてコピーをつくってみる
例えば、定食屋さんが『さんま定食』のメニューを紹介するとします。
「なんでもいいから、とにかくお腹を満たしたい」というのはニーズです。「お腹が減ってきたけど、何か美味しいものが食べたい」という欲求がウォンツです。
ですので、
と、ただ食欲を満たすニーズに訴えても、あまり魅力的なコピーとは言えません。
それよりも、
と、ウォンツを満たすためのコピーの方が魅力的になります。
まとめ
ニーズとは「どうしても必要なもの」、ウォンツとは「欲しいと感じる欲求」です。人は『必要』だからモノを買うのではなく、『欲しい』からモノを買います。
ですので、商品づくりやコピーを考える際には「ニーズではなくウォンツに訴える」ことを常に考えるようにしてみてください。
ただし、いくらウォンツがあったとしても、ニーズがなければモノは売れません。ニーズとウォンツの両方があってこそ商品は売れます。
ウォンツを高めるためには、人間にはどんな欲求があるのかを知っておくと分かりやすくなります。
Next⇒「マズローの欲求5段階説とは?ストーリーでわかりやすく解説」
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