人を説得するには、重要な3つの要素があります。この3つの要素は、2300年以上も昔に書かれた古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『弁論術』に登場します。
“万学の祖” と呼ばれるアリストテレスが説いた説得の三要素とは、エートス・パトス・ロゴスです。
この記事では、プレゼンテーション・スピーチ・営業トーク・コピーライティングなど、自分の主張を相手に通したい時に必要になる、説得の原点とも言える「3要素」について解説します。
あなたのプレゼンスキルのレベルアップに役立ててください。
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アリストテレスの弁論術とは
弁論術とは、現代でいうところのプレゼンテーションやスピーチの技術にあたります。
古代ギリシアの哲学者プラトンは、「弁論術とは、経験による慣れにすぎない」という考え方を持っていました。
この考え方に対して、プラトンの弟子だったアリストテレスは、
「弁論術とは、どんな場合でも、そのそれぞれについて可能な説得の方法を見つけ出す能力」
と定義しました。
慣れによって習得されるとされていた弁論術を、成功のための要因を見つけ出して、技術として説得術にまとめ上げられたものが、アリストテレスの『弁論術』です。
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説得の3要素
アリストテレスは、聴衆を説得するには次の3つの要素が重要であるとしています。
- エートス(話し手の人柄)
- パトス(聞き手の感情)
- ロゴス(言論そのものの論理)
ひとつずつ、解説していきます。
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エートス(話し手の人柄)
エートスとは、古代ギリシア語で「いつもの場所」を意味し、転じて「習慣・特性」などを意味します。英語のエティクス(ethics=倫理)の語源とされています。
アリストテレスの『弁論術』では、「人間性」の意味で使われます。説得では、話し手の人間性が重要であるということです。
エートスには、3つのカテゴリーがあるとしています。
- フロネーシス:深い知性
- アレテー:徳・美徳
- エウノイアー:聞き手からの好意
つまり説得では、話し手の好感度や信頼性が重要だということですね。
説得でエートス(話し手の人柄)が重要な例え
例えば、あなたがある人物から、“3年後に絶対儲かるらしい株” を勧められたとします。
もしもその人物が、株やビジネスについては素人並みの知識だったとしたら、あなたはその話を信用することができないのではないでしょうか?
なぜなら、「フロネーシス:深い知性」が足りないからですよね。
また、その人物がいつも嘘をついているような人だったり、どこの誰ともわからないような人物の場合は、簡単には信用できないはずです。「アレテー:徳・美徳」が足りないからですね。
あるいは、あなたがその人物を嫌いだったとしたら、やっぱりその話に乗ることはないと思います。「エウノイアー:聞き手からの好意」が足りないからです。
反対に、普段から立派な行いをする人物や魅力的な人物であれば、たとえ株に詳しくなくても話に乗る可能性がありますよね。
ですので説得は、好感を持ってもらえるような身なりや話し方、なにより魅力的な人物であることが大切なんですね。
「何を話すか?」よりも「誰が話すか?」が重要だということです。
聞き手に好感を持ってもらうためには、ハロー効果やノンバーバルコミュニケーションの知識を持っておくと役に立ちます。
パトス(聞き手の感情)
パトスとは、「欲情・怒り・恐怖・喜び・憎しみ」などの快楽や苦痛を伴う一時的な感情を意味します。英語のパッション(Passion=情熱)の語源とされています。
説得では、聞き手の感情を誘導することが重要だということです。
なぜなら、人間は感情で行動する生き物だからです。感情が動かなければ行動には至りません。
説得でパトス(聞き手の感情)が重要な例え
例えば、次のどちらかをもらえるとしたら、あなたはどちらを選びますか?
- 1万円が50%の確率でもらえるクジ
- 5000円が100%もらえる権利
多くの人は「5000円が100%もらえる権利」を選びます。その理由は、たとえ1万円をもらえる可能性があっても、50%の “もらえないリスク” は負いたくないと感じるからです。
つまり、「5000円を確実に欲しい!」「もらえるチャンスを逃したくない!」という感情が生まれるんですね。
もしもあなたに感情がなければ、「どちらでも良い」という結論がすぐに出るはずです。なぜなら、期待値はどちらも同じ5000円だからです。
感情が生まれなければ、どちらも選べないことになるんですね。
脳科学の分野では、感情と関連が深い眼窩前頭皮質を損傷した患者は、論理・知覚・記憶・学習などの知的能力が正常でも、適切な行動の決定ができなくなる事例があります。
「楽しい!悲しい!嫌い!怖い!」といった感情は、説得内容を判断するためにも重要な存在なんですね。
感情は欲求によって生まれます。ですので、聞き手の感情を誘導するためには、感情の種類や欲求の種類を知っておくと役に立ちます。
ロゴス(言論そのものの論理)
ロゴスとは、「言葉・論理」といった意味があります。英語のロジカル(logical=論理)の語源とされています。
説得では、論理的に証明することが重要だということです。
たとえ情熱的に訴えたとしても、なんの脈略もなく突然、「AならばZだ」といった結論だけを話しても、相手を納得させることはできないんですね。
聞き手を説得するためには、
- 演繹法:「AならばBだ」⇒「ZならばBだ」⇒「だから、AならばZだ」
- 帰納法:「BはZだ」⇒「CもZだ」⇒「だから、AならばZだ」
というような、原因と結果を論理的に説明する必要があります。
例えば、あなたがセールスパーソンで、商品を紹介するのであれば
- なぜこの商品は必要なのか?
- この商品はどう役立つのか?
- この商品が役に立つ仕組みは何か?
といったことを、順序立てて証明することが重要なんですね。
会話を論理的にするもっとも簡単な方法は、何かを主張したら、その主張に至った理由をすぐに付け加えることです。5W1Hを意識して客観性のある理由を漏れなくダブりなく話せば、より論理的になります。
エートス・パトス・ロゴスの重要な順番は?
アリストテレスが説いた説得の3要素「エートス・パトス・ロゴス」には、重要度の違いはあるのでしょうか?
自己啓発で有名なスティーブン・R・コヴィー氏の著書『7つの習慣-成功には原則があった!』によると、「エートス > パトス > ロゴス」の順番が大切だとしています。
まずは話し手の人格ありきで、次に聞き手との人間関係があり、最後に話し手の言いたいことを表現することが大切なんですね。
僕たちは、ついつい自分の言いたいことを先に言って、論理(ロゴス)で相手を納得させようとしてしまいがちです。ですが、それでは相手は受け入れてくれないんですね。
まずは相手に、「この人は信頼(エートス)できそうだ」と思ってもらうことが大切です。そして、相手の感情(パトス)に配慮して話を進めます。
エートスとパトスが整ってこそ、ロゴスで納得してもらえるということです。
アリストテレスの弁論術を学べる本
アリストテレスの『弁論術』を深く知りたくなった場合は、こちらの書籍をオススメします。
普通の書籍を読むのとは違ったコツが必要になりますが、慣れてくれば、たとえ哲学の素人だったとしてもグイグイ読み進めることができるようになります。
プレゼンや主張の仕方がわかって、知的にもなれる贅沢な一冊です。
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まとめ
“万学の祖” と呼ばれる哲学者アリストテレスは『弁論術』の中で、説得に重要な3要素として「エートス・パトス・ロゴス」をあげました。
- エートス:信頼に足る人柄が大切
- パトス:聴衆の感情を誘導することが大切
- ロゴス:話の論理が大切
2300年以上も昔に提唱された言葉が現代でも通じるなんて、人の心理の不変性と、アリストテレスのすごさを感じますね。
あなたが相手を説得する際には、「エートス > パトス > ロゴス」の重要度を意識して、話を進めるようにしてみてください。
さらに説得力を高める方法を知りたい場合は、こちらを参考にしてください。
⇒ 説得力を高める16の秘訣|心理テクニックでYESを引き出す方法
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