顧客心理を掴む心理学

アンダードッグ効果とは?同情の心理を恋愛・ビジネスに使う方法

2017-01-30

アンダードッグ効果

弱い立場にある人や、不利な状況に追い込まれている人を応援したくなる心理現象を、心理学では「アンダードッグ効果」と言います。

アンダードッグ(Underdog)には、「(試合などに)負けそうな人」という意味があります。

不利な状況の人を見て「がんばれ!」と応援したくなる心理は、きっと誰もが経験していますよね。

このアンダードッグ効果は政治で使われ始めた心理学用語ですが、人づき合いや恋愛の場面では、“弱い一面を見せることで好意を持ってもらう” テクニックとして使われています。

人づき合いにおいては、自分の弱い部分をさらけ出すことは勇気が必要ですし、仲良くなるためには大切な要素でもあります。

ですが、マーケティングの場合はどうでしょうか? “同情を誘う” テクニックとしてはおすすめしませんが、使い方によっては有効な場合もあります。

アンダードッグ効果の恋愛やマーケティングでの使い方について、確認してみてください。

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アンダードッグ効果とは

アンダードッグ効果(Underdog effect)とは、選挙前の勝敗予測で、不利であると報じられた候補者に対して多くの同情票が集まり、逆転勝利へとつながる現象を言います。

転じて、弱い立場や不利な状況の人を応援したくなる心理を指します。「判官びいき効果」「負け犬効果」とも呼ばれます。

アンダードッグ効果は、「川に落ちたかわいそうな犬は助けられる」という逸話に由来します。つまり、“かわいそうな犬を助けてあげたくなる” という同情の心理効果です。

ちなみに政治の世界では、アンダードッグ効果とは反対を意味する「バンドワゴン効果」という心理効果があります。

アンダードッグ効果と逆のバンドワゴン効果

アンダードッグ効果とは反対に、「どうせ投票するなら、勝ちそうな候補者に投票しよう」と、人気がある候補者に投票する心理をバンドワゴン効果(勝ち馬効果)と言います。

選挙前の勝敗予測で「有利である」と報じられることで、ますます票が集まる現象です。

選挙の予測報道にこのような影響があることは、1940年代アメリカの世論調査データの分析で発見されました。

報道の影響によって結果が左右されるアンダードッグ効果(負け犬効果)と、バンドワゴン効果(勝ち馬効果)は、総称して「アナウンスメント効果」と呼ばれます。

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一般的なアンダードッグ効果の例

アンダードッグ効果の心理は、日常の多くの場面でも目にすることができます。

例えば、大相撲で小さな力士が現れると、思わず応援したくなりませんか? 周りの大きな力士たちの中で奮闘する姿を見ると、「大きい力士に負けるな!」とついつい感情移入してしまいますよね。

このような気持ちは、“小さな島国” という意識がある日本人には多いのかもしれません。

ずいぶん昔のことになりましたが、2000年のシドニーオリンピックでは、競泳男子100m自由形予選で、ギニアのエリック・ムサンバニ選手の姿が感動を呼びました。覚えている人も多いのではないでしょうか。

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アンダードッグ効果の実験例

ハーバード大学の実験では、2つの架空会社を181人の学生に紹介して「どちらの商品を買いたいか?」と尋ねました。

  • A社:情熱を持っているのに業績が悪い会社
  • B社:なんの経営努力もしていないのに業績が良い会社

参照図書:[図解] 心理戦で必ず勝てる人たらし魔術

実験結果は、A社の商品を選ぶ学生の方が多い結果になりました。

余裕で勝つ強者よりも負けてばかりの弱者を応援しようとするのは、人が集団生活のなかで培ってきた「弱い者=赤ちゃん」を守りたいと思う、本能の表れなのかもしれません。

アンダードッグ効果の恋愛・人付き合いの使い方

“同情の心理” のアンダードッグ効果は、恋愛や人付き合いに応用することができます。

その方法は、仲良くなりたい相手に対して、自分の「ダメな一面」を見せるようにします。同情の心理が働けば、あなたに対して親近感を抱いてくれたり、「守ってあげたい」と感じてくれるようになります。

例えば、「料理をがんばってるんだけど、なかなかうまくできない・・・」「前に大切な人に裏切られたことがあって、簡単に心を開けない・・・」といった自分の弱さについてです。

ただし、いつも自分を弱く見せようとすると、相手から「コイツはかまってちゃんか?」と思われてしまいかねませんので、基本姿勢は前向きでいることが大切です。

“頑張ろうとしているけど、なかなかできない”

の姿勢ですね。

このアンダードッグ効果は、一般的には女性が男性に使うテクニックとして広まっていますが、男性が女性に使うことだってできます。

男性が女性に使う場合は、いつもは強気な姿勢でいるけど「弱い一面もある」というギャップが効果的です。

例えば、普段は女性をグイグイとリードしているのに、「お化け屋敷だけは苦手」とか「犬だけは怖い」といった弱い一面です。こちらは “同情の心理” というよりも、可愛らしさを感じる心理ですね。

弱さを見せると仲良くなるのは返報性の原理

弱い自分をさらけ出すことで親近感を抱くのは、「自己開示の返報性」も関係しています。自己開示の返報性とは、こちらが自己開示をしたら、相手も同じ程度の自己開示をしてくれるという人間の心理です。

自分の弱い部分というのは、基本的には人には晒したくないものです。それを特別に晒すんですから、打ち明けられた相手には特別感が芽生えるんですね。

そして、相手も同じ程度の「弱い自分」を打ち明ければ、お互いに秘密を共有したような気分になって、親近感が芽生えるわけです。

ですので、アンダードッグ効果を使うコツとしては、いつもは明るく元気なんだけど、「あなたの前だけは、弱い自分、本当の自分を見せられる」という、相手に対する特別感の姿勢を見せることが効果的です。これは男女問わず有効です。

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アンダードッグ効果のマーケティングでの使い方

アンダードッグ効果を単純にマーケティングに応用するなら、「弱い一面」や「負け顔」を見せて、同情を誘うことで消費者に買ってもらうようにすることができます。

例えばコピーライティングで、

「発注ミスしてしまいました、かみさんに怒られてしまいます!50%割引きしますので、どうか買ってください!」

と同情を誘うことができます。

この負け顔を見せるテクニックは、「地域の商店型」のマーケティングに向いています。

マーケティングの3タイプ

マーケティングは、おおよそ

  • 量販店型
  • 高級店型
  • 地域の商店型

の3タイプのいずれかで進めます。

量販店型とは、大量の品揃えを低価格で提供する、大企業に向いているマーケティングです。高級店型とは、こだわりのある商品を高価格で提供する、ブランド力の高い企業が行うマーケティングです。

そして地域の商店型とは、消費者の要望に柔軟に対応しながら販売を行うマーケティングです。

アンダードッグ効果は地域の商店型のマーケティングに向いている

同情を誘うようなコピーライティングは、地域の商店型のマーケティングで、普段から消費者とコミュニケーションを取っているからこそ成立する手法です。だからこそ、「しょうがないなぁ、今回は助けてやるか・・・」と、応援してもらうことができます。

ですので、初対面のお客さんに同情を求めた場合は、「知らんがな」って思われてしまうことになります。

あなたもきっと、突然やってきた見知らぬ訪問販売員に「今ちょっと困ってまして、どれでも安くしますから買ってください!」と言われたって、戸惑ってしまいますよね。

多くの個人ビジネスや中小企業では、地域の商店型のマーケティングが向いています。ですので、もしもアンダードッグ効果を使うなら、普段からコミュニケーションを取っておくことが大切です。

高級店型がアンダードッグ効果を使う場合

グッチやプラダのような高級店は、ある種の威厳があってこそ成り立ちます。そのため、「作りすぎてしまいました!」なんて広告を作ったとしたら、ブランド力は一気に地に落ちてしまいかねません。

ですので、もしも高級店型がアンダードッグ効果を使う場合は、「負け顔を見せる」のではなく、「顧客に寄り添う」ようなイメージにすることが大切です。

量販店型がアンダードッグ効果を使う場合

量販店型が負け顔を見せる場合は、あるキャラクターを作って、そのキャラクターが負け顔を見せるという方法が考えられます。

例えば、ソフトバンクの犬のお父さんが負け顔を見せたとしても、なんだか愛嬌があるような感じがしますよね。

アンダードッグ効果の本当の使い方

コピーライティングのテクニックとしては「負け顔を見せる」でしたが、アンダードッグ効果がもっとも効果を発揮するのは、「一生懸命さ」が伝わった時です。

なぜなら、テクニックで同情を誘う演出をしたとしても、なんだか見え透いたものになってしまうからです。ですが、一生懸命さ、真剣さが伝わるようなコピーを書ければ、消費者は応援してくれるようになります。

恋愛でも同じです。「いつもがんばっている」からこそ、弱い一面を見ることで相手は手を差し伸べたくなるわけです。

すでにおわかりのとおり、小兵の力士や水泳選手は、ただ弱い立場だから応援されたわけではないんですよね。「一生懸命さ」が伝わるからこそ、応援したくなるんですよね。

ですのでアンダードッグ効果を恋愛やマーケティングに応用するなら、「いつも一生懸命がんばっている」ことが大切なんですね。

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まとめ

アンダードッグ効果とは、弱い立場や不利な状況の人を応援したくなる心理傾向のことです。

恋愛に使うには、自分のダメな一面を見せたり、打ち明けたりすることで、親近感を抱いてもらうことができます。

マーケティングで使うには、弱い一面を見せて「同情を誘う」という方法があります。そのためは、地域の商店型のマーケティングで、普段からお客さんとコミュニケーションを取っておくことが大切です。

ですがそれよりも大切なのは、「一生懸命さ」が伝わることです。

アンダードッグ効果を使う場合は、どうすれば相手に一生懸命さが伝わるのかを考えてみてください。

さらに心理学をマーケティングに応用する方法は、こちらを参考にしてください。

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高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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