マーケティング術

USPとは?ライバルを引き離すマーケティングコンセプトのつくり方

2015-09-27

USP とは

マーケティングに関する有名な用語にUSP(Unique Selling Proposition)があります。日本語では「独自の販売提案」と訳されます。

もしも、あなたのビジネスにUSPがないのであれば、ライバルたちに埋もれてしまい、お客さんがあなたを見つけられないかもしれません。

あなたの会社や商品が、競合他社よりもはるかに優位なポジションに位置するためには、USPとは何かを理解して、正しいマーケティングを行うことが大切です。

この記事では、

  • USPとは何か?
  • USPを見つける重要な3つのポイント
  • USPメッセージのつくり方

について解説します。競合との差別化を図るヒントに役立ててください。

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マーケティングで扱うUSPとは

USPとは、ユニーク・セリング・プロポジション(Unique Selling Proposition)の頭文字をとった略語で、競合他社の多い市場で自分のビジネスを魅力的にするためのコンセプトメッセージのことです。

USPとは

  • U(ユニーク):独特の
  • S(セリング):売り込み
  • P(プロポジション):提案

一般的には “独自のウリ” と言われますが、わかりやすく言い換えるなら「自分だけが約束できる魅力的な価値の提案」です。

お客さんが商品・サービスを選ぶ理由になるものであり、ビジネスや商品の「テーマ」を語るマーケティングのコンセプトになるものです。

USPは、価格・機能面・サービス内容・顧客層など、どんな分野にも及びます。

USPをまとめたロッサー・リーブス氏

USPは、アメリカの広告の巨匠ロッサー・リーブス(Rosser Reeves)氏が提唱した概念です。1940年代に成功した広告キャンペーンを調べた結果、ある共通点を発見し、その共通点をまとめたものがUSPです。

1961年に刊行された著書『USP ユニーク・セリング・プロポジション』では、次のような定義づけがされています。

USPの3つの定義

  1. 広告はすべて、消費者に対して提案(プロポジション)をしなければならない。
  2. その提案は、競争相手が示せない、あるいは示さないものでなければならない。それは独自(ユニーク)でなければならない。
  3. その提案は、数百万の人々を動かせるほど強力でなければならない。

USPが提唱された1950〜1960年代は「マーケティング1.0」と呼ばれる年代で、マス市場に向けた製品が多かった年代でした。

そのため、CMや新聞で宣伝することを想定して「数百万の人々を動かせるほど〜」という、マス市場を想定した定義がされています。

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USPはなぜ必要?

USPはなぜ必要なのでしょうか?

例えば、あなたがラーメン店を営んでいるとします。

街にあるラーメン屋さんがあなたのお店しかなかった場合は、USPを作る必要はありません。なぜなら、街の人がラーメンを食べたくなった時には、あなたのお店に行くしか方法がないからですね。

街にもう一軒、ラーメン屋のB店ができたとします。どちらのラーメン店でも同じような味を楽しめるとしたら、B店に近い人はB店へと流れます。さらにC店、D店、E店ができたなら・・・。お客さんの数はどんどん少なくなってしまいます。

あなたはどうやって、お客さんの数を増やしますか?

例えば、料金を安くしたとしましょう。

この時点では、「一番安い店」というメッセージはUSPであると言えます。

ですが、ただ料金を安くしただけでは、他のお店もすぐに価格を下げ始めます。そうすると、どんどん価格は安くなり、価格競争に巻き込まれてしまいます。

あなたのお店に選ばれる理由がなければ、お客さんを取り戻すことは非常に難しくなりますよね。そこで、あなたのお店ならではのUSPが必要になってくるわけです。

最も有名なドミノ・ピザのUSP

最も有名なUSPの例に、ドミノ・ピザがあります。

「アツアツのピザを30分以内にお届け。遅れたら代金はいただきません」

当時の宅配ピザは、お客さんに届く頃には冷めていることが当たり前でした。そこで、ドミノ・ピザはどこよりも先に「アツアツのピザを届ける」という宣言をしました。

アツアツのピザを運ぶことは、競合他社でも不可能ではありませんでした。ですが、「遅れたら代金はいただきません」という決意表明のインパクトがお客さんを捉えました。

ドミノ・ピザはこのUSPを掲げたことによって、「ピザと言えば?」の問いに 82%の人が「ドミノ・ピザ」と答えるほど、ピザ業界での急成長を遂げることに成功しました。

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USPとキャッチコピーは同じ?

他にも有名なUSPを見てみると、「USPって、キャッチコピーのこと?」という疑問が浮かぶのではないでしょうか?

  • お口でとけて口でとけない/M&M’S
  • 絶対に、確実に、一晩で/フェデックス
  • 吸引力が変わらない、ただ一つの掃除機/ダイソン
  • 世界で最も高価なヘア・カラー/ロレアル
  • うまい、やすい、はやい/吉野家
  • 10分の身だしなみ/QBハウス
  • お、ねだん以上。/ニトリ

実際、USPとキャッチコピーは同じ場合があります。ただし、2つには位置付けの違いがあります。

USPとキャッチコピーの違い

  • USP:商品・サービスのコンセプトを表現したメッセージ
  • キャッチコピー:USPを踏襲して表現したコピー

この違いからわかるとおり、キャッチコピーとは「商品・サービスのコンセプトを、より鋭い言葉で表現したメッセージ」という位置付けになります。

逆に言えば、キャッチコピーは商品・サービスのコンセプトを逸脱してはいけないということですね。

USPを見つけるために重要な3つのポイント

USPを見つけるためには、次の3つのポイントから考えます。

USPを見つける3つのポイント

  1. 競合他社が発していないもの
  2. 自社の強みを活かすもの
  3. お客さんにとって魅力的なもの

1. 競合他社が発していないもの

USPとは、業界内で一番最初に発する必要があります。

たとえ業界内では当たり前のようなことだったとしても、競合がメッセージにしていないのであれば、一番目に発することでユニーク(独自)なものとなります。

「競合他社にはマネできない」ことも大切ですが、「競合他社が発していない」ことが大切です。

先ほどのドミノピザの例でいうと、アツアツのピザを届けることは競合他社でもできました。ですが、ドミノピザが最初に宣言したことで、ユニークなものになりました。

2. 自社の強みを活かすもの

USPは、自社の強みを活かすことが大切です。

USPをユニークなものにしようとして、自社にはできないような難しいことをメッセージにしても大変なだけです。自社が得意としていることから見つけることが、最も簡単な方法です。

また、自社の強みを活かすということは、顧客を絞ることでもあります。全ての人にとって魅力的なUSPはありません。

先ほどのドミノピザの例でいうと、「おいしい」とはひとことも言っていません。つまり、食材にこだわりを持つ人や、美味しさを一番に求めるお客さんは捨てたということです。

3. お客さんにとって魅力的なもの

USPは、お客さんにとって魅力的なものでなければ意味がありません。

USPを見つけるにあたって、最も重要な部分です。

いくら自分の得意なことをユニークなメッセージにしたところで、お客さんが欲しいと感じないUSPだったとしたら何の意味もないということです。ユニークにとらわれすぎて「お客さんが見えていない」ということがないように、気をつける必要があります。

先ほどのドミノピザの例でいうと、

  • 「アツアツのピザが食べられる」
  • 「30分以内に届かなければ無料」

という、お客さんにとって強烈な魅力がありました。

USPを見つける8つのアプローチ

具体的にUSPを見つける方法として、全米No.1のコンサルタントと言われるジェイ・エイブラハム氏の著書『ハイパワー・マーケティング』より抜粋して紹介します。

あなたのUSPを見つける参考にしてみてください。

  1. 広い選択肢
  2. 的確なアドバイスや補助
  3. 利便性(ロケーション・豊富な在庫数・配達の早さ)
  4. 最高級の製品(サービス)
  5. 迅速なサービス
  6. 特別な各種サービス
  7. 長期的な保証
  8. その他、ライバルには提供できていない特別な点、価値のある特典など

先ほどのラーメン店の例で考えるなら、

  1. できるだけたくさんの種類のラーメンやトッピングを用意する
  2. 「こんな人にはこのトッピング!」と、おすすめトッピングの例を用意する
  3. 女性が一人でも入りやすいようにする
  4. 3,000円の高級ラーメンを用意する
  5. 注文して1分以内に提供するようにする
  6. 会員システムを取り入れ、常連しか食べられない特別なメニューを用意する
  7. 会員になれば永久的に割引サービスを受けられるようにする
  8. 24時間営業にする

といったことが、アイデアとして考えられるでしょうか。

ただし、想定する理想のお客さん(ペルソナ)にとって魅力的ではなかったり、競合他社が同じようなことをしていたら考え直す必要があります。

USPメッセージの作り方

あなたのビジネスのUSPを発見して、メッセージにする方法を紹介します。

USPは簡単にできるものではありませんが、USPがあればすごく大きな力になります。ぜひ、時間をかけて、じっくりと取り組んでみてください。

USPをつくるステップ

  1. たくさんのカードを用意して「お客さんがまだ満たされていない欲求」と「自社にできること」のアイデアを書いていく
  2. たくさんのアイデアを出したら「お客さんにとって重要な順番」と「自社にできる簡単な順番」に並べていく
  3. お客さんにとって重要であり、かつ自社とライバルとを一番差別化できるものを組み合わせる
  4. 「誰にとって」「どんな特徴があって」「どんな得があるのか」がわかるように文章にする
  5. できるだけ簡潔に、わかりやすい言葉にまとめる

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マーケティングで扱うUSPの注意点

USPは、「一度作れば未来永劫使えるもの」ではありません。時代の変化や競合他社の動向によって、USPにも変化が必要です。

なぜなら、USPはおもに機能的な価値をメッセージにするので、競合他社にマネされやすい側面を持っているからです。

例えば「一番安い店」というUSPは、マネされやすいですよね。

ドミノピザのUSPにしたって、現在は「遅れたら代金はいただきません」というメッセージは発していません。ですので、あなたのビジネスの成長と共に、USPにも変更を加えることが大切なんですね。

USPよりも重要なESP・UVP

現在では、USPよりもESPが、ESPよりもUVPが重視される傾向があります。

  • ESP:感情的価値の提案
  • UVP:精神的価値の提案

ESPやUVPは、時代の進化によってUSPが変化した概念です。

ESP(Emotional Selling Proposition)とは

ESPとは、感情的な価値の提案のことです。

商品・サービスの持つ機能的な価値を中心に提案するUSPに対して、ESPはおもに感情的な価値を訴えます。

例えば、「100種類のトッピングと麺の硬さを選べるラーメン屋」という機能面をアピールするUSPに対して、「自分好みにカスタムできる自由を楽しむラーメン屋」という感情面をアピールすることがESPです。

UVP(Unique Value Proposition)とは

UVPとは、精神的な価値の提案のことです。

機能的価値をアピールするUSPや、感情的価値をアピールするESPに対して、UVPはおもに精神的な価値を訴えます。

例えば、「自分好みにカスタムできる自由を楽しむラーメン屋」というESPに対して、「自由こそが美味しさの原点」といった信念・価値観をアピールすることがUVPです。

ESP・UVPが重要な理由

例えを見てもらえばわかるとおり、USPとはセールスの際によく使われるメッセージです。一方でUVPは、おもにブランディングで使われるメッセージです。

商品・サービスに色々なバリエーションが出揃っている現代の日本では、機能的な価値の提案だけでは注目されにくくなっています。さらに機能的な価値は、競合他社にマネされやすい側面があります。

一方で、信念や価値観のアピールは、競合他社にマネされにくい側面があります。

信念や価値観のアピールがマネされにくい理由は「ポジショニング戦略|マーケティングで重要な差別化と独自化の方法」の記事で解説しています。

ですので、USPよりもマネされにくいESP(感情的価値)やUVP(精神的価値)をアピールすることが重視される傾向にあるんですね。

ただし、ESPやUVPは、機能的な価値があることが大前提です。セールスのためのメッセージを考えるなら、まずはUSPを作ることから始めてみてください。

▼売る商品より大事なもの▼ウェブセールスライティング習得ハンドブックcp-b

まとめ

USPとは、ライバルがまだ満たしていない、あなただけが約束できる価値の提案です。

ライバルが存在しないビジネスであれば、USPを考える必要はありません。

ですが、ライバルがいるのであれば「競合他社が発していない、自社の強みを活かした、お客さんにとって魅力的なもの」は何か? という3つの問いからUSPを考えてみてください。

また、ブランディングを構築する際には、USPとともにESPやUVPを考えることが大切です。ベネフィットやお客さんの欲求を考えて、差別化を図るメッセージを作るようにしてみてください。

追伸

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  • この記事を書いた人

高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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