シズル感とは、一般的に “ヨダレが垂れるような、よりおいしそうに感じる表現” として広まっています。おもに広告業界で、購買意欲を高めるために使われます。
例えば、ハンバーグの写真をより美味しく見せるために、次のような会話が交わされます。
- 「この写真、湯気を足してシズル感を出せないかな?」
- 「いいね〜この照り、シズル感が出てるよ!」
ただし、シズル感の本来の意味で言えば、お客さんが商品を買う理由になるものを表現した言葉であって、食べ物だけに使うものではありません。
例えば高級車で言えば、速い速度で走行する「スピード感」や、鏡のように「ピカピカに光ったボディ」、重厚な「革張りのシート」などが、シズル感としてあげられます。
この記事では、シズル感の本質、五感に訴えるシズル感の使い方、コピーライティングでの使い方についてお話しします。
シズル感を適切に表現して、お客さんの購買意欲を刺激するために役立ててください。
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シズル感とは
『シズル感』という言葉は、20世紀半ばに活躍した営業講師でありコンサルタントであるエルマー・ホイラー(Elmer Wheeler)氏が考えた造語です。
シズル感は、肉を焼く時の「ジュー」という音が、英語の擬音語で「シズル(sizzle)」と聞こえることに由来します。
肉がジュージューと焼けて香ばしい香りが鼻孔をくすぐり、肉汁がしたたり落ちるのを見て、食欲がそそる様子を表しています。
シズル感が広まった「ホイラーの5つの公式」
ホイラー氏は、10万5000ものセールスコピーを分析して1900万人に実験した結果、“多くの人が商品を買うには決まったフレーズがある” ことを発見し、その法則を「ホイラーの5つの公式」としてまとめました。
「ホイラーの5つの公式」は、1937年に刊行された著書『Tested Sentences That Sell』(日本語訳:ステーキを売るなシズルを売れ!)で紹介され、『シズル感』という言葉は、ホイラーの5つの公式の第一条に登場したことで広まりました。
ホイラーの5つの公式
- 第一条:ステーキを売るな、シズルを売れ!
- 第二条:手紙を書くな、電報を打て!
- 第三条:花を添えて言え!
- 第四条:もしもと聞くな、どちらと聞け!
- 第五条:吠え声に気をつけろ!
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「ステーキを売るなシズルを売れ!」の意味
ホイラー氏は「ステーキを売るなシズルを売れ!」について、
「ステーキは肉の質や価格で売れるのではなく、肉が焼ける時の音や匂いが食欲を刺激するから売れる。だから、商品そのものを売ろうとするのではなく、お客さんが買いたくなる理由(シズル)を売り込め」
ということを言っています。
この言葉から、広告ではおもに食品を販売する際に、「おいしそうに見えること(五感を刺激するような臨場感を表現すること)が大切」という意味で使われるようになりました。
その他にも、「艶っぽさ・瑞々しさ」を表す意味としても使われています。
シズル感の本質はベネフィット
ただし、ホイラー氏の言うシズル感の本質は、「お客さんの視点になってベネフィットを発見すること」です。ベネフィットとは、商品を買うことで得られる満足感・期待感のことです。
大切なのは、売り手側から見た「商品のこだわり」ではなく、お客さん側から見た「商品を買いたくなる理由」を探り出すことなんですね。そのためには、お客さんの目で自分の商品を見る能力が必要になります。
そして広告では、「お客さんが商品を買いたくなる理由(シズル)にスポットを当てろ」ということを言っています。
例えば、あるノートパソコンを欲しくなる理由が処理速度の速さだとしたら、処理速度にスポットを当てた広告を作るということです。
「処理速度の速さ」がシズルだということですね。
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五感で「臨場感」を演出するシズル感の演出方法
商品を販売する際には、商品のセールスポイントになるシズル感をリアルに感じてもらうことが大切です。
そのセールスポイントを表現するためには、五感に訴えて、まるで目の前の出来事のような「臨場感」を演出します。
嗅覚に訴えるシズル感
良い香りのする商品は、嗅覚のシズル感に訴えると強烈なアピール力があります。なぜなら、嗅覚だけが他の感覚よりもはるかに速いスピードで、ダイレクトに脳を刺激するからです。
例えば街中を歩いている時に、カレーの香りを嗅いだだけで、カレーに意識を持って行かれたことはありませんか? カレーを食べようなんて考えていなくても、カレーのスパイシーな香りに誘われると、思わずカレー屋さんに入りたくなってしまいますよね。
うなぎの蒲焼や焼肉など、食欲を刺激するいい香りのする商品の場合は、香りというシズル感をアピールすることで、商品を売りやすくすることができます。
そのために、お店の前に換気扇を作って、わざと匂いを外に出すようにしていますよね。
食品以外でも、シャンプーや香水などの良い香りがする商品は、サンプルを用意することでお客さんの嗅覚を刺激できます。
広告では嗅覚を刺激することは難しいですが、視覚や言葉を使った表現と組み合わせることで、間接的にシズル感を伝えることができます。
聴覚に訴えるシズル感
音で感じるシズル感とは、ステーキを焼く時の「ジュージュー」という音ですよね。あの音が「美味しそう!」に聞こえるからこそ、食欲がそそられます。
天ぷらを揚げるときの「パチパチ」という音だって、サクサクした衣を想像させる音ですよね。車で言えば、エンジン音がシズル感になり得ます。一眼レフカメラで言えば、重厚な「カシャ」というシャッター音も、カメラが好きな人にとってはシズル感だと言えます。
また、商品そのもののシズル感だけではなく、もう少し範囲を広げて聴覚に訴えることもできます。
例えば、夏物の商品を展示する際には、セミの鳴き声や夏祭りの音を店内に流すことでシズル感を演出できます。風流な空間を演出したければ、ししおどしや風鈴の音を流すことでも訴えることができます。
広告で聴覚のシズル感を訴えるためには、音声や動画で見せることが有効ですね。
触覚に訴えるシズル感
つるつる、サラサラなど肌触りの良さがウリの商品は、店頭などで実際にお客さんに商品を触ってもらうことで、触覚のシズル感に訴えることができます。
実際に商品を触ることができない広告の場合は、触感をイメージできるモノを近くに配置して見せるという方法があります。
例えば、羽毛布団のシズル感といえば、「暖かさ」や「軽さ」があげられます。
これらの臨場感を表現するためには、布団の材料である羽毛の写真を見せたり、暖かさを表現するイラストや保温の実験データ図などを入れて、シズル感を演出します。
味覚・食感に訴えるシズル感
味覚に訴えるためには、嗅覚や聴覚や触覚(温感)を使って間接的にシズル感を演出することができます。
例えば、熱い食べ物であれば「湯気」があることで美味しそうに感じますし、冷たい食べ物なら「水滴」があることで新鮮さや美味しさを表現できます。
または広告で笑顔の人物を載せることで、「美味しさ」を表現することもできます。昔あった青汁のCMでは、「まずそうな表情」がひとつのシズル感でしたよね。
動画や音声を使えば、食感のシズル感を伝えやすくなります。例えば、たくあんの「コリコリ」という食感は、音でも感じることができますよね。
視覚に訴えるシズル感
広告において、視覚に訴えるシズル感はすごく重要です。なぜなら人が五感から得る情報のうち、約9割が視覚からの情報だと言われているからです。
例えば飲食店では、店の外からガラス越しに、料理人が調理している様子が見えるお店がありますよね。視覚で料理のシズル感を訴えるためです。
僕はオムライスが大好きなんですが、飲食店街でいろんなお店を見て回っている時に、調理中の卵のふわとろ感を見てしまうと、そのお店以外のことが考えられなくなってしまいます。
触覚や味覚は、視覚の影響を受けています。ですので広告では、いかに視覚をとおして五感に訴えるシズル感を出せるかが重要になります。
例えば、ピザのシズル感といえば、出来立てのアツアツ感や、チーズのトロトロ感です。
写真でよりおいしそうに見せるためには、色調補正をして食べ物の色を鮮やかにしたり、湯気を足したり、チーズのトロトロ感が出るようにシズル感の演出をします。
コピーライティングでのシズル感の演出
キャッチコピーやセールスコピーでも、五感に訴える「シズル感」の表現ができます。
オノマトペを使ったシズル感の表現
五感を音で表現したオノマトペを使うと、臨場感が伝わりやすくなります。
嗅覚 | まろやか、丸みがある、ツンとした、角がある |
聴覚 | コトコト、ジュージュー、パチパチ |
触覚 | つるつる、サラサラ、ぷるぷる、すべすべ、キンキン、アツアツ、ヒヤッと |
食感 | シャキシャキ、ぷりぷり、サクサク、カリカリ、パリパリ、もっちもち、ふわふわ、ほくほく、とろ〜り |
視覚 | ハッキリ、くっきり、ぼんやり、チラッ、ギロッ、じろじろ |
例えば、レストランで出すシチューのメニュー名でも
- 「6種の彩り野菜シチュー」
とするよりも、オノマトペのシズル感を付け足して
- 「じっくりコトコト煮込んだ6種の彩り野菜シチュー」
とした方が、おいしそうな臨場感が伝わりませんか?
心理効果を応用した臨場感の伝え方
コピーライティングでシズル感を演出するためには、心理現象のシャルパンティエ効果や文脈効果を知っておくと、さらに役に立ちます。
比喩表現に使えるシャルパンティエ効果
シャルパンティエ効果とは、「大きさと重さ」の錯覚のことです。そこから転じて、マーケティングではイメージの錯覚として使われます。
シャルパンティエ効果を応用すれば、比喩表現を使って、ダイレクトにイメージしやすい文章表現ができます。
- 「食べると笑顔がこぼれるホクホク野菜シチュー」
- 「心も体も温まるおかあさんがつくった彩り野菜シチュー」
商品以外のシズル感を利用する文脈効果
文脈効果とは、文章の前後の文脈によって言葉の持つ意味合いが変わる効果です。
文脈効果を応用することで、商品以外のシズル感をくっつけて、商品のシズルのように感じる表現をすることができます。
- 「本場フランス仕込みの本格野菜シチュー」
- 「北海道の大自然で育った野菜がゴロゴロ入った彩りシチュー」
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まとめ
シズル感とは、お客さんが商品を買いたくなる理由になるものを表現した言葉です。欲しくなる理由がまるで目の前にあるような臨場感を表現できれば、魅力が伝わりやすくなります。
シズル感は食べ物だけの表現ではありません。すべての商品にはシズルが隠れています。
あなたの作る広告やセールスコピーでは、シズル感を意識した作りができていましたか?
広告をより魅力的なものにするためには、お客さんが商品を欲しくなるシズル感とは何かを探ることが大切です。ぜひ、お客さんの視点になって探してみてください。
次の記事では、広告づくりで参考にしたい「ホイラーの法則」を解説しています。
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