マーケティング術

プロダクトライフサイクルとは?弱者が取るべきマーケティング戦略

2016-10-21

プロダクトライフサイクル

商品・サービスには、人間の成長過程を表したライフサイクルと同じような成長曲線があります。これを「プロダクトライフサイクル」と呼びます。

例えば、生まれたばかりの赤ちゃんには母乳が必要ですが、少年になれば食べるものや必要なものが変わり、歳を重ねればまた変わりますよね。商品・サービスも同じように、成長過程によって必要なマーケティングが変わります。

商品・サービスから得られる利益を最大にするためには、商品や市場がライフサイクルのどのステージにあるのかによって、取るべき戦略を変えることが大切です。

この記事では、プロダクトライフサイクル理論に沿った、一般的な戦略と弱者の戦略を解説します。

もしもあなたが、個人や小規模でビジネスをされているのだとしたら、一般的な戦略と弱者の戦略の違いを確認してみてください。

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プロダクトライフサイクル (PLC)とは

プロダクトライフサイクルとは、製品が市場に登場してから、売れなくなって姿を消すまでの需要の寿命を示したプロセスのことを言います。「Product Life Cycle」の頭文字をとって、「PLC(ピー・エル・シー)」や「製品ライフサイクル」とも呼ばれます。

プロダクトライフサイクルは、19世紀イギリスの数学者であるベンジャミン・ゴンペルツ(Benjamin Gompertz)氏が、植物の繁殖などからヒントを得て提唱された「成長曲線の法則」を応用した理論です。

1960年代にアメリカの経済学者であるレイモンド・バーノン(Raymond Vernon)氏によって提唱され、「近代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー(Philip Kotler)氏などの影響によって広まりました。

プロダクトライフサイクルのそれぞれのステージは、次のとおりです。

プロダクトライフサイクルの段階

一般的にプロダクトライフサイクルは、製品がたどる段階を、4つから5つのサイクルで表現されます。

  1. 導入期:新製品が登場したばかりで、売上も利益も少ない段階
  2. 成長期・成熟期:急速に売上と利益が増える段階
  3. 飽和期:やがて売上の成長が止まる段階
  4. 衰退期:最後には売上と利益ともに少なくなる段階
プロダクトライフサイクルの図

プロダクトライフサイクルの図

プロダクトライフサイクルは、ひとつの商品についてだけではなく、商品の業界全体についても適用することができます。

例えば、日本において自動車やテレビという業界は、普及率が60%を超えているので、将来的なマーケットの拡大を見込めない「飽和期の業界」と言うことができます。

このプロダクトライフサイクルは、イノベーター理論キャズム理論に通じる部分があります。この2つの理論についても知っておくと、理解がより深まります。

イノベーター理論の図

イノベーター理論の図

では、各ステージの特徴と、小さな会社が使える弱者の戦略について解説していきます。

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プロダクトライフサイクルの導入期

導入期

プロダクトライフサイクルの「導入期」とは、新しい製品が市場に導入されて、消費者に認知されるステージです。

新しい製品を販売した直後は、認知度が低いために需要量も低いです。初期投資を行うために多額の資金が必要になり、利益としてはマイナスからのスタートになります。

競合はほとんどいない状態で、製品仕様は頻繁に変更され、マーケティングコストや製造コストが高い特徴があります。

導入期の一般的な戦略

一般的な戦略としては、製品の認知度を高めるために、流通業者に製品を取り扱ってもらうように働きかけたり、消費者に試用してもらうなどのプロモーション活動を行う必要があります。

イノベーター理論での、イノベーター(Innovators:革新者)にあたる、新しいモノ好きの顧客層に訴えます。

導入期の弱者の戦略

弱者の戦略としては、このステージの段階の商品は扱わない方が賢明です。

なぜなら、商品が売れるまでには多額のプロモーション活動の費用が必要になることと、どれほどの売上を見込めるのかがわからないからです。

ただし、競争相手がいないという点では、有利であることは確かです。この有利を活かすためには、市場を小さくして、顧客層を高所得者に絞ることがポイントになります。

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プロダクトライフサイクルの成長期・成熟期

成長期

プロダクトライフサイクルの「成長期・成熟期」とは、製品の良さが市場で認知されて、売上が伸びてピークに達するステージです。

消費者に認知されて成長期に入ると、需要量の急激な増加にともない、売上が大きく伸び始めます。そして生産設備の増強や、販路拡大のために資金が必要になります。

一方で、市場に参入する競合他社が増えてきます。競合他社との違いを明確にするためにも、ブランドやロイヤリティの確立が求められます。

消費者に広く浸透する成熟期には、製品に大きな改良が加えられます。

大量生産が始まることで、価格が低下します。その影響で、より多くの人の需要が高まり、それに答えるように商品の種類が増える特徴があります。

成長期・成熟期の一般的な戦略

一般的な戦略では、製品の認知度をより広めるために、流行の影響を強く受ける顧客層や、それに追随する顧客層に訴える必要があります。

イノベーター理論での、アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)やアーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者)にあたる顧客層のことです。

売上が横ばいになるプラトー現象

商品の普及率が10〜15%に達すると、売上が一時的に横ばいになることがあります。この横ばいを「プラトー現象」と言います。

プロダクトライフサイクルの図

プロダクトライフサイクルにあるプラトー現象

プラトーとは「高原」を意味し、一時的な停滞状態を指します。日本の市場では、8割ほどの商品にプラトー現象が見られるとも言われています。

プラトー現象が起こる原因は、キャズム理論でのキャズム(Chasm:深い溝)が考えられます。イノベーターやアーリーアダプターの「新しさ」を求める顧客層が一定数購入した後は、次の層であるアーリーマジョリティへ移行しない限り、売れ行きは一時的に伸び悩みます。

プラトー現象(キャズム)を乗り越えるためには、商品販売のための訴求ポイントを、アーリーアダプターが求める「新しさ」から、アーリーマジョリティが求める「安心感」へシフトすることが必要です。

成長期・成熟期の弱者の戦略

弱者の戦略としては、確実に売上が見込めるので、導入期から成長期に入った全体普及率の10%のあたりで参入することが良いと言えます。全世帯での普及率が60%だとすると、その10分の1の、6%が参入ポイントになります。

ただし、競合他社が増えてくる時期なので、参入する際には競合他社を分析して、差別化を図ることが大切です。

プロダクトライフサイクルの飽和期

飽和期

プロダクトライフサイクルの「飽和期」とは、需要量が頭打ちになり、売上は伸びず、利益率が下り坂になるステージです。

全体としての市場規模はピークに達して、「新しく商品を買う」人は少なくなり、「買い換え」や「買い増し」をする人が主流になります。市場の成長は見込めないにもかかわらず、競合他社との市場シェアを、価格競争などで奪い合うことになります。

また、頻繁にモデルチェンジが行われたり、サービス競争が激化して利益率は落ちていきます。市場では低価格が支配し、広告やブランドの力がなくなってきます。

飽和期には、デザインの差別化や「◯◯専用」といった差別化が行われるという特徴があり、どれだけ商品が売り場を占拠しているかが売上を決定づけます。

飽和期の一般的な戦略

成長期・成熟期には販路拡大が求められましたが、飽和期では不要なものをカットしていくことが求められます。

イノベーター理論での、レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者)に訴求するためには、「世の中の定番」であることを訴えます。

あるいは、商品・サービスの価値に改革を起こし、ライバル不在の新しい市場に変える方法もあります。

飽和期の弱者の戦略

飽和期に入った商品を扱う場合には、お客さんがまだ満たされていない価値を探すことが大切です。価格競争に巻き込まれないためには、市場を小さく絞ってNo.1をつくり出し、安心感があることをアピールすることが必要です。

また、レイトマジョリティだけではなく、アーリーマジョリティへも訴えることを考えます。商品のパッケージを変えたり、メッセージを変えることで新しい感覚を追加すれば、ライフサイクルの寿命を延ばすことにもつながります。

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プロダクトライフサイクルの衰退期

衰退期

プロダクトライフサイクルの「衰退期」とは、売上と利益が急激に低下して、需要が少なくなるステージです。

新たな技術革新などの登場によって衰退期に入ると、需要量は減少し、市場から競合他社が撤退していきます。売上は低下するので、撤退を考慮する時期です。

衰退期の弱者の戦略

イノベーター理論での、ラガード(Laggards:遅滞者)が顧客層として想定できますが、期待はできません。

衰退期に入った製品は、細分化することや新しさを追加できないかを考えます。また、現在の製品にプラスアルファを加えて、新しい市場にできないかを考えます。

ようするに、衰退期である商品を、成長期の市場に変えることが大切です。

プロダクトライフサイクルのパターン

プロダクトライフサイクルの成長曲線は、全ての製品に同じように当てはまるものではありません。成長曲線のパターンは好調に売れる期間によって、大きく分けると次の3つに分類されます。

  • スタイル
  • ファッション
  • ファッド
プロダクトライフサイクルのパターン

プロダクトライフサイクルのパターン

スタイル(Style)

スタイルは、多少の流行はあるものの、基本的には流行に左右されずに、ゆるやかな曲線を繰り返します。

生活に密着しているインフラの商品(住宅・衣服など)の業界に多い成長曲線です。流行りすたりがあったとしても、市場としてはなくなることはありません。

レイトマジョリティやラガード層の消費者にも、広く受け入れられることが特徴です。

ファッション(Fashion)

ファッションは、新しさや奇抜さを求めるイノベーターやアーリーアダプターに受け入れられ、短期的に売上が伸びますが、アーリーマジョリティにはあまり受け入れられずに、売上が落ちていく成長曲線です。

販売数が一気に伸びることで、同時期に模倣品が出まわります。市場に似たような商品があふれることで、新しさが急速に失われていきます。

ファッド(Fad)

ファッドは、ファッションの一種の曲線です。急速に売上が伸びて、すぐにピークに達し、その後急速に売上が落ちるという成長曲線です。

新しさや奇抜さだけが注目され、一部の層にしか人気を得られずに消えていく商品です。市場の大多数の消費者からは受け入れられない時に起こる失敗例と言えます。

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まとめ

プロダクトライフサイクルとは、製品の誕生から市場から消えるまでを、4つから5つの段階で表現されたプロセスのことです。

  1. 売上も利益も少ない「導入期」
  2. 売上と利益が増える「成長期・成熟期」
  3. 売上の成長が止まる「飽和期」
  4. 売上と利益ともに少なくなる「衰退期」

個人ビジネスや小さな会社が取るべき戦略としては、新しい市場に参入する場合は、高所得者を対象にした戦略を取ることがポイントです。また、導入期が終わって成長期に入った業界に参入することが、一番ラクに売上を伸ばせる方法です。

飽和期や衰退期に入った商品を扱う場合には、競合他社との差別化を図るためにも、顧客層を絞るか、新しい要素を追加するなど、新しい市場に変えることや自社がNo.1の存在になれる工夫をすることが必要です。

小さな会社がNo.1を獲得するためには、ランチェスター戦略が良いヒントを与えてくれます。

次の記事では、ランチェスター戦略の解説をしています。
⇒「ランチェスター戦略とは?弱者の戦略をわかりやすく解説

参考図書

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  • この記事を書いた人

高木浩一

心理学と脳科学が好きなマーケティング・Web集客の専門家/解脱しかけのゲダツニスト/ 大企業のマジメな広告デザインから男性を欲情させるアダルティな広告デザインまで、幅広い分野を経験した元グラフィックデザイナー。心理面をカバーしたマーケティングとデザインの両方の視点をもつ。個人が個人として活躍する時代に向けて「使えるマーケティング」をモットーに情報発信中。

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